なぜ、トイレから戻ったマイケルはすぐに撃たなかったのか?  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(9発目の銃弾)―






最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。


コッポラ「 」とあるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督著『The Godfather Notebook』からの引用である。







レストランでのソロッツォとの会談


【字幕】

ソロッツォ「悪かった」

マイケル「いえ」

ソロッツォ「親父さんがあんなことになったのは仕事が原因だ。俺は彼を尊敬してる。だが彼の考えは古すぎてな。俺が名誉を重んじる男だと分かってほしい」

マイケル「言われなくてもよく分かってる」

ソロッツォ「そうか? 俺はタッタリアを助けたんだ。まっとうな取り決めを作れるだろう? 平和的にな。些細なことは忘れて」

マイケル「そうだが……」

ソロッツォ「何だ」

マイケル「何と言うか……」

*ここまでの会話はイタリア語。以降は英語。

マイケル「ともかく一番大切なのは、二度と親父に手を出さないという保証だ」

ソロッツォ「俺が保証を? 俺こそ追われる身だ。あまり買いかぶらんでくれ。休戦協定を結びたい」

マイケル「トイレに行く。いいか?」

マクラスキー「仕方あるまい」

立ち上がったマイケルの体を調べるソロッツォ。

マクラスキー「銃は持ってない」

ソロッツォ「すぐ戻れ」

マクラスキー「心配するな」

トイレから戻って着席するマイケル。

*以下、またイタリア語。

ソロッツォ「平気か?」

マイケル「ああ」

ソロッツォ「分かってくれ。親父さんと同じイタリア人だろ。彼の体調が回復したらこの件を解決しよう。それでもうすべて終わりにしたい」

マイケルが突然立ち、あの名シーンがやってくる。







【吹き替え】

ソロッツォ「穏やかにいこう」

マイケル「賛成だね」

ソロッツォ「よし。初めに言っとくが、俺は好き好んであんなことをやったんじゃない。すべてはただ商売のためさ。俺だっておまえの親父さんを憎く思っちゃいねんだ。しかしな、あの親父さんは頭が古い。俺の話を聞こうとしねえ。初めっから俺をばかにしてかかってるんだ」

マイケル「親父には、親父の考えがあるんだ。ばかにはしてない」

ソロッツォ「そうかな? 俺はほんと言うとな、タッタリアよりおまえさんとこと組みてえのさ。事を荒立てたくねえ。このへんで終わりにしよう。話し合おうじゃねえか。起こっちまったことはいまさらどうしようもねんだ」

マイケル「身勝手な話だな」

マクラスキー 「(食事をしながら)こりゃうまい」

マイケル「黙っててくれ」

*マクラスキー以外のここまでの会話はイタリア語。以降は英語。

マイケル「どっちにしても、一番僕が欲しいのは、あんたからの保証だよ。父の命を狙わないという保証だ」

ソロッツォ「そんな保証を俺ができると思うか? 狙われてるのは俺だぜ。俺はしくじったんだ。買いかぶってもらっちゃ困るな。本当はドジなんだ。だから休戦協定を結びたい」

マイケル「トイレへ行きたいんだけど、いいかな?」

マクラスキー「駄目とも言えんだろ」

立ち上がったマイケルの体を調べるソロッツォ。

マクラスキー「銃はない。調べた」

ソロッツォ「早く行ってこい」

マクラスキー「俺が調べたんだぞ」

トイレから戻って着席するマイケル。

*以下、またイタリア語。

ソロッツォ「食いなよ。おまえの親父さんにも俺にも、同じイタリア人の血が流れてるんだ。話し合や分かることだ。何も意地張って無駄な血を流すこたねんだよな。仲良くやっていこうじゃねえか。言ってみりゃ俺たちゃ兄弟なんだからよ」

マイケルが突然立ち、あの名シーンがやってくる。







コッポラ「マイケルには、クレメンザからの順を追った指示とはちょっと違うことをさせよう。そうやって観客をびびらせるのだ。彼は指示されたとおりにしないのかと。手は銃を持ったままで、落とさないのだから!」


コッポラ「できるだけ恐ろしくはっきりとした形で殺しを表現する。耐え難いレベルにまで緊張を高めるのだ。ソロッツォとマクラスキーに対し冷淡かつ落ち着き払った処刑を行わせることで、より深くマイケルという人物を特徴づけよう」



マイケルの行動はクレメンザの助言と少し違う。


頭に2発ずつという撃ち方も、済んだ後の銃の落とし方も、何度も言われているはずの方法にマイケルは従わなかった。


演出的にはそうやって緊迫感を高める狙いがあったのだろうが、ドラマ的には強い緊張のせいでマイケルがアドバイスを忘れたように見える。


ただ、マイケルが初めからまったく冷静な人物として設定されていたということは、わざと彼が言われていたようにしなかったという解釈もできるのだ。


こちらは「言われたとおりでないが大丈夫なのか」と心配になるが、じつはマイケルの「こんな状況でも好きにやれる余裕がある」その冷血に戦慄すべき場面かもしれないのである。


トイレから戻ってすぐに撃たずいったん座ったのも、気後れなどでなく慌てず騒がずいつでもやれる冷酷さゆえかもしれない。



ちなみに原作本では、事前にテッシオが「トイレから戻ってまた腰を下ろしたりするな」と教えているにもかかわらず、マイケルが怖がったせいで座ってしまったとなっている。


が、すぐに行動に移っているのだ。


一度ちゅうちょしたらかえってできない可能性もあるため、即座にやるより胆力があるともいえる。


いずれにせよ、恐るべき人物である。







【英語字幕】

*イタリア語の字幕は表示されないため、英語の会話のみ。

マイケル「What I want……what's most important to me is that I have a guarantee. No more attempts on my father's life」

ソロッツォ「What guarantees can I give you? I'm the hunted one! I missed my chance. You think too much of me, kid. I'm not that clever. All I want is a truce」

マイケル「I have to go to the bathroom. Is it all right?」

マクラスキー「When you got to go, you got to go」

立ち上がったマイケルの体を調べるソロッツォ。

マクラスキー「He's clean」

ソロッツォ「Don't take too long」

マクラスキー「I've frisked a thousand punks」





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