最初にDVDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に実際に話された会話の原文を紹介します(DVD収録の英語字幕とは違います)。
調査委員会で勝利した後、ホテルでケイと話すマイケル・コルレオーネ(前半)
【字幕】
ケイ「ごめんなさい。子供達と行きます」
マイケル「出発は明日だぞ」
ケイ「(マイケルの脇にいるロッコ・ランポーネに)ロッコ…」
ロッコ「部屋にいる」
ロッコが出ていき、マイケルとケイの2人だけになる。
ケイ「ネバダへは帰らないわ。子供達もお別れに来たの。勝ってよかったわ。あなたは負ける事のない人だわ」
マイケル「座れ」
ケイ「長居はしたくないの」
マイケル「話がある。考えてた事だ。変わろうと思ってる」
ケイ「もう手遅れよ。あなたと話はもう…」
マイケル「何が手遅れだ」
ケイ「フランクに何をしたの?」
マイケル「兄貴が来た」
ケイ「兄弟がいたとはね。今はどこ?」
マイケル「国へ帰る飛行機だ」
ケイ「顔を見せただけ?」
マイケル「彼ら兄弟の問題だ。何も知らん」
【吹き替え】
ケイ「マイケル、ちょっといい?」
マイケル「ああ、どうした」
ケイ「子供が待ってるの。もう行くわ」
マイケル「行くってどこへ。帰るのは明日だろ」
ケイ「(マイケルの脇にいるロッコ・ランポーネに)ロッコ…」
ロッコ「じゃあ、部屋にいるから」
ロッコが出ていき、マイケルとケイの2人だけになる。
ケイ「あたしネバダへは帰らないから。子供達もお別れをしに連れて来たの。査問会では勝っておめでとう。あなたの事だから、あんな人達に負けるはずないと思ってたけど」
マイケル「まあ、かけろ」
ケイ「いえ、長居するつもりはないの。すぐ行くから」
マイケル「君とは話したいと思ってた。前から考えてた事もある。変えたいと思ってる事が」
ケイ「変えると言われてももう手遅れなのよ。あなたには何を言っても無駄だから、もう…」
マイケル「手遅れというのはどういう意味だ」
ケイ「フランキーはどうしてあんな事言い出したの?」
マイケル「兄さんが来たからだろ」
ケイ「兄さんがいるなんて知らなかった。今どこに?」
マイケル「シチリアへ帰る飛行機の中だ」
ケイ「顔を見せに来ただけなのね」
マイケル「兄弟間の問題だ。私は関係ない」
コッポラ監督によれば、フランク役のマイケル・V・ガッツォは撮影日の午前中に行われたリハーサルで最高の演技をしたそうだ。
ところがランチタイムで酔っぱらってしまい、午後の本番では本来の演技ができなかったのだという。
たしかに酔ったような雰囲気だが、突然兄を目にしてうろたえているようにも見えるからそれでよかったのかもしれない。
映画ではフランクが議会で翻意したわけがはっきりとはわからないが、脚本にはケイに説明するマイケルの言葉として書かれていた。
ソニーマガジンズの『ザ・ゴッドファーザー』にも紹介されているが、同書ではこう訳されている――
マイケル「わかるだろう? シチリアでは、昔の話だが……、血の繋がった兄弟を殺す唯一の正当な理由は……、唯一、裏切り者だった時だけなんだ」
そしてもうひとつ、フランクのある事情をマイケルが教えている。
簡潔に言えば、別れた彼女がもうけた2人の子供をイタリアの兄に預けていた、というものだ。
「沈黙の掟を破ったらその子たちが兄に殺される」とフランクに思わせるマイケルの策略である。
ならばその話だけすればいいものを、わざわざ「シチリアでは兄弟を殺す唯一の正当な理由は裏切り者だった時だけだ」と余計なことまで口にしたのはなぜなのか?
ケイに「彼のお兄さんを殺すつもりだったの?」と問われマイケルは、「ケイ、君は誤解している。その手のことは過去の話さ。約束する」と返している。
それからフランクの子供の件をマイケルが語り始めているのだ。
つまり、ケイが抱いているであろう憶測をある意味正しいと認めないと、フランクの本当の事情を伝えたところで言い訳がましく聞こえるという判断だったのではないか。
よってフランクの事情を本編に入れないなら、兄弟殺しの前置き話もいらないことになる。
兄弟殺しについてだけ口にするとしたらいかにも脅迫めくから、ケイに向けたマイケルの言葉としては不適切になる。
この説明がなぜ映画で採用されなかったのかというと、どこかしらくどかったためではないだろうか。
これらがカットされたことについて、前述の『ザ・ゴッドファーザー』はこう見ている――
「この兄弟の間に存在する強い絆が画面から充分に伝わってくるため、細かい説明はいらないと判断したのかもしれないが、やがて兄フレドーを殺すマイケルの行動を暗示するセリフでもあり、カットせずに残す余地はあったのではないだろうか」
余地はなかったと思う。
フレドについてはネリを相手に暗示するシーンがいくつかある。
兄弟ですら殺せる掟の説明にはなるがそんなものは不要だろう。
それがないからこそ、いかにもすべてを身勝手に決めるマイケルの傲慢さが際立つのだ。
【原文】
ケイ「Michael, excuse me」
マイケル「Hello」
ケイ「The children are outside. We’re going」
マイケル「What do you mean you’re going? We’re all going to leave tomorrow」
ケイ「Uh, Rocco…」
ロッコ「I’ll be in my room, Mike」
ロッコが出ていき、マイケルとケイの2人だけになる。
ケイ「Michael, I’m not going back to Nevada. I brought the children to say good-bye to you. I want you to know I’m very happy for you. I suppose I always knew you were too smart to let any of them ever beat you」
マイケル「Why don’t you sit down?」
ケイ「No. No, I’m not going to stay long. I can’t」
マイケル「There are some things I’d like to talk to you about. Some things that’ve been on my mind. Changes I want to make」
ケイ「I think it’s too late for changes, Michael. I promised myself I wasn’t going to say anything. Now I…」
マイケル「What do you mean, too late?」
ケイ「What really happened with Pentanjeli, Michael?」
マイケル「His brother came to help him」
ケイ「I didn’t even know he had a brother. Where is he now?」
マイケル「He’s on a plane back to Sicily」
ケイ「All he had to do was show his face」
マイケル「It was between the brothers, Kay. I had nothing to do with it」

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