最初にDVDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に実際に話された会話の原文を紹介します(DVD収録の英語字幕とは違います)。
ハイマン・ロスの手下ジョニー・オーラと話すマイケル・コルレオーネ
【字幕】
オーラ「マイアミのロスに会った」
マイケル「元気か」
オーラ「でもない」
マイケル「お見舞いでも送ろう」
オーラ「きっと喜ぶだろう。君の気持ちに。君の狙ってるカジノだが、名義はビバリーヒルズの弁護士2人だ。本当のオーナーはレイク・グループとマイアミのロス。経営はクリングマン。経営内容は悪くない。奴を追い出すのならマイアミはのってもいいと」
マイケル「ありがたい。感謝してると伝えてくれ」
オーラ「ロスは相棒を大切にする。昔の仲間もいなくなった。死んだり、捕まったり、追放されたり。ロスだけが残った。相棒を大切にしたからだ」
【吹き替え】
オーラ「マイアミのミスター・ロスに会ってきたところだ」
マイケル「体はどうだ?」
オーラ「よくはないな」
マイケル「何かできることないかな。何か送るとか」
オーラ「聞いたら喜ぶよ。その気持ちを。君が狙ってるカジノだが、名義がわかった。ローレンスとバークレーというLAの弁護士2人だ。本当のオーナーはクリーブランドのレイクビル・グループとマイアミのロスだ。経営はクリングマンがやってる。奴も一部所有してはいるんだがロスの意向を聞いたところ、君が奴を追い出すなら、マイアミの友人はのるって」
マイケル「うれしいね。伝えてくれ。感謝していると言ってくれ」
オーラ「ハイマン・ロスはパートナーに必ずもうけさせる。だが次第に古い仲間がいなくなった。死んだり、自然死だけじゃないが、投獄や、追放もある。残ったのはハイマン・ロスだけだ。そりゃパートナーを大事にしたからだ」
このシーンについては、「『ゴッドファーザー PARTⅡ』 ―ハイマン・ロスの視点―」の記事である程度書いているが、ジョニー・オーラによる「ロスは相棒を大切にする(字幕)」の言葉がポイントだ。
原文を直訳すると「ロスはいつも仲間のために金をつくる」となるが、仲間をもうけさせるといっても自分だって稼ぐわけだから、要は独り占めしないということである。
2度も口にしているので、すべてを奪いたがるマイケルへの皮肉が込められていると見るのが自然だ。
「昔の仲間もいなくなった。死んだり、捕まったり、追放されたり」――これも“お前もそうなる”とほのめかすマイケルへのメッセージだったのかもしれない。
ただ、もうけの独り占めを避けたのには別の理由も考えられる。
ハイマン・ロスのモデルとなったマフィアの大物マイヤー・ランスキーは、カジノの収益を、投資しているドンたちが満足できるよう公平に分配していたという。
ランスキーはユダヤ人でありマフィアで主流のイタリア人ではなかったため、邪魔者扱いされて身に危険が及ぶ可能性が高かったからだ。
マネーを自己防衛の手段としてうまく利用していたのである。
ロスもそうだったのかもしれない。
吹き替えに「経営はクリングマンがやってる。奴も一部所有してはいるんだが」とあり原文もそうなっているのだが、もともとの脚本にはクリングマンが資本参加していることは書かれていなかった。
では、所有している(株だか債券だか知らないが)というせりふが追加されたのはなぜか?
また、字幕で「経営内容は悪くない(原文でhe does all right)」とオーラは言いながら、なぜ「奴を追い出すのならマイアミはのってもいい」となってしまうのか?
推測だが、クリングマンがより多くの分け前を要求していたためにロスにとって煩わしい存在になっていたという事情があったのではないか。
実在の人物で、マフィアの死刑執行司令官アナスタシアの例がある。他のボスと違い、自分が担当するホテルの取り分が組合を含め15人もの所有者に分割されていたために大きな不満があったといわれているのだ。
クリングマンの場合もそうだったとしたら、それを材料にマイケルはロスに近づく計画を立てたと見ることもできそうだ。
ロスには、マイケルならもっともうけてくれるという思惑もあったかもしれないが。
特別完全版にはネリがそのクリングマンを実際に追い出すシーンがある。
ホテルの名義には2人の弁護士を使いロスは陰に隠れているという設定だが、これもマイヤー・ランスキーを参考にしているはずだ。
ランスキーのホテルは、オーナーリストにもライセンス取得者名にもランスキーの名はなく、本人は黒幕のままでいたのだという。
シーンの冒頭で、ジョニー・オーラがオレンジをみやげに持ち込んでいる。
パート1でも頻繁に使われたこのオレンジは「死や暴力を予言するモチーフ」といわれたが、プロダクション・デザイナーによれば「暗い色調の撮影が多いため、いいコントラストを生み出す小道具として使っただけ」なのだそうだ。
が、パート2の本作ではやっぱり殺しの暗示としか思えない。
終盤のコルレオーネ幹部会議などは、マイケルが「人は殺せる」とか言いながらオレンジを食べていたが、いかにもターゲットに見立てているかのように皮ごとムシャムシャやっていた。
コッポラ監督はその場面でのオーディオコメンタリーで、「シチリアを連想させるものでもある。シチリアにおける様々な思い出や歴史を象徴する存在として重要な意味がある」とも述べている。
退席を命じられたトムの動きがなんとなく鈍い。
これは同席したがっている気持ちの表れであることが脚本には記されている。
【原文】
オーラ「I just left Mr.Roth in Miami」
マイケル「How is his health?」
オーラ「Ahh, it’s not good」
マイケル「Is there anything I can do? Anything I can send?」
オーラ「He appreciates your concern, Michael. And your respect. The casino your’re interested in, the registered owners are Jacob Lawrence, Allan Barclay, both Beverly Hills attorneys. The real owners are the old Lakeville Road group from Cleveland, and our friend in Miami. Meyer Klingman runs the store; he owns a piece of it too; he does all right. But I’ve been instructed to tell you that if you move Klingman out, our friend in Miami will go along」
マイケル「It’s very kind of him. You tell him it’s greatly appreciated」
オーラ「Hyman Roth always makes money for his partners. One by one our old friends are gone. Death-natural or not, prison, deported. Hyman Roth is the only one left, because he always made money for his partners」

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