なぜ、マイケルはギーリー議員に強硬だったのか?  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(19発目の銃弾)―

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「マイケル・コルレオーネに死美れる」コーナーの『ゴッドファーザー PART II』編です。


最初にDVDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に実際に話された会話の原文を紹介します(DVD収録の英語字幕とは違います)。







ネバダ州のパット・ギーリー上院議員と話すマイケル・コルレオーネ



【字幕】

マイケルが、ギーリー議員とトム・ヘイゲンの双方に相手を紹介する。


マイケル「(議員に対し)弁護士のトム・ヘイゲン。(ヘイゲンに)ギーリー議員だ。(ギーリーに)今日の手配は彼が」


ギーリー「君と2人で話せると思ってた」


マイケル「信頼できる連中です。追い出す訳にはいかない」


ギーリー「構わんが。私はこのようにぶっきらぼうな男だ。ずい分、失礼な事を言うかもしれん。


君達は、このネバダで成功してる。ベガスで2大ホテルを経営し、リノにも。正式な許可もあるし、賭博管理委員会とも問題はない。


ところが私の情報では、トロピゲラと事を構えクリングマンを追い出すと聞いた。拡張は結構。だが一つ問題がある。あそこの許可はクリングマンの名前だ」


マイケル「問題あるまい」


ギーリー「はっきり言おう。お互いムダな時間が省ける。許可は出す。値段は25万ドルだ。さらに売り上げの5%。ホテル4件全部のだ」


マイケル「許可の費用は2万ドル以下のはずだな。なぜ、それ以上払う必要がある?」


ギーリー「私が決めたからだ。君達のような人種は好かん。不愉快だ。この美しい国に、ポマード頭で白いスーツを着てアメリカ人でございって顔をしてる。


取引はするが、本心はムシズが走るよ。格好をつけて。君もファミリーも全部だ」


マイケル「議員。偽善はお互い同じだ。だが、ファミリーの悪口は許さん」


ギーリー「分かったよ。人には皆、事情がある。お互いにな。文句はあるまい。君も儲かる。明日までに答えと金を。もう一つ。二度と私に接触するな。連絡はタンブルに。(ドアを指して誰かに)開けろ」


マイケル「議員。今、返事をしよう。あんたに払う金は、ない。取得料も払わん。許可は頂くが」


ギーリー「(笑いながら)失礼する」







【吹き替え】

マイケルが、ギーリー議員とトム・ヘイゲンの双方に相手を紹介する。


マイケル「(議員に対し)弁護士のヘイゲンに、(ヘイゲンに)ギーリー上院議員。(ギーリーに)今日の段取りはおたくのタンブルと彼が」


ギーリー「おお、なるほど」


マイケル「(皆に)かけて」


ギーリー「こういう話は、2人きりでするものと思ってたが」


マイケル「信頼できる者ばかりです。外せと言うと侮辱することになる」


ギーリー「そうか。まあそれはどっちでもいいけど。ご存知のように私はあけすけな人間だからね。歯に衣着せないし、どうかすると失礼な事を言うかもしれないが、承知しといてくれ。


コルレオーネファミリーはネバダでうまくやっておる。ホテルも、ベガスのメジャー級を2軒経営している。リノでも1軒。ライセンスは既得権に基づいてきちんとしてるし、賭博管理委員会も認めてる。


しかし私の得た情報によれば、今度はトロピゲラに事を仕掛けて、一週間以内にクリングマンを追い出す予定だそうだね。発展は結構だが、しかしあそこには一つだけ、問題があるんだ。名義がクリングマンのままだってことだよ」


マイケル「タンブルは腕利きだから」


ギーリー「まあそれはいい。しかし時間のムダは省きたいのでね。はっきり言おう。ライセンスは出す。ただしその値段は、25万ドルだ。加えて月に売り上げの5%。もちろんホテル4件分のだよ。コルレオーネさん」


