最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。
コッポラ「 」とあるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督著
『The Godfather Notebook』からの引用である。
書斎に駆け込んできたコニーと疑うケイに悩まされるマイケル
【字幕】
コニー「マイケル。なんて人なの! あの人を殺したのね。パパが死ぬのを待ってあの人を殺したのね。ソニーのことをあの人のせいにして。私はどうなるのよ。どうすれば……。(ケイに慰められながら)なぜカルロを右腕にしたの。いつでも殺せるからよ。それで名づけ親なんて人間じゃないわ。何人、殺したか知ってる。新聞に出てたわ。それが、あんたの亭主よ」
マイケル「(錯乱するコニーを抱いた後、部下に命じ)2階へ。医者を。(自分をじっと見つめるケイに)興奮してる。ヒステリーだ」
ケイ「本当なの?」
マイケル「仕事に口を出すな」
ケイ「言って」
マイケル「仕事に口を出すな。(少し荒れてから)いいだろう。今回だけだ。今回だけ答えてやる」
ケイ「殺したの? (ノーと言うマイケルと抱き合ってから)一杯、飲みたいわ」
【吹き替え】
コニー「マイケル、あんたなんて事したの。うちの人、殺したのね! パパが死ぬの待ってたんで止める人がいなくなったから殺したのよ! ソニーのことで寄ってたかってあの人に罪着せて! あたしのことなんかちっとも考えてないでしょ! だからあんな事ができるのよ。あたしはどうしたらいいの……。(ケイに慰められながら)なんでカルロをここに住まわせたか分かる? マイケルの都合のいい時に殺せるからよ。そのくせ知らん顔してうちの子の名づけ親になって。あんたってそれでも人間!? カルロだけじゃないわ。何人殺したか知りゃあしない。新聞見れば分かるでしょ! それがあんたの亭主! それが正体よ!」
マイケル「(コニーを抱きながら)ほら、落ち着いて」
コニー「いやああ! いやあ! ひどい! あんまりよ!」
マイケル「(部下に命じ)上へ連れてけ。医者を呼べ。(自分をじっと見つめるケイに)興奮しすぎだな。どうしようもない」
ケイ「今の話ほんと?」
マイケル「仕事の事には口を出すな」
ケイ「殺したの?」
マイケル「仕事に口を出すなと言っただろ」
ケイ「だけど!」
マイケル「やめろ! (少し間を置いて)よし、今度だけだ。この一回だけは聞く事に答えてやろう」
ケイ「本当なの? ねえ……」
マイケル「うそだ」
ケイ「(マイケルと抱き合ってから)こういう時は飲まないと。ね。待って」
原作では、この翌朝にケイが子どもたちを連れて両親の家へ帰ってしまう。
それから一週間後トム・ヘイゲンが説得に赴き、テッシオやカルロの殺害について白状するのだ――
「マイケルは彼らを許すことができたかもしれない。しかし、一度裏切った者は、その弱さゆえに、再び危険な裏切りを犯す恐れがあるのだ」
だが、ケイは殺しよりも許せないことのために去ったのだ――
「その行為ゆえではなく、その嘘のために、ケイはマイケルのもとを去ったのだった」
だが、ヘイゲンはこうも言う――
「もし君が今日ぼくの話したことをマイケルに告げたなら、ぼくはきっと生きちゃいないだろうよ。君と子どもたちは、彼が傷つけることのできないこの世で唯一の人間なんだよ」
それほど大切な人にマイケルは平気でうそをついた。
もっとも安易な解釈は、「好きだから嫌われたくなくてうそをついた」「完璧についたのは、絶対絶対絶対別れたくないから」ということになりそうである。
だがしかし、本当にそうか?
聡明なケイはいずれうそに気づくだろうし、マイケルは情愛だけの人間ではないはずだ。
そもそもマイケルが血を流してドンになったのはファミリーのためである。
そのファミリーの核である妻と子どもを失ったらすべてが無意味になるのだ。
マイケルは自分自身の存在理由をなくしたくなかったのかもしれない。
どうしても。
パート2でケイと離れた後の、無表情を超えた冷たさはそう考えるとわかりやすい。
あれは、抜け殻の顔だ。
監督はオーディオコメンタリーでこう述べる――
「『ゴッドファーザー』はほとんどすべてが原作本を基に作られている。原作を読んでいて一番心に伝わってくる印象やイメージが、まさにこのラストシーンの光景に集約されている」
特別完全版の最後(パート2も含めすべてのラスト)では、ケイが教会でお祈りをしながらろうそくに火をつける場面がある。
本来パート1で使うはずだったものだ。
コッポラ「ケイは観客同様、マイケルに相反する感情を抱く。だが、彼女は彼を愛しているために、その所業にもかかわらずマイケルの魂が天国へ行けるようろうそくをともすのだ」
【英語字幕】
コニー「Michael, you lousy bastard! You killed my husband. You waited until Papa died, so nobody could stop you. You blamed him for Sonny. Everybody did. But you never thought about me! Now what are we going to do?」
ケイ「Connie」
コニー「Why do you think he kept Carlo at the Mall? He knew he was going to kill him. And you stood godfather to our baby. You lousy cold-hearted bastard! Want to know how many men he had killed with Carlo? Read the papaers! That’s your husband, that’s your husband! (マイケルに抱かれるのをふりほどき)No! No, no……」
マイケル「(部下に命じ)Take her upstairs. Get her a doctor. (自分をじっと見つめるケイに)She's hysterical. Hysterical」
ケイ「Michael, is it true?」
マイケル「Don’t ask me about my business, Kay」
ケイ「Is it true?」
マイケル「Don’t ask me about my business. Enough! All right. This one time. This one time I'll let you ask me about my affairs」
ケイ「Is it true? Is it?」
マイケル「No」
ケイ「(マイケルと抱き合ってから)I guess we both need a drink. Come on」
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