なぜ、マイケルはファミリーを合法化する意思を持ったのか?  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(16発目の銃弾)―






最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。







ドンが亡くなる直前の庭


【字幕】

マイケルとドンが二人で語り合う。

ドン「バルジーニが手を出してくる。お前の腹心に会談を申し込み、安全を保証して、お前が来た所を殺す。最近ワインがうまい。よく飲むな」

マイケル「いい事だよ」

ドン「どうかな。家庭は幸せか?」

マイケル「幸せさ」

ドン「よかった。バルジーニのことでは苦労をかけるな」

マイケル「とんでもないよ」

ドン「クセでな。気を抜く事ができん。男は油断をしてはいかん。息子は?」

マイケル「元気だよ」

ドン「お前に似てきたな」

マイケル「僕より頭がいい。3歳なのに漫画を読んでる」

ドン「漫画か」

ドン「電話の係をつくれ。すべての電話をチェックするんだ」

マイケル「もう、やったよ。心配ないよ」

ドン「そうだったな」

マイケル「何だい? 心配かい? 大丈夫だよ。言っただろ。心配しないで」

ドン「ソニーが跡を継ぐと思ってた。フレドは、フレドは……。お前には、させたくなかった。わしは一生ファミリーを見てきた。裏の世界でだが……。どんな大物にも踊らされる事はなかった。わしの人生だ。悔いはない。だが、お前の時代は表へ出て人を操るべきだ。コルレオーネ上院議員……コルレオーネ知事……」

マイケル「僕はなるよ」

ドン「もう、わしは何もしてやれん」

マイケル「大丈夫さ。見ててくれ」

ドン「バルジーニとの会談の話を持ってくる奴は裏切り者だ。忘れるな」







【吹き替え】

マイケルとドンが二人で語り合う。

ドン「つまり、最初に動いてくるのはバルジーニだ。お前の腹心の部下に身の安全は保証すると言って、会談をセッティングさせる。そうしておいて、その場でお前を殺すんだ。この頃よくワインを飲むんだ。うまいと思うようになった」

マイケル「良いじゃないの」

ドン「どうだか。女房子供といて幸せか?」

マイケル「幸せだよ」

ドン「そりゃ良い。余計な心配させたかな? バルジーニの事など持ち出して」

マイケル「いや、とんでもないよ」

ドン「習慣なんだ。いつも気を配ってやってきたからな。女子供と違って男は油断しちゃいかん。息子はどうだ?」

マイケル「良い子だ」

ドン「日に日にお前に似てくるな」

マイケル「僕より利口だよ。まだ三つなのに漫画が読める」

ドン「漫画を読んでるか。そうだ、電話連絡をチェックした方が良いぞ。こっちからかける電話も、外からかかってくる……」

マイケル「もうやってるよ。僕がちゃんとやる」

ドン「ああそうかそうか、そうだったな」

マイケル「どうしたの。何が気になる。大丈夫だよ。任しといてくれたら、ちゃんとやるから」

ドン「ソニーなら跡を継いでできると思ってた。それからフレド……フレドは、まあ……。とにかくお前にはやらせたくなかった。私は一生これだ。ファミリーの面倒を見てきた。悔いはない。だがだまされたり、ばかにされたり、人に操られることはなかった。どんな大物にも。それが私の人生だ。何ら恥じることはない。だがお前ならきっと、操る側に立てると思ってた。コルレオーネ上院議員とか、コルレオーネ州知事とかに」

マイケル「上に立つ方の側に?」

ドン「まあな。しかしもうこうなってしまった。もう遅いだろう」

マイケル「なに、今になれる。きっとなれるよ」

ドン「いいか、バルジーニとの会見を手配する奴が裏切り者だぞ。それを忘れるな」







ドンの特徴が短い会話に凝縮されている――


適切なアドバイス=賢さあるいは経験の深さ、気を抜かない=緊張を持続させる精神、女性・子供への蔑視=頭の古さ……


そしてワインが好きになった自らの状況への疑問だが、ここには厳しい活動から脱して飲食を楽しめる余裕が生まれたことへのわびしさを感じる。


マイケルの息子の話が始まったと思ったら、ドンとして頼れるようになったマイケルの話になり、最後にドン自身が自分の息子たちや人生について語り始める……なんともうまい展開である。



字幕と吹き替えではっきり違うドンのせりふがある。


字幕は「もう、わしは何もしてやれん」、吹き替えでは「しかしもうこうなってしまった。もう遅いだろう」となっているところだ。


原文がわかりにくいせいだろうが、私も「『ゴッドファーザー』のせりふで神になろうとした男に触れる」の記事で自分なりの解釈をした。


が、最近考えが変わった。


「とにかく時間が足りなかった。時間があれば自分が表の世界で成功しファミリーを変えることができたのに」という意味だったのではないか。


マイケルがケイと再会した際に「親父のやり方が通った時代はすでに終わったよ。親父も承知だ。この先5年で、コルレオーネファミリーは完全に合法組織になる(吹き替え)」と宣言しているように、合法化はドンの意思でもあったのは明らかだ。


それが弱ったドンの口から伝わることで、マイケルは遺言として受け止めた可能性がある。


曖昧ゆえに味わいがあるせりふともいえるが、字幕・吹き替えのどちらにもそのニュアンスは存在しない。


残念である。







【英語字幕】

マイケルとドンが二人で語り合う。

ドン「Barzini will move against you first. He'll set up a meeting with someone you absolutely trust. Guaranteeing your safety. And at that meeeting you'll be assassinated. I like to drink wine more than I used to. Anyway, I'm drinking more」

マイケル「It's good for you, Pop」

ドン「I don’t know. Are you happy with your wife and children?」

マイケル「Very happy」

ドン「That's good. I hope you don’t mind the way I keep going over this Barzini business」

マイケル「No, not at all」

ドン「It's an old habbit. I spend my life trying not to be careless. Women and children can be careless, but not men. How's your boy?」

マイケル「He's good」

ドン「He looks more like you every day」

マイケル「He's smarter than I am. He's three and can read the funny papers」

ドン「Read the funny papers. I want you to arrange for a telephone man to check all in- and out-going calls」

マイケル「I did it already. I took care of that, Pop」

ドン「That's right. I forgot」

マイケル「What's the matter? What's bothering you? I'll handle it. I told you I can handle it, so I'll handle it」

ドン「I knew that Santino would have to go through all this. And Fredo……Fredo was, well……. But I never wanted this for you. I worked my whole life. I don’t apologize for taking care of my family. And I refused to be a fool, dancing on a string held by all those big shots. I don’t apologize. That's my life, but I thought that, that when it was your time, you would be the one to hold the strings. Senator Corleone. Governer Corleone. Something」

マイケル「Another pezzonovante

ドン「Well……Just wasn’t enough time, Michael. Wasn’t enough time」

マイケル「We'll get there, Pop. We'll get there」

ドン「Now listen, whoever comes to you with this Barzini meeting, he's the traitor. Don’t forget that」





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