最初にDVDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に実際に話された会話の原文を紹介します(DVD収録の英語字幕とは違います)。
父親(ヴィト・コルレオーネ)の誕生日に家族と話すマイケル・コルレオーネ
【字幕】
ソニー「日本人てのはどうなってるんだ。このパパの誕生日に爆撃しやがって」
フレド「誕生日、知らなかったのさ」
トム「石油を止めたせいだ」
ソニー「せいもクソも、爆撃だぞ。肩を持つのか」
テッシオ「今朝、3万人が入隊した」
ソニー「マヌケだ」
マイケル「なぜ?」
コニー「戦争の話なんて、やめてよ」
ソニー「お前はカルロと話してろ。他人のために死ぬなんてマヌケだ」
マイケル「パパの意見だ」
ソニー「その通りだ」
マイケル「国のために戦うんだ」
ソニー「血のつながりはない」
マイケル「そうは思わない」
ソニー「なら学校なんかやめて軍隊に入っちまえ」
マイケル「入った。海軍に」
【吹き替え】
ソニー「それにしても敵の奴あったまにくるよな。なにも父さんの誕生日に空襲なんかすることねえじゃねえかよ。なあ」
フレド「誕生日とは知らなかったって」
ソニー「ま、そりゃそうだよな。へっ」
トム「石油を止めから報復は当然かもな」
ソニー「何が当然だよ。爆弾落とされて敵の肩持ってどうすんだよ。どっちの味方だ」
テッシオ「今朝、3万人が入隊したってさ」
ソニー「バカだねえ」
マイケル「なんでバカなんだ?」
コニー「やめてよ! 戦争の話はやめて」
ソニー「うるさい。お前はカルロと話してろ。バカだよ。他人のために命かけるなんて」
マイケル「父さんはそう言う」
ソニー「そうだよ。父さんいつもそう言ってる」
マイケル「でも、国のために戦うんだ」
ソニー「国と血のつながりはないぞ」
マイケル「そうは思わない」
ソニー「そうは思わねえ? じゃどう思うんだよ! 大学やめて軍隊に志願しようってのかよ!」
マイケル「したよ。海兵隊に入った」
原文には「ジャップ」という日本人への侮蔑語が2度使われているが、吹き替えではまったく日本人を示す言葉が出てこない(字幕には1回出てくる)。
「キツネ目のろくでなし」とけなす表現まで原文にはある。
日本の視聴者にあまり抵抗を感じさせないように訳されたのだろうが、これでは大勢が入隊したというアメリカ人の怒った心情が伝わってこない。
ソニーがむかつきながらも、それでも国のために働くなんてゴメンだと言う点がポイントだ。
自国が爆撃されても大事なのは自分や家族なのである。
徹底的に国に関心がない。
脚本ではドンの誕生日ではなくクリスマスの日となっており、ヴィト・コルレオーネも皆といっしょにディナーの場にいる(真珠湾攻撃は12月初旬だから最近の話題としてソニーは取り上げただけだろう)。
そしてマーロン・ブランドが出演していたら存在していたはずの、書斎で交わされるヴィトとマイケル2人だけの会話もあった――
ヴィト「さて、軍隊に入るという話だがどういうことなんだ? ん?」
マイケル「話じゃない。実際に入るんだよ」
ヴィト「よそ者のために命を懸けるというのか?」
マイケル「よそ者のためじゃない。自分の国のためだ」
ヴィト「家族なら誰もよそ者じゃないがな。わしを信じろ。困難が生じてもお前の国は面倒を見てくれはしないんだ」
マイケル「それは旧世界の話だよ、パパ。ここはシチリアじゃない」
ヴィト「わかってる。わかってるよ、マイケル。クリスマスだ。兄たちも妹もそろってる…皆、幸せだ。台無しにしないようにしよう。自分の思うようにすればいい。だがそのときになったら、息子らしくわしのところへ来てくれ。お前に望むことがあるから…」
マイケル「あなたのような男にはならない」
ソニーが「国と血のつながりはないぞ(吹き替え)」とヴィトの考えに沿った言葉を吐いているが、マーロン・ブランドが出演してくれなかったため、代わりにソニーを使って言わせたのだという。
家族の法が国家の法を上回るドラマゆえに、ここはたいへんに重要だったのだろう。
マーロン・ブランド本人の弁では、続編に出演しなかったのは当時のパラマウント社長が嫌いだったからだそうだが、コッポラ監督は撮影当日の朝まで現場に来てくれることを待ち望んでいた。
結局願いがかなわず脚本を書き直したのだが、監督はそれでよかったと思うようになったという。
コッポラ「ブランドは映画全編につきまとうゴーストだ。出演していたらすべてがダメになっていたかもしれない。ブランドが来なかったのは、もしかしたら天の配剤だったのだ」
脚本にはフレド殺しの10年後に自宅を離れていたアンソニーがマイケルを訪ねるシーンがある。
そこに、コニーがマイケルにインスリン注射をしながらこう語るせりふがある(この一部はパート3でも使われている)――
「とても冷たいあの湖を見るたび、溺れ死んだかわいそうなフレドを思い出すの。タホ湖は本当に冷たい。人が溺れると、その体は水中で漂い続けるそうよ――完全に保存されたまま。永遠にそのままだって言う人もいる」
泣ける。
【原文】
ソニー「Ah say, what did you think of the nerve of those Japs, those slanty-eyed bastards? Dropping bombs in our own backyard on Pop’s birthday yet」
フレド「They didn’t know it was Pop’s birthday」
ソニー「They didn’t know it was Pop’s birthday」
トム「Well, we should’ve expected it after the oil embargo」
ソニー「What did you mean expect? Expect it or not, they got no right dropping bombs. What are you a Jap lover or something? You, on their side?」
テッシオ「I understand thirty thousand men enlisted this morning」
ソニー「Bunch of saps」
マイケル「Why are they saps?」
コニー「Sonny, come on, we don’t have to talk about war」
ソニー「Hey, beep, you talk to Carlo, right? They’re saps because they risk their lives for strangers」
マイケル「Oh, that’s Pop talking」
ソニー「You’re goddam right. That’s Pop talking」
マイケル「Yeah. They risk…risk their lives for their country」
ソニー「Country ain’t your blood. You remember that」
マイケル「I don’t feel that way」
ソニー「You don’t feel that way. Well, if you don’t feel like that, why don’t you just quit college and go to join the army?」
マイケル「I did. I enlisted in the Marines」

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