なぜ、マイケルは狭い庭でアポロニアに車の運転を教えていたのか?  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(12発目の銃弾)―






最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。


コッポラ「 」とあるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督著『The Godfather Notebook』からの引用である。







マイケルが住む屋敷の庭


【字幕】

アポロニアが乱暴に運転する車から降りるマイケル。

マイケル「英語を教えてる方が安全だ」

アポロニア「英語、知ってるわ」

そこへドン・トマシーノが乗った自動車が入ってくる。

マイケル「やあ、トマシーノ。町の様子は?」

アポロニアが近づき、トマシーノの頬にキスをする。

アポロニア「マイケルが運転を教えてくれたの。見てて。うまいのよ」

マイケル「町は?」

トマシーノ「若い連中は恩を知らん。状況は悪くなってる。ここも危険になってきた。シラクサの方へ移った方がいい。すぐにだ」

マイケル「何があった?」

トマシーノ「アメリカから悪い知らせが。兄さんのソニーが殺された」

アポロニアがクラクションを鳴らす。

アポロニア「早く、教えて」







【吹き替え】

アポロニアが乱暴に車を運転する。

アポロニア「ほら、上手でしょ!」

マイケル「危ない! 前見て、前! まったく! ぶつかる! 危ないってほら!」

降りるマイケル。

マイケル「ああ、怖い怖い。命がいくつあっても足りないよ」

アポロニア「なーに言ってるの。もう何度も練習してるから大丈夫なのよ。あなたが横でワイワイ言うからかえってうろたえるんじゃない。少し黙っててよ」

そこへドン・トマシーノが乗った自動車が入ってくる。

マイケル「こんにちは、ドン・トマシーノ」

トマシーノ「元気かね」

マイケル「パレルモはどうです?」

アポロニアが近づき、トマシーノの頬にキスをする。

アポロニア「いらっしゃい、トマシーノさん。マイケルが運転を教えてくれたんです。もう上手なんだから。そうだ、やってみせましょうか」

マイケル「パレルモはどうなんです?」

トマシーノ「いやあ、きょうびの若いもんは恩義を知らんから。向こうも状況は悪くなる一方だよ。実はな、マイケル。ここも良くないんだよ。ちょっとやばくなってきたんだ。だから君らを移動させたいんだよ。すまんけどな。シラクサの近くならまだ安全だから。なるべく早く移れ。すぐにも。な?」

マイケル「何があった?」

トマシーノ「アメリカから、悪い知らせだ。兄さんのソニーが、殺されたんだ」

アポロニアがクラクションを鳴らす。

アポロニア「ねえマイケル、早く来てよ! いっしょに乗ってくれるって約束じゃない?」







コッポラ「マイケルとアポロニアの求婚と結婚の場面では、シチリアで古くから人生の全局面を統べてきた行動規範を描写する。そうすることで、コニーとカルロの結婚式にあったアメリカナイズされたシチリア流と相互比較するのだ。また、挙式によってマイケルが自ら招いた危機感も出さなくてはならない」


コッポラ「アポロニアとのマイケルの幸せが、いかに不確実性や家庭外の心配な出来事に囲まれているかを表現する。アポロニアに車の運転をさせ、二人が住むとりでの中でしか乗れない様子がわかるようにしよう。ニューヨークの実家と類似した状況を生み出すことになるだろう」



当時のシチリアの公道事情はまるでわからないが、勝手に車を走らせても問題ない野原などいくらでもあったろう。


それなのに屋敷の狭い庭でグルグル回っている。


これは、結婚式という目立つ行為によってマイケルの居場所がばれやすくなったためだ。


そこへトマシーノがやってきてソニーの殺害をマイケルに告げることで、より危機感が伝わるのである。


またマイケルが町のニュースを知りたがるのは、閉じ込められているせいで情報に飢えているからだと監督は本で述べている。


教習をねだるアポロニアにマイケルとトマシーノが一瞥を投げるのだが、これが次の犠牲者を匂わせる伏線となっているように見える。


アポロニアがマイケルにかわいく甘えるのも、いかにもその後の悲劇性を高める要素だ。


危険が迫るシチリアの屋敷と警戒を強めるニューヨークの実家との関連性、現代的なコニー&カルロの結婚式と古風なマイケル&アポロニアのそれとの対比――


シチリアのパートは映画全体の中では緩く感じるが、しっかりと計算されているのである。







【英語字幕】

アポロニアが乱暴に運転する車から降りるマイケル。

マイケル「It's safer to teach you English!」

アポロニア「I know English……Monday, Tuesday, Thursday, Wednesday, Friday, Sunday, Saturday」

そこへドン・トマシーノが乗った自動車が入ってくる。

マイケル「Greetings, Don Tommasino. How are things in Palermo?」

アポロニアが近づき、トマシーノの頬にキスをする。

アポロニア「Michael is teaching me to drive……watch, I'll show you」

マイケル「How are things in Palermo?」

トマシーノ「Young people don’t respect anything anymore……times are changing for the worse. This place has become too dangerous for you. I want you to move to a villa near Siracusa……right now」

マイケル「What's wrong?」

トマシーノ「Bad news from America. Your brother, Santino, they killed him」

アポロニアがクラクションを鳴らす。

アポロニア「Let's go……you promised」





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