最初にBDの日本語字幕を、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介します。
カウボーイと再会するジョーカーに近づく好戦的な兵士
【日本語字幕】
アニマルマザー「お前、カメラマンか?」
ジョーカー「戦闘報道員さ」
アニマルマザー「戦闘体験あるのか」
ジョーカー「TVで少々」
アニマルマザー「モノホンのコメディアンかよ」
ジョーカー「だから、ジョーカー」
アニマルマザー「じゃ、ジョークを一つ。新品のケツの穴を開けてやる」
ジョーカー「流れ者のあんた……おれがタレたクソからピーナツを探して食え」
アニマルマザー「しゃべる姿は海兵だ。歩く姿も海兵か?」
周りにいる大勢からひとりの黒人兵がなだめに入る。
エイトボール「(ジョーカーに)信じないだろうが戦闘中のアニマルマザーは世界最高の人格者だぜ。手榴弾さえ投げてやれば一生人格者で過ごせる」
アニマルマザーとエイトボールが皆から離れていっしょに座り込む。
アニマルマザー「黒豚の血は黒くて貧しいんだってな」
エイトボール「(字幕なし)ヤー、マザー」
原作本には兵士たちによるおしゃべりが大量にあふれている。
映画では、同じベトナム戦争を描く『ハンバーガー・ヒル(1987)』にそんな風景がたくさんあった。
どれもくだらないのだが、戦場では緊張感をほぐそうとアホな会話はよくされるらしい。
ただ、このシーンではいくつかピンとこないせりふもある。
そのひとつが、「(ジョーカーに)信じないだろうが戦闘中のアニマルマザーは世界最高の人格者だぜ。手榴弾さえ投げてやれば一生人格者で過ごせる」だ。
直訳するとこうなる――
「信じないかもしれないが、戦闘中のアニマルマザーは世界でも最高クラスの人間だ。こいつに必要なのは自分に手榴弾を投げるやつだけだ。これからも一生そうだ」
「手榴弾を投げられる=死ぬ」のだから、殺せる敵が出てこないかぎりずっと最高クラスということになる。
「こんなバカでもすごい兵士なんだぞ」とエイトボールが教えてあげたわけだ。
最高クラスとはもちろん戦闘能力を意味するはずなので、なぜ字幕で人格者と訳されたのかは不明だ。
あるいは、ふざけたおしゃべりに合わせたシャレだったのかもしれない。
「手榴弾で死ねば一生人格者」とは、「死ねば生涯すごい海兵(つまり大バカ)」で終わる、とも解釈できる。
もうひとつは、「黒豚の血は黒くて貧しいんだってな」だ。
黒豚の原語は「jungle-bunny(ジャングルのウサちゃん)」で、これは黒人を軽蔑する言葉である。
そのあとの原文をそのまま訳すと「鎌状細胞を神に感謝、ってか?」となる。
鎌状細胞とは鎌の形をした異常な赤血球で、貧血を引き起こす原因になるという。
この症状はアフリカ系アメリカ人に多いため、ここで使われたのだろう。
「おまえは貧血だから冷静に対処できた」とアニマルマザーは言いたかったのだ。
言いたい放題の迷シーンである。
【英語字幕】
アニマルマザー「You a photographer?」
ジョーカー「No, I'm a combat correpondent」
アニマルマザー「Oh, you seen much combat?」
ジョーカー「Well, I've seen a little on TV」
アニマルマザー「You're a real comedian」
ジョーカー「Well, they call me the Joker」
アニマルマザー「Well, I got a joke fo you. I'm gonna tear you a new asshole」
ジョーカー「Well, pilgrim, only after you eat the peanuts out of my shit」
アニマルマザー「You talk the talk. Do you walk the walk?」
周りにいる大勢からひとりの黒人兵がなだめに入る。
エイトボール「(ジョーカーに)Now, you might not believe it, but under fire, Animal Mother's one of the finest human beings in the world. All he needs is somebody to throw hand grenades at him the rest of his life」
カウボーイ「(ジョーカーに)That's a roger, come on. Sit down. Come on, new guy」
アニマルマザーとエイトボールが皆から離れていっしょに座り込む。
アニマルマザー「Hey, jungle-bunny. Thank God for the sickle cell, huh?」
エイトボール「Yeah, Mother」
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