なぜ、マイケルにフランクは盾突くまねをしたのか?  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(21発目の銃弾)―




最初にDVDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に実際に話された会話の原文を紹介します(DVD収録の英語字幕とは違うものです。イタリア語のときは英語字幕での表現を使いました)。







コルレオーネファミリーの幹部フランク・ペンタンジェリと話すマイケル・コルレオーネ



【字幕】

マイケル「クレメンザはロサト兄弟にナワ張りを譲る約束をしてた。それを横取りした」


フランク「わしがか? クレメンザが何の約束をした? 奴はわし以上にバカタレどもを嫌ってた」


マイケル「裏切りだと思ってる」


フランク「自分は高い山の上にいて、のんびりと…何の酒だ? (部下のウィリー・チッチから聞いて)シャンパンを飲んでる。それでわしに指図を?」


マイケル「君のファミリーはまだコルレオーネの名だ。コルレオーネらしくしろ」


フランク「わしのファミリーはここでもラスベガスでもマイアミでも食ってない」


マイケル「フランク。いい男だ。好きだよ。親父に仕えてくれた」


フランク「ロサトは人質をとりながらわしにツバをかけおった。あのマイアミのユダヤ人のせいだ」


マイケル「だから刺激するな」


フランク「悪いか」


マイケル「フェアにしてほしい」


フランク「フェアにしろだと? あんなクソ野郎どもとフェアにできるか。奴らはヒスパニックや黒人を雇ってどこでだってドンパチやるんだ。奴らの商売は売春だ。それに麻薬。ギャンブルは最後だ。余計な口は出さんでほしい。ロサト兄弟は終わりだ。(マイケルにノーと言われ)殺す」


マイケル「マイアミのロスと問題を起こす事は許さん」


フランク「ユダヤ人に忠義立てするのか」


マイケル「親父はロスとの付き合いを大切にしてた」


フランク「付き合いはあった。大切にもしてた。だが信用はしてなかった。ロスの手下のジョニーも。失礼する。飲みすぎた。疲れたよ。はっきり言っとく。わしは迷惑はかけん。それでは。チッチ。ドアを」


フランクが部屋を出ていく。


ネリ「いいんですか」


マイケル「ニューヨークへ帰していい。計画がある。彼は飲みすぎだ。(時計を見て)もう遅い」







【吹き替え】

マイケル「クレメンザは死んだらブロンクスの島3つをロサト兄弟に譲る約束をしてた。それを横取りしてとぼけてる」


フランク「わしがか? クレメンザが何を約束したって? 知らんな。約束なんざしてやしない。あんな兄弟を俺よりも嫌ってた」


マイケル「フランキー。兄弟は恨んでる」


フランク「マイケルよ。あんたは高いお山のてっぺんに座りこんでんだ。そこであれを飲みながら、えー、何だっけほら?」


チッチ「シャンパン」


フランク「それだ。シャンパンカクテルだ。それを飲みながらうちのファミリーの指図か?」


マイケル「あんたのファミリーは今もコルレオーネ一家だろ。だったらコルレオーネらしいやり方をしてほしい」


フランク「しかしうちはここで食ってるわけでないしベガスで食ってるわけでもない。ましてやマイアミには恩義もない。ハイマン・ロスなんぞに」


マイケル「フランキー。あんたはいい人だ。大好きだ。親父にもよく尽くしてくれた」


フランク「ロサト兄弟はな、人質をとってんだ。その上、わしの顔にツバを吐いた。それというのもマイアミ野郎がバックにいるからだ」


マイケル「わかってる。だから刺激するなと言う」


フランク「手出すなって?」


マイケル「そう。フェアにやってくれ」


フランク「あいつらとフェアにやれだと? あんなケダモノとどうフェアにやれってんだよ。トム、何とか言えよ。いいか、奴らはヒスパニックを雇ってる。ニガーも呼びこんでんだ。しかも地元だろうが町内だろうがおかまいなしにドンパチやらかすんだ。その上商売ときたら売春だぞ。女だ。それからヤクだ、麻薬の売買だ。ギャンブルなんかおまけだよ。わしゃ自分のファミリーを自分の手で仕切りたい。だからロサト兄弟には死んでもらう」


マイケル「駄目だ」


フランク「殺す!」


マイケル「これからハイマン・ロスと大事な取引があるんだ。だから面倒は起こしてもらいたくない」


フランク「じゃあ、あのユダヤ人に忠義立てするってのか」


マイケル「あんただって知ってるだろ。親父もロスとビジネスをやってた。尊敬もしてた」


フランク「親父さんがあいつと取引してた? ハイマン・ロスを尊敬してた? だが決して信用はしてなかったぞ、親父さんは。それにメッセンジャーボーイのジョニー・オーラもだ。もういい。もう失礼する。わしゃな、もうくたびれたんだよ。飲みすぎたしな。ここにいるみんなに言っとくぞ。君らには絶対迷惑はかけん。ドン・コルレオーネ! チッチ、ドア開けろ」


