最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。
ラスベガスのホテルの一室
【字幕】
モー・グリーンと交渉するマイケル(同席者は、フレド、トム・ヘイゲン、ジョニー・フォンテーン)。
マイケル「まるごと買う」
グリーン「買うって?」
マイケル「カジノにホテル。コルレオーネが買い取る」
グリーン「俺のものを買い取る? 何を寝ボケてる」
マイケル「君のカジノは赤字だ。我々に任せろ」
グリーン「赤字だと?」
マイケル「残念だが」
グリーン「勝手な事を言いやがって。困った時にフレドを預けといて今度は追い出す?」
マイケル「待てよ。預かったのはうちが融資したからだ。モリナリ・ファミリーが安全は保証したからな。さあ、ビジネスの話をしよう」
グリーン「結構だ。まずお前達は終わりだ。もうコルレオーネに力はない。ドンは病気だし、バルジーニにケツを追われてる。それが俺のホテルを買うだと。バルジーニとは付き合いがある。ホテルは渡さん」
マイケル「それで兄貴を殴ったのか」
フレド「あれは、いいんだ。モーに悪気はなかった。たまに頭にくるけど俺達は仲がいいんだ」
グリーン「仕事のためだ。ハッパをかけることもある。フレドの目を覚ましてやることも」
マイケル「兄貴の目を?」
グリーン「ウェイトレスといちゃついてた。客をほったらかしで当たり前だろ!」
マイケル「俺は明日帰る。値段を考えとけ」
グリーン「なめるなよ。お前らが鼻タレの頃から命を張ってるんだ」
【吹き替え】
モー・グリーンと交渉するマイケル(同席者は、フレド、トム・ヘイゲン、ジョニー・フォンテーン)。
マイケル「実はここを買い取りたいんだが」
グリーン「はあ? 買い取るだって?」
マイケル「カジノと、ホテルを、コルレオーネ・ファミリーが買収したい」
グリーン「コルレオーネ・ファミリーが買収だと? そりゃ逆だろ。こっちが買い取るんだ」
マイケル「君のカジノは赤字だ。任せた方がいい」
グリーン「もうけをごまかしてるってのか?」
マイケル「運がないんだろ」
グリーン「ハハハハハ、何だよ、そこまで笑わせてくれんのかい。泣きついてきた時フレドを預かってやったのは誰だよ! それを今度は追い出しか!」
マイケル「ちょっと待て。フレドを預かったのはうちがカジノに融資してやったからだろ。それに兄貴の身の安全をモリナリ・ファミリーが保証してたからだ。そんなことよりビジネスだ、話を進めよう」
グリーン「ああ、いいだろ、いいだろ。まずお前らは終わりだ。コルレオーネ・ファミリーは落ち目で勢力がない。ゴッドファーザーは病気だし、バルジーニや他のファミリーにニューヨークを追い出される。そんな奴が何をほざいてる。いきなりうちのホテルを買収するだと? バルジーニと話したよ。ホテルを手放さない条件でも融資してくれるってさ」
マイケル「それで兄を人前で殴ったのか?」
フレド「ああ、あれは違う。あれは何でもないんだよ、ほんと。モーも悪気なかったんだ。そりゃたまにはカッとなる事もあるけどさ。モーとは良い友達なんだ。なあ?」
グリーン「こっちも仕事だからな。いいかげんな事はしてもらいたくないんだよ。それでフレドにも活を入れてやっただけだ」
マイケル「活を入れるねえ……」
グリーン「カクテルウェイトレス2人とよろしくやってたんだよ! 客のサービスほったらかして! どうかしてるぜ!」
マイケル「明日、ニューヨークへ帰る。売り値を決めておけ」
グリーン「野郎! 俺を誰だと思ってる? 俺はモー・グリーンだ! お前が学生の頃からこの稼業をやってんだ!」
字幕版でモー・グリーンが「バルジーニとは付き合いがある。ホテルは渡さん」と言った後、マイケルが「それで兄貴を殴ったのか」と返すが、会話のつながりが見えない。
吹き替えの方は原文に沿っていて、「バルジーニと話したよ。ホテルを手放さない条件でも融資してくれるってさ」となっている。
こちらはわかりやすい――「バルジーニが金を出してくれるんだから、これまでのコルレオーネとの取引は終わりにできるんだぞ」というわけである。
だからマイケルも、コルレオーネの身内(フレド)にひどいマネができるようになったのもそのせいかと考え、「それで兄を人前で殴ったのか?」と尋ねたのだろう。
気になるのは、グリーンの「ホテルを手放さない条件でも」という言い方だ。
バルジーニと話したのはこれより前なのに、コルレオーネによる買収を知っていたらしき口ぶりなのだ。
じつは、原作(翻訳本)ではとっくに承知していたことが書かれている。
「コルレオーネ・ファミリーが俺を買収する気だと聞いたが、これはいったいどういうことなんだ?」と自分からマイケルに切り出しているのだ。
映画でも、グリーンはわかっていたという設定だったと思われる。
この後のフレドの職務怠慢エピソードについてだが、一見蛇足感があるものの本当は意味がある。
