なぜ、マイケルにロスは高額のマネーを要求したのか?  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(25発目の銃弾)―




最初にDVDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に実際に話された会話の原文を紹介します(DVD収録の英語字幕とは違います)。







キューバのホテルのバルコニーで、ハイマン・ロスや仲間たちと話すマイケル・コルレオーネ



【字幕】

マイケル「今日、面白いものを見た。ゲリラの逮捕だが、男は捕まるより爆死を選んだ。手榴弾で敵の指揮官を道づれに」


ジョーニー・オーラ「奴らは異常だ」


マイケル「かもな。だが金のために戦ってない」


ロス「それで?」


マイケル「勝つかも」


ロス「この国には50年もゲリラがいる。わしは20代からここに来てる。糖ミツを仕入れにだ。君の父さんもだ」


ロスとマイケルが他の者たちから離れる。


ロス「これは2人きりで話したかったが、200万はどうした」


屋内に場所が変わる。ロスは上半身裸になってソファで横になっている。


ロス「君がゲリラを恐れて金をおさえては困る。(マイケルに)座れ。わしは君の活躍が見たい。できれば、あと20年。ここでは保護され、FBIも気にせず金儲けができる。アメリカから90マイルで政府も味方だ。たったの90マイルだ。あと一歩でアメリカ大統領も夢じゃない。金があればな。我々はUS鋼よりデカい」







【吹き替え】

マイケル「今日、面白いものを見たよ。反乱軍が憲兵隊に捕まった。ところが生きて捕まるより、隠し持った手榴弾で爆死を選んだ。自爆して、指揮官を道づれにしたんだ。なあジョニー」


ジョーニー・オーラ「ゲリラは異常なんだよ」


マイケル「ああ、そうかもしれん。だが考えてみると、兵隊は給料で戦うが、ゲリラは無償だ」


ロス「だから何だね」


マイケル「勝つかもしれん」


ロス「この国の反乱は50年前からのものだ。そういう国民性なんだよ。私は20年代にここに来て、君が赤ん坊の頃から糖ミツを動かしてた。トラックは君のお父さんのだった。マイケル…」


ロスとマイケルが他の者たちから離れる。


ロス「2人きりになったとき言おうと思ってたが、200万ドルがまだ来てないね」


屋内に場所が変わる。ロスは上半身裸になってソファで横になっている。


ロス「君が金を出し渋るのは面白くないね。ゲリラごときを恐れてどうする。(マイケルに)まあ座れ。座れ。できれば私も長生きしていっしょにやりたい。欲を言わせてもらえば、あと20年かな。ここなら保護は万全。司法省やFBIのくそったれの心配なしに思いのままに金儲けができる。本国から90マイル、そこでやりたい放題だ。わずか90マイル。それでいい。ほんの一歩の踏み込で、未来の合衆国大統領を操れるだけの、それだけの金を作れるんだ。マイケル。USスチールよりでかいんだぞ」







禁酒法時代が終わりを告げた1933年に、マイヤー・ランスキーが次の金脈としたのがキューバである。


ランスキーは後に大統領となる軍部のフルヘンシオ・バティスタに目をつけ、マフィアのボスたちから集めた50万ドルをみやげに接触したのだ。


そして、観光客が集まる見込みのあるキューバのどこでもマフィアにカジノを仕切らせることを条件に、年間300万~500万ドルをバティスタに保証した。


ハイマン・ロスがマイケルに要求した200万ドルも似たような事情で必要だったのかもしれない。


当時のキューバは軍隊が社会を支配しており、選挙なども政治家に買収された将校による威嚇や不正によって特定の候補者が当選していた。


1933年頃のバティスタは軍のトップに君臨するほどであったため、強大な権力を握っていたのだ。



「君がゲリラを恐れて金をおさえては困る(字幕)」「君が金を出し渋るのは面白くないね。ゲリラごときを恐れてどうする(吹き替え)」とロスがマイケルに不平をもらす。


原文上は、「反乱軍について考え直したことで君が金を出し惜しんでるという話が伝わるのを私は望まない」となっている。


バティスタを手なずけておくには多額のマネーが必要だから、仲間たちがびびって手を引きたがると困るのだ。


マイケルなど、ロスにとっては金を奪って殺すつもりというだけの存在である。


だから生意気な態度に対し、「この若造が!」といった思いで「君が赤ん坊の頃から糖ミツを動かしてた(吹き替え)」と話したのだろう。


ひとりの人間を利用し尽くして最後に消す手口は、マフィアのもっとも得意とする常套手段であったという。


ロスにはその特徴が色濃く出ている。



最後のせりふについては、「『ゴッドファーザー PART II』のせりふでハイマン・ロスの本性を探る」に詳しく書いたので、そちらをご覧になっていただきたい。







【原文】

マイケル「I saw an interesting thing happen today. A rebel was being arrested by the military police, and rather than be taken alive, he exploded a grenade he had hidden in his jacket. He killed himself and he took a captain of the command with him. Right, Johnny?」


ジョーニー・オーラ「Those rebels, you know they’re lunatics」


マイケル「Maybe so. But it occurred to me that the soldiers are paid to fight, the rebels aren’t」


ロス「What does that tell you?」


マイケル「They can win」


ロス「This country has had rebels for the last fifty years. It’s in their blood. Believe me I know. I’ve been coming here since the twenties. We were running molasses out of Havana when you were a baby. To trucks owned by your father. Michael…」


ロスとマイケルが他の者たちから離れる。


ロス「I’d rather we talked about this when we’re alone. The two million never got to the island」


屋内に場所が変わる。ロスは上半身裸になってソファで横になっている。


ロス「I wouldn’t want it to get around that you held back the money because you had second thoughts about the rebels. (マイケルに)Sit down. Sit down. If I could only live to see it, to be there with you. What I wouldn’t give for twenty more years. Here we are, protected, free to make our profits without Kefauver, the goddam Justice Department and the FBI. Ninety miles away, in partnership with a friendly government. Ninety miles. It’s nothing. Just one small step, looking for a man that wants to be President of the United States, and having the cash to make it possible. Michael, we’re bigger than U.S. Steel」





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