フランクが部屋を出ていく。


ネリ「このままでいいんですか?」


マイケル「ニューヨークへ帰してやれ。こちらにも予定がある。ご老体は飲みすぎだ。(時計を見て)時間も遅い」







パート1でクレメンザ役だったリチャード・S・カステラーノはわがままを言ってコッポラから外された。


高額のギャラを要求したり、若いころのクレメンザ役をやりたがったり、自分の彼女に脚本の作業を手伝わせたがったり……。


パート1が大成功したせいで自らをマーロン・ブランドのような大人物と勘違いして天狗になっていたという説がある。


が、その高慢な態度がフランクの役づくりに役立った可能性もあるかもしれない。



飲みすぎていたとはいえ、フランクはファミリーのボスに対しとんでもない傍若無人ぶりを披露していた。


その口調は、英語とシチリア語が混ざったくだけまくりの表現と発音でもうグチャグチャ!


ヒスパニックや黒人にはそれぞれ「spicks」「niggers」と侮蔑語を使っており、人種差別的な姿勢もはっきりとわかる。



本当にクレメンザがロサト兄弟に何も約束していないとしたら、マイケルの耳には間違った話が入っていたことになる。


ロス側からの情報だったのだろうが、フランクはロサト兄弟は人質を取ってると言っているため、そういった非道な手段でロサトは多くの要求を通してきたのだろう。



いかにも「なんも知らんくせに上から目線でえらそーに」といったフランクのせりふがあるが、脚本ではこんな言葉も吐いている――


「マイケル、あんたはあまりにもストリートから遠く離れてる。ロサト兄弟と話をつける唯一の方法は殺ることだ。それも早く」


“ストリート”は一般に若者の文化や流行を表現するときに使われるが、ギャングがそう言うときは“streetwise”という単語で考えるとわかりやすい。


これは「高等教育で教わる知識よりも、日常で得る知恵のほうが実戦では役立つ」という意味の言葉だ。


フランクは古いタイプのオヤジが酔っ払った雰囲気だけでなく、エリート層への劣等感をプンプンと臭わせているのだ。


マイケルを指差して「殺す」とすごむところは、ロス同様に敵扱いしているかのようだ。



だが、このシーンがあるせいでこの後の寝室への銃撃、ロスとマイケルの会談時でのフランク犯人説、フランクの自宅で爆発するマイケルの怒りなどが生きてくる。


フランクが犯人だとたっぷり思わせておいて、最後の最後、マイケルが「黒幕はロスだ」ともらす。


見事などんでん返しである。







【原文】

マイケル「Clemenza promised the Rosato brothers three territories in the Bronx after he died. You took over and you didn’t give it to them」


フランク「I welshed?」


マイケル「You welshed」


フランク「Year, Clemenza promised them lu cazzo. Clemenza promised them nothing. He hated those sonofabitches more than I do」*「cazzo」は男性器などを意味するイタリアの卑語。「lu」は不明。


マイケル「Frankie, they feel cheated」


フランク「Michael, you’re sitting high up in the Sierra Mountains and you’re drinking. What’s he drinking, Cicci?」


チッチ「Champagne」


フランク「Champagne cocktails, and you’re passing judgment on how I run the family」


マイケル「Your family is still called Corleone……and you should always respect the family affairs」


フランク「My family doesn’t eat here, doesn’t eat in Las Vegas, and doesn’t eat in Miami with Hyman Roth!」


マイケル「Frankie, You’re a good old man, and I like you. You were loyal to my father for years」


フランク「The Rosato brothers, they’re taking hostages. And, Mike, they spit right in my face, all because they’re backed up by that Jew in Miami」


マイケル「I know. That’s why I don’t want them touched」


フランク「You don’t want him touched」


マイケル「No. I want you to be fair with them」


フランク「You want me to be fair with’em. Tom! How can you be fair to animals? Tom, for Christsake! Listen, they recruit spicks, they recruit niggers. They do violence in their grandmother’s neighborhoods! And I tell you everything with them is whores. Whores! Junk! Dope! And they leave the gambling to last. I wanna run my family without you on my back, and I want those Rosato brothers dead」


マイケル「No」


フランク「Morte」*イタリア語で「死」の意。


マイケル「Now I have business that’s important with Hyman Roth. I don’t want it disturbed」


フランク「Then you give your loyalty to a Jew before your own blood」


マイケル「Tch. Come on, Frankie. You know my father did business with Hyman Roth. He respected him」


フランク「Your father did business with Hyman Roth. Your father respected Hyman Roth. But your father never trusted Hyman Roth. Or his Sicilian messenger boy Johnny Ola. You’ll have to excuse me. I’m tired and I’m a little drunk! And I want everybody here to know there’s never gonna be no trouble from me. Don Corleone! Cicci, the door」


ネリ「You want him to leave now?」


マイケル「Let him go back to New York. I’ve already made plans. The old man had too much wine. (時計を見て)It’s late」





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