最初にDVDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に実際に話された会話の原文を紹介します(DVD収録の英語字幕とは違うものです。イタリア語のときは英語字幕での表現を使うか、カットしました)。
ロスや裏切り者への復讐について幹部会議で話すマイケル・コルレオーネ
【字幕】
マイケル・コルレオーネ、アル・ネリ、ロッコ・ランポーネがそろう場に、トム・ヘイゲンが遅れて入ってくる。
マイケル「どうした?」
トムがマイケルがシチリア語で何か言い合う。
マイケル「ロスの事が出てる。(新聞をトムに渡し)知ってるか?」
トム「イスラエルだと」
ネリ「イスラエルの最高裁は移住を却下した。パスポートも帰米以外、無効だ。昨日ブエノスアイレスに着いた。永住を認めれば100万ドル払うと。断られた」
トム「次はパナマだな」
マイケル「ムリだ。1000万ドルでもな」
ロッコ「医者は彼は6カ月の命だと」
マイケル「20年前から同じだ」
トム「飛行機はマイアミに」
マイケル「そうだ。そこでやる」
トム「不可能だ。すぐに税関、FBIへと引き渡される」
マイケル「いや。不可能はない」
トム「大統領を殺るみたいなものだ」
マイケル「驚いたな。この世の中で唯一確かな事は、人は殺せる。ロッコは?」
ロッコ「難しい。不可能じゃない」
トム「さっき、なぜ“どうした”と?」
マイケル「話があると思った。ベガスへ移ると。ハウスタン・ホテルの副社長に誘われてると。違うのか」
トム「断った。いちいち報告するのか」
マイケル「よし。仕事だ」
トム「一応、考えてみてくれ。ロスは追われてる身だ。君はすでに勝った。それをなぜ? 皆、抹殺する気か」
マイケル「皆、抹殺しようとは思ってない。敵だけだ。一緒にやる気はあるのか。ないのなら、細君と、子供と、愛人を連れて、ベガスへ行け」
トム「ひどい言い方だ。裏切った事があるか。なぜだい」
マイケル「では一緒に?」
トム「一緒に。私は何を?」
【吹き替え】
マイケル・コルレオーネ、アル・ネリ、ロッコ・ランポーネがそろう場に、トム・ヘイゲンが遅れて入ってくる。
マイケル「よう。かけろ」
トムが椅子に座る。
マイケル「どうした」
トム「どうしたって何が?」
マイケル「お友達のハイマン・ロスの事がニュースになってる。(新聞をトムに渡し)聞いてるか?」
トム「イスラエルじゃなかったのか」
ネリ「ああ、あそこの最高裁が帰国ユダヤ人として住むのは許さんと言うんだ。パスポートもアメリカへ帰るんでなければ、無効って事だし。昨日はブエノスアイレスに降りてね。永住を認めてくれたら100万ドル出すと言ったんだけど。それも断られた」
トム「今度はパナマか」
マイケル「あそこも受け入れん。100万が1000万でも駄目だ」
ロッコ「病気は深刻らしいな。医者はあと半年の命だと言ってる」
マイケル「死ぬ死ぬと言いながらもう20年だ」
トム「飛行機はマイアミへ」
マイケル「そう。そこでやるんだ」
トム「しかしそりゃ無理だよ。降りたらたちまち財務省や税関やFBIなんかが取り囲むんだ」
マイケル「無理ではない。やればやれる」
トム「無理だって。大統領の暗殺と同じぐらいだ」
マイケル「君らしくもない事を。歴史は教えてくれてるだろ。この世でひとつ確かな事は、人は殺せるって事だ。ロッコは?」
ロッコ「難しい。でもやれなかない」
マイケル「よし」
トム「ああさっき来た時、“どうした”って聞いてたけど?」
マイケル「そっちから話があると思ったんだが。家族をベガスへ移してるんだろ? 良い話があるっていうじゃないか。ハウスタン・ホテルの副社長に来てって。なぜ黙ってた」
トム「あれは断ったよ。いちいちそんな事まで報告しなきゃならないのか」
マイケル「では仕事の話だ」
トム「よかろ。とにかくこの件はよく考えてほしい。ロスとロサトは逃亡中だ。それをわざわざ殺る価値があるのか? 意味があるのか? もう勝ったんだ。その上に皆殺しか」
マイケル「皆殺しだなんてそんな事は考えてはない。敵だけだ。それだけ。私はやらなければならない事をやるまでだ。君が嫌なのなら無理にとは言わん。女房子供や、愛人を連れて、ラスベガスへ移るがいい」
トム「なんでそう嫌味を言う。こっちは忠実に勤めてるんだ。何だというんだ」
マイケル「そうか。じゃあ一緒にやるんだな?」
トム「当たり前じゃないか」
マイケル「よし」
トム「で、私は何をすればいい?」
ハイマン・ロスはなぜ亡命する気になったのか?