マイケル「たしか値段は、ライセンス料は2万ドル以下のはずですが」


ギーリー「そうだね」


マイケル「ではなぜそれ以上のものを払わなきゃならない?」


ギーリー「それは私が絞りたいからだよ。私は君らが好かんのだ。この清潔な国へ押し入ってきて、脂ぎった頭で、シルクのスーツかなんか着こんで、アメリカ人でございって顔をしてのし歩いてる。


そりゃあ取引はするよ。しかし本心は違う。君らの偽善にはムシズが走る。表向きはビジネスマンの顔して、何がファミリーだね。あほらしい」


マイケル「先生。偽善はお互い様と言っときましょう。しかし、ファミリーをあしざまには言わないように」


ギーリー「分かった、分かったよ。人それぞれ事情はある。君には君のね。まあ君にとってもそんな取引じゃないんだから払うことだ。明日の正午までに返事と金をな。それからもう一つ。今後二度と私に接触しないこと。連絡はタンブルを通じてな。(誰かに)ドアを開けろ」


マイケル「先生。返事は今してもいいですよ。あなたに払う金は、ゼロだ。ライセンス料も払わない。あなたが好意で出してくれるとありがたいですがね」


ギーリー「(笑いながら)いやあ、お邪魔した」







原作でのマイケルは、建設会社を経営し、実業家クラブ会員や市の委員会の委員となっている(つまり名士気取り)。


ネリは、ファミリーの支配下にあるホテルの一切の安全を守る責任者だ(つまり用心棒の親玉)。



パット・ギーリーは当時のネバダ州上院議員パット・マッカランがモデルといわれる。組織犯罪との関係がうわさされていたからだ。


ギーリー議員がマイケルの狙うホテルを「トロピゲラ」と言っているが、これはシャレだろう。


脚本上は「トロピカーナ(Tropicana)」となっている。


「トロピゲラ(Tropi-gala)」の「gala」は「祭り」の意味だから、お祭り騒ぎみたいに暴れるマフィアを皮肉る意味でそう言ったのではないか。


ギーリー議員役のG・D・スプラドリンはアドリブが得意だったそうで、これもそのひとつだったのかもしれない。



コルレオーネはどのように議員と接触したのだろうか。


議員との会談前に、トム・ヘイゲンがマイケルに説明するせりふが脚本にある――


「議員の首席補佐官タンブルを通じてお膳立てをした。彼は猛烈なギャンブラーだ。10万ドル以上渡してやってはめた。そんなわけだから彼の情報は当てになるだろう。


「議員に仕掛けることはできるが、本人は自分をクリーンな政治家と思っている。よって納得できる条件が必要だ。選挙のための献金、慈善目的の寄付金など議員にかかわりがある何かだ。自分を買収しようとしていると感づいたら彼は固まる。


「タンブルによって事前に話は伝わってる。マイケルが議員以外とは会いたがらないこと、要件はトロピカーナのライセンスのこと、それを向こうは知っている。」



そもそも普通に許可申請すればいいのに、なぜ政治家に頼らなくてはならなかったのか?


ネバダ州には「ネバダ・ゲーミング・コントロール・ボード(Nevada Gaming Control Board)」というギャンブルを規制する賭博管理委員会があり、1955年に設置されている。


また、上記委員会の勧告に基づきカジノ事業や就業についての許可や取り消しなどを実行する部隊として「ネバダ・ゲーミング・コミッション(Nevada Gaming Commission)」がある(1959年に発足)。


映画では「ゲーミング・コミッション(Gaming Commission)」と言っているので、後者のほうがモデルだろう。


この組織は、不適切な人物や組織犯罪を遠ざけるため、ライセンスの取得に関しては審査が非常に厳しいのだという。


コルレオーネが1955年までに手中に収めていたカジノは既得権によってその審査が免除されていたのだが、拡張するとなると新たな許可が必要になる。


だが、調査によってボロが出る恐れがある。


うまく手を回してくれそうな政治家がいると都合がいいのだ。


とはいえいかにも買収と思われると議員は嫌うかもしれない……ところだったが、蓋を開けてみるとはっきり金を要求してきた!


