バルジーニの「時代は変わった」には裏がある  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット11)―






最初にDVD収録の字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同DVDの英語字幕を紹介します。







5大ファミリーの会合(その1)



【字幕】

ヴィト・コルレオーネ「ドン・バルジーニ。会議の実現に協力を感謝する。ニューヨーク等からの5大ファミリーの諸兄……ブロンクスのカーメン・クネオ、ブルックリンのフィリップ・タッタリア、スタテン島からはビクター・ストラキ、さらに、カリフォルニアから出席された諸兄……及び、全国から出席頂き感謝する。


なぜこんな事態になったかわしには分からん。実に不幸で、無意味なことだ。タッタリアもわしも息子を失った。タッタリアが同意するならすべてを、以前の状態に戻したい」


(中略)


バルジーニ「時代は変わった。好きなことができた昔とは違う。助け合いが必要だ。ドン・コルレオーネは政治家を押さえてる。我々にも利用させるべきだ。うまい水は分かち合わねば。むろん見合った礼はする。なにも、共産主義とは言わん」


ザルーキ「私もヤクは感心せん。若い者には、ヤクに手を出さんよう言ってきた。白い粉は確かに魅力だ。3000~4000ドルつっこめば5万ドルにはなる。誘われれば断れん。


だが無節操にやっちゃいかん。まず青少年には売るべきじゃない。悪魔の仕業だ。私の街では黒人にだけ流すとしよう。奴らがどうなろうと構やせんだろ」







【吹き替え】

ヴィト・コルレオーネ「ドン・バルジーニには会談の実現に尽力いただいて心から感謝する。5大ファミリーのリーダーが駆けつけてくれた。ニューヨークとニュージャージーから。カーメン・クネオはブロンクスから。それから、ブルックリンのフィリップ・タッタリア。スタテンアイランドから来てくれたのはビクター・ストラキだ。さらにはカリフォルニア、カンザスシティーからも友が参加してくれている。全国諸州の代表諸君に礼を言う。


なぜこのような事態に至ったか、皆目分からん。極めて不運にして、不必要なことだ。タッタリアも私も息子を失った。それもあって、タッタリアが同意するなら私も喜んで、すべての物事を元に戻したい」


(中略)


バルジーニ「だが時代は変わった。昔のように自分勝手はできない。我々とて助け合わねばならん。ドン・コルレオーネが判事や政治家を抱き込んでいるなら、我々にもその利益を配分するべきだ。井戸の水は引いて使って価値が出る。もっともその際彼は、請求書を出していい。我々は、共産主義じゃない」


ザルーキ「俺も薬はよくないと思ってる。以前からうちの者が手を出さんでいいように、余分な金を与えてきた。だが勧める方が強い。『粉はいいぞ。ほんの3000~4000ドルの投資でいいんだ。売れば5万ドルになるんだから』ってね。そりゃあ逆らえない。


いっそビジネスとしてコントロールしたい。節度ある商売にするんだ。文教地区では売らない。子供にはもってのほか。破廉恥極まりない。うちのほうではもっぱら黒人を相手に商売をしておる。あんな奴らがどうなろうと、こちとら知っちゃいない」







マリオ・プーゾの小説『ザ・シシリアン』に、ヴィト・コルレオーネが逃亡先のシチリアから戻ったマイケルと話す場面がある。


そこでヴィトは言う――


「人間は思慮分別を持ち、話し合いでいかなきゃだめだ。(中略)人の本分の第一は生きのびることだ。次にくるのはみんなが名誉と呼んでるものだ」


まさにこの会合はコルレオーネが生きのびるために話し合う場だったわけだが、肝心なのは次にくる「名誉」である。


ヴィトはボスたちに和平を誓ったが、生きのびた後にはその名誉が控えているのだ。


マフィアの名誉は、復讐を遂げるまで回復しないという。


よって、この時点ですでに報復へのプランを温めていたといえるかもしれない。


だが、温かいうちは実行しない。


原作でのコルレオーネファミリーの幹部会議で、ヴィトがマイケルに教えている――


「復讐という料理は、冷えた頃がいちばんうまいものさ」



バルジーニの「時代は変わった」という言葉には皮肉を感じる。


映画が公開された時代(1970年代初め)は、この会合の時(おそらく1940年代末)よりさらに変わっていたはずだからだ。


ベトナムで共産主義に押され、国内では公民権運動に気おされている状況でありながら、反共や人種差別の思想をせりふに入れているのだから、アメリカの観客がどのような印象を抱いたのか気になる。


いかにも保守派の白人男性層にうけそうな要素が、あるいは映画のヒットにつながった可能性もあるのだ。


ただ、差別的表現が意外な結果を生むこともある。


1971年の映画『フレンチ・コネクション』に出演していたロイ・シャイダーによれば、主演のジーン・ハックマンがある言葉を吐いたその瞬間、当時の映画館では拍手が起きたのだそうだ。


同作BDの字幕で「黒人は悪い」となっているせりふだが、原文は「Never trust a nigger」だから、「黒んぼなんか信じるな」がふさわしい。


拍手したのはなんと黒人たちだった。


映画で初めて白人が本音を言ったからである。


きれいごとばかりが人の心を打つわけではないのだろう。







【英語字幕】

ヴィト・コルレオーネ「Don Barzini, I want to thank you for helping me organize this meeting, and the other heads of the five families from New York and New Jersey. Carmine Cuneo from the Bronx, and from Brooklyn……Philip Tattaglia. And from Staten Island we have with us Victor Strachi. And the other associates that came as far as from California and Kansas City and all the other territories of the country. Thank you.


How did things ever get so far? I don’t know. It was so unfortunate, so unnecessary. Tattaglia lost a son, and I lost a son. We’re quits. And if Tattaglia agrees, then I’m willing to let things go on as before」


(中略)


バルジーニ「Times have changed. It’s not like the old days, when we could do anything we wanted. A refusal is not the act of a friend. If Don Corleone had all the judges and politicians, then he he must share them or let others use them. He must let us draw the water from the well. Certainly he can present a bill for such services. After all, we’re not communists」


ザルーキ「I also don’t believe in drugs. For years I paid my people extra, so they wouldn’t do that kind of business. Somebody says to them “I have powders.” “If you put up 3-4,000 dollar investment, we can make 50,000 distributing.” They can’t resist.


I want to control it as a business, keep it respectable. I don’t want it near schools, I don’t want it sold to children. That’s an infamia. In my city we would keep the traffic to the coloured. They’re animals, so let them lose their souls」





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