ドンの「わしらは人殺しじゃない」には裏がある  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット5)―






最初にDVD収録の字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同DVDの英語字幕を紹介します。







娘の結婚祝いとして、書斎で嘆願者の声に耳を傾けるドン・コルレオーネ(その3)



【字幕】

ドン「ボナセーラ。わしはそれほど情けない男か。君が友人として来れば、そんなクズなどすぐ処分してくれる。善良な君を苦しめる者はわしが許さん。君が友人なら」


ボナセーラ「私の友に? ゴッドファーザー」


ドンの手にキスをするボナセーラ。


ドン「いずれ、わしが何か頼む事があるかもしれん。その日まで、裁きは娘の結婚祝いだ」


ボナセーラが部屋を出ていく。


ドン「(トム・ヘイゲンに向かって)この仕事はクレメンザに。奴ならやり過ぎはせん。頼まれたとはいえ、わしらは人殺しじゃない」







【吹き替え】

ドン「ボナセーラ。ボナセーラ。私が何をしたからそこまで軽く見られるのだね? これが友人の頼みなら今日にもそのろくでなしどもをたたきのめしてやるがな。あんたのような正直者の敵になる奴なら私にとっても敵だからな。思い知らせもしよう」


ボナセーラ「友として? ゴッドファーザー」


ドンの手にキスをするボナセーラ。


ドン「よろしい。いずれ私のほうからも頼み事をするかもしれんからな。だがその日までは、この制裁は娘の結婚祝いとしとく」


ボナセーラ「ありがとうございます」


ボナセーラが部屋を出ていく。


ドン「(トム・ヘイゲンに向かって)この仕事はあいつがいいだろう。クレメンザが。あいつならやり過ぎるということはないからな。人殺しはいかん。あの葬儀屋が何と言おうとな」







古いマフィアのボスにとって、殺人や暴力は権威や威厳の弱さにつながるものとされていた。


できるだけ自分の存在そのもので問題を解決することを望んだのだ。


まずは自らの姿や言葉の重みで勝負する!


ときには人殺しもするが、金ではやらない!


そんな殺しは断じてしない!


だから、金は出すからと言うボナセーラを嫌った。


権威・威厳をもっとも感じさせるのが、そのボナセーラがドンの手にキスをするシーンだろう。



この映画は対照的な場面が多い。


結婚式での屋外の明るいパーティと屋内の暗い密談、


コニーによる現代風の結婚式とアポロニアの古風な結婚式、


クライマックスにおける教会での洗礼と大量殺人という血の洗礼などだ。


一方、似ているようでじつは違う非対称のシーンもある。


ここでのドンのキスとラストでマイケルが受ける同様のシーンがそれである。


2つのキスには時代の変化が現れているからだ。


義理と人情の関係から、労働力とマネーを交換する関係へシフトしたことがうかがえるのである。


マイケル・コルレオーネのキスは、ファミリーの巨大化によって狭い共同体の論理がもはや通用しなくなったことを匂わせる象徴的風景に見える。



古いボスといえば、ニューヨークでファミリーを率いていたジョー・ボナンノだ。


シチリアマフィアの伝統にこだわる最後の大物といわれた男である。


ボナンノは葬儀屋を営んでいたのだが、うまく死体を葬る方法を考案して仲間から重宝された。


それは「二重底の棺」。


普通に死んだ者の遺体を納める棺を二重にし、下のほうの空間に殺しで発生した死体を隠すのだ。


そうしていっしょに埋葬してしまうのである。


同じ葬儀屋のボナセーラがドンとの付き合いを恐れた理由は、あるいはそれだったのかもしれない。


葬儀の仕事だからといって殺しがうまいわけでも死体の処分に長けていたわけでもないはずだが、隠すということなら利用価値があったのだ。


でも、とうとうドンに屈してしまった……。


チュッ!







【英語字幕】

ドン「Bonasera, Bonasera. What have I ever done to make you treat me so disrespectfully? If you’d come in friendship, the scum that ruined your daughter would be suffering this very day. And if an honest man like you should make enemies, they’d be my enemies. And then they would fear you」


ボナセーラ「Be my friend? Godfather?」


ドンの手にキスをするボナセーラ。


ドン「Good. Some day, and that day may never come, I’ll ask a service of you. But until that day……accept this justice as a gift on my daughter’s wedding day」


ボナセーラ「Grazie, Godfather」*Grazieはイタリア語で「ありがとうございます」のこと。


ドン「Prego」*Pregoは「どういたしまして」。


ボナセーラが部屋を出ていく。


ドン「(トム・ヘイゲンに向かって)Give this to Clemenza. I want people that aren’t going to get carried away. We’re not murderers, in spite of what this undertakers says」





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