ソロッツォの「ドンの時代は終わった」には裏がある  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット9)―






最初にDVD収録の字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同DVDの英語字幕を紹介します。







トム・ヘイゲンと交渉するソロッツォ



【字幕】

ソロッツォ「お前のボスは死んだ。お前は話が分かる。脅しやしねえ。ひと肌、脱いでもらいたい。ボスをやったのは確かに俺達だ。


(ヘイゲンに持たせたグラスを指して)飲めよ。ソニーと手を打ちたい。ソニーはヤクに乗り気だ。悪い話じゃない」


ヘイゲン「このままじゃ済まない」


ソロッツォ「頭にくるのは当然だ。だから、頼んでる。俺にはタッタリア・ファミリーがついてる。ほかの連中も全面戦争は許しゃしねえ。


いいか。よく考えろ。ドンの時代は終わった。10年前なら俺に殺れたか? 彼は死んだ。もう生き返らない。ソニーに話すんだ。仲間のテシオやクレメンザにも。悪い話じゃない」


ヘイゲン「話はする。だがルカが黙っちゃいない」


ソロッツォ「ルカは任せてくれ。ソニーが分かればいい。それに、あとの2人が」


ヘイゲン「やってみよう」


ソロッツォ「よし。行けよ。暴力は好きじゃない。俺は商売人だ。血は高くつく」







【吹き替え】

ソロッツォ「ボスは死んだ。あんたは武闘派じゃないから話せば分かってもらえると思う。コルレオーネ一家を助けてやれ。それでこっちも助かる。ドンをやったのは俺達だ。その1時間後にあんたを拾った。


(ヘイゲンに持たせたグラスを指して)飲めよ。あんたにソニーとの仲を取り持ってもらいたいんだ。あいつは取引に乗り気だった。あんたも有利だと思ってんだろ?」


ヘイゲン「ソニーは君の命を狙ってくる」


ソロッツォ「まあ最初のリアクションはそうだろう。それをあんたが説得するんだ。俺のバックにはタッタリア・ファミリーがついてる。ニューヨークのほかのファミリーだって全面戦争だけは避けたいと思ってる。


それが現状なんだよ、認めることだ。ようするにドンの時代は終わったんだ。10年前なら手も出せなかった。それがもう死んだ。どうあがいたって生き返らねえんだ。だからソニーを口説け。幹部連中にも言って聞かせろ。テシオやでぶのクレメンザに。いい商売だぜ?」


ヘイゲン「話してみる。だがルカだけは納得せんだろうな」


ソロッツォ「そうだな。まあいい。それはこっちで何とかする。あんたはソニーを頼む。それと幹部2人な」


ヘイゲン「精いっぱいやろう」


ソロッツォ「よし。それじゃあ、帰っていい。俺は暴力は嫌いなんだ。ビジネスマンだからな。血を流すと高くつく」







吹き替えに「ドンをやったのは俺達だ。その1時間後にあんたを拾った」とあるが、これは誤訳である。


トム・ヘイゲンを拾った1時間後にドンを撃ったのだ。


原作では、殺害の知らせを受けると同時にヘイゲンの拉致に動いたことがソロッツォの口から語られるが、どの程度の時間差だったのかはわからない。



「俺にはタッタリア・ファミリーがついてる」とソロッツォが口にする。


タッタリアはどのようにかかわっていたのだろうか。


麻薬ビジネスをやるとすれば、ソロッツォの役割は「ケシの栽培とヘロインの製造」であり、コルレオーネは「資金と法的保護」になる。


これは両者の会合シーンではっきりしている。


ではタッタリアは何をするかといえば、原作を読めばわかる。


運営面、つまり流通である。


とくに重要なのは密輸だ。


埠頭の組合がタッタリアの資金源だと書かれているが、ソロッツォが接触した理由はそれだろう。


ソロッツォ側との共同作業でやる予定だったようだが、じつはこれ、たいへんなのだった。


なぜかといえば、FBIが買収不能の難敵だからだ。


よって、ある程度の仲間が捕まることは間違いない。


となると、ヤバい仕事だから裁判になれば懲役をたっぷりくらう可能性がある。


すると、口を割る者が出てきてソロッツォ自身が危なくなる。


でも、刑期が短い保証があればみんな黙っていてくれる。


だから、多くの裁判官を操れるドンに助けてほしい。


――コルレオーネに近づいたのは、そういうわけなのだ。


あんたにとっちゃたいしたことないでしょ……うまい汁を吸いましょうや……いっしょにやりましょうよ……ね?


結果……


こっのジジイ! っのジジーが! うううううううううううっ!!



そこで、「ドンの時代は終わった」のせりふが気になってくる。


この原文を見ると「ドンは衰えていた」とも解釈できるのだ。


頭が古いからといって衰えたことにはならないから、ソロッツォが侮ったのなら何か理由があるはずだ。


たとえば、


勘のはたらくころだったら、ポーリーの風邪を疑うのではないか?


タイミングよくルカ・ブラージが寝返ったりしたら、罠だと敵に言ってるようなものと思わないのか?


父親の威厳が残っていれば、息子のソニーに勇み足をさせなかったんじゃないか?


これらはただの推測だ。


だが原作に目を移すと、思わぬ決定打をソロッツォがかましているではないか――


「ドンはヘマをやらかしたんだ。昔だったら、私はドンを狙おうなんて夢にも思わなかったろう。しかし彼は、イタリア人でもなければむろんシシリー人でもないあんたを、コンシリエーレにした。それで他のファミリーたちは、ドンを信用しなくなってしまったんだ」(表記は翻訳本にある通り)


ドンは間違えた……衰えてるねこれは……衰えてるなあ……でもって息子はバカ長男とマヌケ次男だ……三男は部外者同然だし……幹部どもも年寄りだ……コンシリエーレは腕力ねーし……話はわかる奴だけど……


さてどーする……いや、どーするもこーするも……これはもう……こいつはもう……こいっつはもおう……もおおおう……もおおおおおおおおおおおおおう……もお、も、ゲホゲホ(ここでマスクをして)……もーーーお! も、ゲホゲホ……ゲホ……えと、何だっけ……。



これが、ドン襲撃の真相なのであった!







【英語字幕】

ソロッツォ「Your boss is dead. I know you’re not in the muscle end of the family, so don’t be scared. I want you to help the Corleones and me. We got him outside his office about an hour after we picked you up.


(ヘイゲンに持たせたグラスを指して)Drink it. It’s up to you to make peace between me and Sonny. Sonny was hot for my deal, wasn’t he? And you knew it was the right thing to do」


ヘイゲン「Sonny will come after you」


ソロッツォ「That will be his first reaction, sure. So you have to talk sense into him. The Tattaglia family is behind me. The other New York families will go along with anything to prevent war.


Let’s face it, with all due respect, the Don – rest in peace – was slipping. Ten years ago, could I have gotten to him? Well, now he’s dead, Tom, and nothing can bring him back. You’ve got to talk to Sonny, to the Caporegimes, Tessio, fat Clemenza. It’s good business, Tom」


ヘイゲン「I’ll try. But even Sonny won’t be able to call off Luca Brasi」


ソロッツォ「Yeah, well…Let me worry about Luca. You just talk to Sonny. And the other two kids」


ヘイゲン「I’ll do my best」


ソロッツォ「Good. Now you can go. I don’t like violence, Tom. I’m a businessman. Blood is a big expense」





この記事へのコメント