ドンの「戦争は終わりだ」には裏がある  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット10)―






最初にDVD収録の字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同DVDの英語字幕を紹介します。







ヘイゲンからソニーの死を告げられるドン



【字幕】

ドンが書斎にやってきて、酒を口にしているトム・ヘイゲンの隣に座る。


ドン「ひと口、くれ。(ヘイゲンからグラスを受け取り)家内が上で泣いてる。出入りも厳しいな。相談役だろ。わしだけ何も知らんらしい」


ヘイゲン「ママには話してない。今、パパに話そうと思って」


ドン「酒の力でか。(ヘイゲンのうなずきを見て)飲み終わった」


ヘイゲン「ソニーが奴らに殺された」


ドン「犯人は捜すな。復讐はいかん。会合を開く。5大ファミリーを集めて。戦争は終わりだ」







【吹き替え】

ドンが書斎にやってきて、酒を口にしているトム・ヘイゲンの隣に座る。


ドン「ひと口くれ。(ヘイゲンからグラスを受け取り)家内は2階で泣いている。車が何台も駆けつけてた。おまえはドンの相談役だ。みんなが知ってることを私にも話してくれ」


ヘイゲン「ママには何も言ってません。まずあなたを起こして話そうと思ってたとこです」


ドン「酒の力が必要か」


ヘイゲン「ええ」


ドン「もう、飲んだんだろ」


ヘイゲン「ハイウェイでソニーが撃たれて、死にました」


ドン「やった者を詮索するな。報復もしてはならん。それより会議だ。5大ファミリーのボスを集めろ。戦争はもう終わりだ」







言うまでもないが、トム・ヘイゲンはドンの子ではない。


養子でもない。


養子ならトム・コルレオーネになるはずだが、名前が違う理由は原作にある。


それを聞くケイにマイケルが教えたのだ――


「ぼくのおやじがね、名前を替えたりしたらトムに対して失礼になるだろうと言ったからさ。トムの両親に対しても失礼になるって」


そのせいもあるのかどうかわからないが、ママに対する本人の複雑な心境も明かされている――


「彼は、ドンを自分の父と、ソニーを自分の兄弟と考えたようには、彼女を自分の母と考えることができなかった。彼女に寄せる彼の愛情は、フレディやマイケルやコニーに対するそれと似通っていた。親切ではあるが心をひらいてくれない人間に対する愛情であった」



そしてドンの義理の息子になったカルロもまた、複雑な気持ちを抱いていた。


結果的にソニー殺しに加担したわけだが、原作を読むとそれなりにいきさつがあったことがわかる。


カルロは最初からおもしろくなかった。


結婚によってファミリーの一員になれると思ったのに、皆がいる「散歩道」と言われる区画には住めず、仕事もちっぽけな賭け屋(スポーツ賭博)をあてがわれた。


働きがよければ出世や転居の望みもかなったのかもしれないが、ある失敗でファミリーに損をさせてしまい、ドンの命令で同僚からこっそりチェックされるようになる始末だった。


カルロは不満をコニーに、つまりドンの娘に乱暴することで解消していた。


コニーは父親に泣き言を言うものの、聞いてもらえない。


すでに、娘の“所有者”が父親から夫に移っているからだ。


自分は安全だと知ってますます大胆になり、カルロの家庭内暴力は続いた。


ソニーはドンからちょっかいを出すなと言われていたが、たまたまコニーのひどい顔を見てしまう。


だがもともとソニーはカルロの友人であり、乱暴者だが無力な人間を傷つけられないタイプであった。


カルロは無抵抗で殴られることによってソニーのやりすぎを防いだ。


その現場をたまたま敵側の者が見ていた。


抗争中だから勝手に動くのは厳禁なのに、妹のことになると頭に血が上っていきなり飛び出す人間だとばれてしまった。


そして、ソニー殺害への謀略が始まる。



すべてにドンがかかわっていたのだ。


ソロッツォをはねつけて抗争の種をまき、シチリア人でないヘイゲンをコンシリエーレにしたことで信用を失い、最後は娘への暴力行為を黙認したカルロにとどめを刺されてしまった。


本人は自らの非に気づいていない。


だが、ここで別の重要問題に気づくことになる。


ドンがソニーの死を知らされる前、知らせる側のヘイゲンがどう考えていたか、原作本にはこう記されている――


「ドンがこの事態をどう処理するか、ハーゲンには手に取るように理解できた。(中略)ドンは知らされなければならず、そしてコルレオーネの帝国を五ファミリーに明け渡すよう、自分の口でか、ハーゲンを通じてか命令せねばならぬことになろう」(表記は翻訳文通り)


コルレオーネは負けたのだ。


終戦というよりも敗戦なのだ。



ドンの病んだ姿には、ファミリーの厳しい現実が暗く浮かんでいる。







【英語字幕】

ドンが書斎にやってきて、酒を口にしているトム・ヘイゲンの隣に座る。


ドン「Give me a drop.(ヘイゲンからグラスを受け取り)My wife is crying upstairs. I hear cars coming to the house. Consigliere of mine, tell your Don what everyone seems to know」


ヘイゲン「I didn’t tell Mama anything. I was about to come up and wake you and tell you」


ドン「But you needed a drink first」


ヘイゲン「Yeah」


ドン「Well, now you’ve had your drink」


ヘイゲン「They shot Sonny on the causeway. He’s dead」


ドン「I want no inquiries made. I want no acts of vengeance. I want you to arrange a meeting……with the heads of the five families. This war stops now」





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