下ネタの字幕はよくできてる!……のか?  ―『フルメタル・ジャケット』を丸坊主にする(六頭目)―




最初にBDの日本語字幕を、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介します。







ジョーカーのあとにカウボーイを罵るハートマン軍曹



【日本語字幕】


ハートマン「貴様の言い訳は?」


カウボーイ「言い訳ですか?」


ハートマン「アホ相手に質問するのはおれの役だ」


カウボーイ「(字幕なし)サー、イエス、サー」


ハートマン「続けてよろしゅうございますか?」


カウボーイ「(字幕なし)サー、イエス、サー」


ハートマン「不安か?」


カウボーイ「そうであります!」


ハートマン「おれのせいか?」


カウボーイ「サー」


ハートマン「何だ? おれをクソバカと呼びたいか?」


カウボーイ「違います!」


ハートマン「身長は?」


カウボーイ「180センチです」


ハートマン「まるでそびえ立つクソだ。サバ読んでるな」


カウボーイ「本当です」


ハートマン「パパの精液がシーツのシミになり、ママの割れ目に残ったカスがお前だ。どこの穴で育った?」


カウボーイ「テキサスです」


ハートマン「テキサスで取れるのは種牛とおカマだ。種牛には見えんからおカマだ! 吸うんだろ?」


カウボーイ「(字幕なし)サー、ノー、サー」


ハートマン「おフェラ豚か?」


カウボーイ「(字幕なし)サー、ノー、サー」


ハートマン「カマを掘るだけ掘って相手のマスかき手伝う外交儀礼もないやつ。きっちり見張るぞ!」







リー・アーメイのせりふは5割ほどが即興だった。


キューブリック監督がそこまでの自由を与えた俳優はピーター・セラーズとジャック・ニコルソンくらいという。



軍曹のメチャクチャなせりふを限られた字数で日本語に訳すのはたいへんだったろう。


このカウボーイのパートはとくに面倒だったはずだ。


たとえば、「パパの精液がシーツのシミになり、ママの割れ目に残ったカスがお前だ」である。


ほんとうはこう言っていると思われる――


「精液のいちばん良い部分がママの尻の割れ目から落ちて、マットレスのシミになったみたいなところだろ。ママの浮気でできた子ってことも知らないんじゃないか」


カウボーイは「ママの浮気相手のダメな部分の精子でできた子」というわけだ。


「テキサスで取れるのは種牛(steer)とおカマ(queer)だ」については、「steer」は「肉食牛として育てられる去勢した雄牛」のことだからまるで違う訳語になっている。


どちらもわかりやすくするために改変したのだろう。



そして、もっとも下品な「カマを掘るだけ掘って相手のマスかき手伝う外交儀礼もないやつ」にも解説が必要だ。


「マスかき手伝う」の原語は「リーチ・アラウンド(reach around)」である。


この聞き慣れない言葉をリー・アーメイがアドリブで口にしたとき、監督は撮影を中断しアーメイに説明を求めた。


アーメイが丁寧に教えると、キューブリックは笑って続行を指示したという。


「リーチ・アラウンド」とは、「“する側”の男性同性愛者がうしろからナニを突っこみながら、手で“される側”のナニをしごく行為」である。


ゲイではない私でもうずくスゴいプレイだ(笑)!


ちなみに相手が女性であっても成立する表現である(どうやるかは言うまでもない)。


「外交儀礼」は普通に「礼儀」と訳してよかったのではないか。



ちなみに、軍曹はこのあと一人飛ばしてほほえみデブへ向かうのだが、これにはわけがある。


リー・アーメイが訓練教官時代によくやっていたことで、新兵にまだ自分の番でないと思わせておいて不意打ちするためだったのだ。







【英語字幕】


ハートマン「What's your excuse?」


カウボーイ「Sir, excuse for what, sir?」


ハートマン「I'm asking the fucking questions, private. Do you understand?」


カウボーイ「Sir, yes, sir」


ハートマン「Well, thank you very much. Can I be in charge for a while?」


カウボーイ「Sir, yes, sir」


ハートマン「Are you shook-up? Are you nervous?」


カウボーイ「Sir, I am, sir」


ハートマン「Do I make you nervous?」


カウボーイ「Sir...」


ハートマン「Sir what? Were you about to call me an asshole?」


カウボーイ「Sir, no, sir」


ハートマン「How tall are you, private?」


カウボーイ「Sir, 5'9", sir」


ハートマン「Five-foot-9. I didn't know they stacked shit that high. You trying to squeeze an inch in on me somewhere?」


カウボーイ「Sir, no, sir」


ハートマン「Bullshit. It looks like the best part of you ran down the crack of your mama's ass and ended up as a stain on the mattress. I think you've been cheated. Where the hell are you from, private?」


カウボーイ「Sir, Texas, sir」


ハートマン「Holy dogshit. Texas? Only steers and queers come from texas, Private Cowboy. And you don't much look like a steer to me, so that kind of narrows it down. Do you suck dicks?」


カウボーイ「Sir, no, sir」


ハートマン「Are you a peter puffer?」


カウボーイ「Sir, no, sir」


ハートマン「I'll bet you would fuck a person in the ass and not even have the goddamn common courtesy to give him a reach around. I'll be watching you」





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