最初にDVDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に実際に話された会話の原文を紹介します(DVD収録の英語字幕とは違います)。
キューバから帰国後、トム・ヘイゲンと話すマイケル・コルレオーネ
【字幕】
マイケル「アル、ぬれタオルを。(トム・ヘイゲンに)ケイは俺の帰宅を?」
トムがうなずく。
マイケル「子供は? クリスマスの贈り物は?」
トム「やったよ」
マイケル「何を?」
トム「モーター式の乗れる車だ。すごいよ」
マイケル「(タオルを持ってきたアル・ネリとロッコ・ランポーネに)外に出ててくれ」
マイケルがタオルで顔を拭き、水を飲む。
マイケル「フレドは?」
トム「ロスは自分の船で逃げた。マイアミの病院にいる。ボディーガードは死んだ」
マイケル「フレドは?」
トム「脱出してニューヨークだ」
マイケル「よし。連絡をとってくれ。彼は恐れてる。もういいと言うんだ。悪いのはロスだ。襲撃は知らなかった。それだけだ」
トム「話がある」
マイケル「何だ。言えよ」
トム「ケイが流産した」
マイケル「男の子か」
トム「3カ月半で」
マイケル「質問に答えろ! 男か!」
トム「知らない」
【吹き替え】
マイケル「アル、タオル濡らしてくれ。(トム・ヘイゲンに)ケイには知らせたか」
トムがうなずく。
マイケル「子供はどうした? クリスマスの贈り物は?」
トム「ちゃんとしといた」
マイケル「何を買ってやった?」
トム「ああ、電気自動車だよ。ほんとに乗り回せるやつだ。いいよ」
マイケル「(タオルを持ってきたアル・ネリに)いやあすまん。(アルとロッコ・ランポーネに)君らはちょっと外へ出ててくれ」
マイケルがタオルで顔を拭き、水を飲む。
マイケル「兄貴はどうした」
トム「ああ、ロスは自分の船で逃げてマイアミの病院にいる。一度倒れたが持ち直した。あんたのボディーガードは死んだ」
マイケル「フレドの事を聞いてる」
トム「脱出してニューヨークのどこかにいるらしい」
マイケル「そうか。連絡をとってくれ。おびえてるだろうけど、何も心配ないと言ってやれ。悪いのはロスだ。うまく持ちかけられたに決まってる」
トム「ああ」
マイケル「(ネリとロッコを)もう入れてやれ」
トム「ほかにもあるんだよ」
マイケル「何だ。(ちゅうちょするトムを見て)何だ。どうした」
トム「ケイが流産で子供を亡くした」
マイケル「男の子か」
トム「まだ3カ月半だったから」
マイケル「聞いた事に返事しろ! 余計な事言うな! 男か女か!」
トム「ほんとに分からないんだ」
トムにケイの話を聞かされたマイケルだが、脚本上ではこうなっていた――
マイケル「男の子だったのか? それとも女の子か?」
トム「マイク、3カ月半だったから…」
マイケル「そりゃどういうことだ。正直に答えられなくなったか!」
トム「男の子だ」
マイケル「で、ケイは…彼女は大丈夫なのか?」
トム「彼女は上院の調査会を悪く受けとめてる」
マイケル「俺のせいということか? 赤ん坊がなくなったのは」
トム「わからない」
これを読むとマイケルがことさら男の子にこだわっていなかった様子がわかる。
ところが、映画だと男の子であってほしい気持ちがいかにも伝わるものに変えられている(字幕は原文通りに訳されているが、吹き替えではなぜか「男か女か!」となっている)。
何を狙って変更されたのか?
このシーンでは、マイケルがまずは家庭を気にする保守的な古いドンに見える。
新しく生まれる子に息子を望むのもその要素だ。
しかし、家庭内で孤立してでも父親に反発してきた新世代人としてのマイケルにふさわしい姿勢ではない。
おそらくはドンになって後を継いだことで、無理をして父親と同じに、ヴィト・コルレオーネになろうとしてきたのだ。
ママに父親について尋ねたときに「時代が違う」ともらしたり、ママの死後コニーに「あなたはパパのように強くしてただけ」と言われる情景にその苦悩が表れている。
「男か!(字幕)」と強く問う姿には、父親のようになりたくてもなりきれない苛立ちが色濃くただよっているのだ。
【原文】
マイケル「Al, get me a wet towel.(トム・ヘイゲンに)Kay know I’m back?」
トムがうなずく。
マイケル「What about my boy? Get him something for Christmas?」
トム「I took care of it」
マイケル「What was it, so I’ll know」
トム「Oh, it was a little car with an electric motor that he can ride in. It’s nice」
マイケル「(タオルを持ってきたアル・ネリに)Thank you, Al.(アルとロッコ・ランポーネに)Fellas, could you step outside for a minute?」
マイケルがタオルで顔を拭き、水を飲む。
マイケル「Where’s my brother?」
トム「Ah, Roth got out on a private boat. He’s in a hospital in Miami. Had a stroke but he recovered okay. Your bodyguard’s dead」
マイケル「I asked about Fredo」
トム「I think he got out, he must be somewhere in New York」
マイケル「All right. I want you to get in touch with him. I know he’s scared. Tell him everything is all right. Tell him I know Roth misled him, that he didn’t know they were going to try to kill me. They can come in now」
トム「Oh, there was something else」
マイケル「Come on.(ちゅうちょするトムを見て)What? Come on, what?」
トム「Kay had a miscarriage, lost the baby」
マイケル「Was it a boy?」
トム「Mikey, at three and a half months…」
マイケル「Now can’t you give me a straight answer anymore! Was it a boy!」
トム「I really don’t know」

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