重要ゆえに、まずはマイケルにモー・グリーンを非難させる必要があったのではないか。
兄の怠惰を耳にした直後のマイケルは、原作に「ハーゲン(注:トム・ヘイゲンのこと)は、マイケルが憮然たる表情でいるのを見てとった」とあるように、気分を害してしまった。
少し後のページにはこんな記述もある――
「フレディが宿屋の亭主か色男(レディズ・マン)にすぎないことはすでに証明ずみであり、色男というこの言葉は、いつも母親のおっぱいにしがみついているいじきたない子ども――要するに、男らしくないという意味を言外に含んでいるとしか他に言いようのないものだった」
映画ではシーンの最後にマイケルが冷たく言い放つ(吹き替え)――
「フレド、君は僕の兄貴だ。大好きだ。だが二度とファミリーに盾突く者の肩は持つな。いいな」
ダメな兄の姿を教えられて冷淡になったみたいな様子である。
しかし、いくらなんでも相手は兄だ。命じられる側はおもしろくないだろう。
コッポラ監督は、ここから兄弟の確執が始まったとオーディオコメンタリーで述べている。
結果としてパート2への伏線になったのだ。
監督は、他にもこんな興味深い話をしている――
「田舎のイタリアがルーツの家系ではよくあることだが、同族の者にはすごく厳しい。また出来のいい兄弟や叔父たちと同じレベルでない者には残酷になる。フレドもその点を強調した」
【英語字幕】
モー・グリーンと交渉するマイケル(同席者は、フレド、トム・ヘイゲン、ジョニー・フォンテーン)。
マイケル「Is my credit good enough to buy you out?」
グリーン「Buy me out?」
マイケル「The casino, the hotel. The Corleone family wants to buy you out」
グリーン「The Corleone family wants to buy me out? No, I buy you out」
マイケル「You casino loses money. We can do better」
グリーン「You think I'm skimming off the top?」
マイケル「You're unlucky」
グリーン「You Guineas make me laugh. I took Freddy in when you had a bad time, and now you try to push me out!」
マイケル「You did that because we bankrolled your casino and the Molinari family guaranteed his safety. Let's talk business」
グリーン「Yes. First of all, you're all done. You don’t have that kind of muscle anymore. The Godfather is sick. You're getting chased out of New York by the others. Do you think you can come to my hotel and take over? I talked to Barzini. I can make a deal with him and still keep my hotel!」
マイケル「Is that why you slapped my brother around in public?」
フレド「That was nothing, Mike. Moe didn’t mean nothing by that. He flies off the handle sometimes, but we're good friends」
グリーン「I have a business to run. I've got to kick asses sometimes. We had an argument, so I had to straighten him out」
マイケル「You straightened my brother out?」
グリーン「He was banging cocktail waitresses! Players couldn’t get a drink. What's worng with you?」
マイケル「I leave for New York tomorrow. Think about a price」
グリーン「Son-of-a-bitch! I'm Moe Greene! I made my bones when you were out with cheerleaders」
この記事へのコメント