脚本では、マイケルが議員からの法外な要求を不意をつかれるように聞かされてトムに目をやる、となっている。


トムのお膳立てとは違う展開になったからだ。


映画では、クリングマンを追い出すという話が出た後でマイケルがトムを見る(トムに黙って進めていたことがばれたために気まずくなったように)。



ギーリー議員は汚いが、筋は通っている。


「裏でのつきあいを求めて私に近づいたのだからそれなりの報いはあるものだ。見くびるな」ということだろう。


よく考えるとひどいのはマイケルのほうかもしれない。


お互い様だろうに、ちょっとふっかけられたからといって一銭も出さないと言い放つ。


ここからすでに、すべてを奪おうとするマイケルの姿勢がはっきりしている。


いかにもアメリカの強欲資本主義を体現する者としてマイケル・コルレオーネは描かれているからだ。







【原文】

マイケルが、ギーリー議員とトム・ヘイゲンの双方に相手を紹介する。


マイケル「(議員に対し)My lawyer Tom Hagen.(ヘイゲンに)Senator Geary」


トム「Senator」


マイケル「He’s the one who arranged this whole thing through your man, Turnbull」


ギーリー「Yes, yes」


マイケル「Sit down」


ギーリー「I was under the impression that you and I would talk alone」


マイケル「I trust these men with my life, Senator. If I were to ask them to leave, it would be an insult」


ギーリー「Well, it’s perfectly all right with me, but I should tell you that I am a blunt man and I intend to speak very frankly to you. Maybe more frankly than anyone in my position has ever talked to you before.


The Corleone family has done very well here in Nevada. You own, or you control two major hotels in Vegas, one in Reno. The licenses were grandfathered in, so there was no problem with the Gaming Commission.


Now my sources tell me that you plan to make a move against the Tropigala. They tell me that, within a week, you’re gonna move Klingman out. That’s quite an expansion. However, it will leave you with one little technical problem. Ahhh! The license will still be in Klingman’s name」


マイケル「Turnbull is a good man」


ギーリー「Yeah, well, let’s cut out the bullshit. I don’t want to spend any more time here than I have to. You can have the license. The price is 250,000 dollars. Plus a monthly payment of five percent of the gross. Of all four hotels, Mr. Corleone」


マイケル「Now the price for the license is less than 20,000 dollars, am I right?」


ギーリー「That’s right」


マイケル「Now Why would I have to consider paying more than that?」


ギーリー「Because I intend to squeeze you. I don’t like your kind of people. I don’t like to see you come out to this clean country in oily hair, dressed up in those silk suits, and try to pass yourselves off as decent Americans.


I’ll do business with you, but the fact is that I despise your masquerade, the dishonest way you pose yourself, yourself and your whole fucking family」


マイケル「Senator, we’re both part of the same hypocrisy. But never think it applies to my family」


ギーリー「All right, all right. Some people have to play little games. You play yours. So let’s just say that you’ll pay me because it’s in your interest to pay me. But I want your answer and your money by noon tomorrow. And one more thing, don’t you contact me again, ever. From now on you deal with Turnbull. (誰かに)Open that door, son」


マイケル「Senator, you can have my answer now if you like. My offer is this. Nothing. Not even the fee for the gaming license, which I would appreciate if you would put up personally」


ギーリー「(笑いながら)Good afternoon, gentlemen」









【主要参考資料・今回以降共通】


(映像)

映画『ゴッドファーザー』三部作のDVDおよび特典


TV番組『ゴッドファーザー 特別完全版』のVHS(字幕版)



(書籍)

『ゴッドファーザー』ハヤカワ文庫


『ザ・ゴッドファーザー』ソニーマガジンズ


『ラスベガスを創った男たち』論創社


『マフィア帝国 ハバナの夜』さくら舎


『シチリア・マフィアの世界』講談社学術文庫


『The Godfather Companion』Harper Perennial


『Francis Ford Coppola's The Godfather Trilogy』Cambridge University Press


『BEST AMRICAN SCREENPLAYS 3』Crown Publishers


『The Godfather Part II: Screenplay』Elizabeth Tubbs





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