マイケルに殺される可能性ならどこの国でもあるはずだ。
この事情はマイヤー・ランスキーの話が参考になる。
ランスキーは脱税や麻薬取引の容疑で司法当局から執拗につけ狙われており(家宅捜索、盗聴、尾行などなど)、それに嫌気がさしてアメリカを離れたがっていた。
イスラエルにはすべてのユダヤ人に移住の権利を与える「帰還法」があったのだが、ランスキーもロス同様に拒否されている。
「移住を認めたら中東戦争で必要な戦闘機を売らないぞ」と同国がアメリカに脅されたからであった。
ランスキーもブエノスアイレスがあるアルゼンチンやパナマなど多くの国を頼ったが、マフィアとの関係が周知の事実であったために拒否されてしまった。
アルゼンチンは移民に寛容だったから目をつけたのだろう。
パナマを選んだ理由は不明だが、マイケルがあそこもダメだと決めつけたのはおそらく当時の政権が親米派だったためである。
大統領を殺るような任務を幹部のロッコにさせたのはやはり腕がよかったからだと思われる。
原作でヴィト・コルレオーネがトム・ヘイゲンにこう言う場面もあった――
「運転手のあのランポーネだが、彼には目をかけてやれよ。彼はきっと、わしが考えている以上の男だ」
マイケルの非情さがピークに達していることは、「人は殺せる」の言葉で明らかだ。
身内のフレドをネリに殺らせるのも相当に冷たい(殺し屋ではあっても、ネリはいくらかためらう態度をママの葬儀時に見せていた)。
危険極まりないロス暗殺の任務を幹部にさせてもおかしくないのだ。
ロッコが衆人環視の中でロスを襲った状況は、ケネディ大統領暗殺犯とされるリー・ハーヴェイ・オズワルドを射殺したときのジャック・ルビーを連想させる。
そのときのルビーは取り押さえられただけで警察に撃たれることなどなかったから、ロッコもその程度にしておけばもっともらしく見えたはずだ。
映画的にドラマチックな効果を狙ってあのようにしたのだろうか。
脚本ではボートハウスへ向かう途中でトムが不倫相手になってしまったサンドラに会い、コルレオーネファミリーを2人で抜けようと促されている。
マイケルがトムに冷淡なのは身内同士の不倫への嫌悪感や2人の動きに勘づいていたためともいえるが、映画ではそのシーンはカットされている。
よって、もっとも信頼している相手であってもマイケルの冷血ぶりは変わらないという意味の演出だったのかもしれない。
3つの殺しも極めて冷酷だ。
マリア様と唱えるフレドを殺し、昔のファミリーを懐かしむフランクを死なせ、いかにも弱っているロスを殺る――
完全に鬼である。
この時点のマイケルに、人間味は一切必要ないのだ。
コッポラはマイケルを「あらゆる相手を打ち負かし、独り座るラストシーンのマイケル・コルレオーネは、生ける屍なのだ」と形容した。
鬼神のふりをした餓鬼みたいである。
トムがFBI監視下のフランクを訪れることができた理由も脚本にある。
司法取引を蹴ってただの犯罪者となったフランクの弁護士となり、裁判所命令の書類を用意した上で会ったのだ。
【原文】
マイケル・コルレオーネ、アル・ネリ、ロッコ・ランポーネがそろう場に、トム・ヘイゲンが遅れて入ってくる。
マイケル「Tom, sit down」
トムとマイケルがシチリア語で何か言い合う。
マイケル「Our friend and business partner, Hyman Roth, is in the news. (新聞をトムに渡し)Did you hear about it?」
トム「Well, I hear that he’s in Israel」
ネリ「Mmmm. The High Court in Israel turned down his request to live there as a returned Jew. His passport’s been invalidated except for return to United States. He landed in Buenos Aires yesterday. He offered a gift of a million dollars if they’d let him live there. They turned him down」
トム「He’s going to try Panama」
マイケル「Panama won’t take him, not for a million, not for ten million」
トム「His medical condition is reported as terminal. He’s only going to live another six months anyway」
マイケル「He’s been dying of the same heart attack for twenty years」
トム「That plane goes to Miami」
マイケル「That’s right. That’s where I want it met」
トム「Mike, that’s impossible. They’ll turn him over directly to the Internal Revenue, Customs and half the FBI」
マイケル「It’s not impossible. Nothing’s impossible」
トム「It would be like trying to kill the President. There no way we can get to him」
マイケル「Tom, you know you surprise me. If anything in this life is certain, if history has taught us anything, it’s that you can kill anyone. Rocco?」
ロッコ「Difficult, not impossible」
マイケル「Good」
トム「Well, why did you ask me if something was wrong when I came in?」
マイケル「Well, I thought you were going to tell me that you were moving your family to Vegas and that you’ve been offered the vice presidency of the Houston hotels there. I thought you’d tell me that」
トム「I turned them down. I mean…do I have to tell you about every offer that I turn down?」
マイケル「Well, let’s do business」
トム「All right. Just consider this, Michael, that’s all, just consider it. Now Roth and the Rosatos are on the run. Are they worth it? And are we strong enough? Is it worth it? I mean you’ve won. Do you want to wipe everybody out?」
マイケル「I don’t feel I have to wipe everybody out, Tom. Just my enemies, that’s all. You’re coming along with me in these things I have to do or what? Because if not, you can take your wife, your family and your mistress, move them all to Las Vegas」
トム「Why do you hurt me, Michael? I’ve always been loyal to you, I mean what is this?」
マイケル「So, you’re staying」
トム「Yes, I’m staying. Now what is it that you want me to do?」

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