最初にBDの日本語字幕を、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介します。
マスコミのインタビューに答える兵士たち
【日本語字幕】
エイトボール「思うに南ベトナム人は戦争に巻き込まれる事をあまり欲してない。つまり、そんな連中にはく奪されたおれたちの自由は与えられたわけで。彼らは自由より命が大事。そんな連中さ」
カウボーイ「北の連中はかなり手ごわい闘士だ。ゾッとするのは味方と言ってる連中も相当数が信用できない。戦線から逃げるやつが随分目につく」
ドンロン「そんな連中のために戦死して冷笑される。まったくの冗談」
アニマルマザー「ねらうべきベトナム人を間違えてるよな、おれたち」
カウボーイ「嫌いな国だね。馬を見かけないし。ただの一頭もいない。何かが間違ってる(笑)」
ジョーカー「“東南アジアの宝石”ベトナムを見たかった。古い歴史と文化を持つ豊かな民に会いたかった。そして殺すわけ。町内で最初に殺害確認戦果をあげる子になりたかった」
1968年のテト攻勢で敵はこれまでのジャングルや水田でなく都市部を戦場に選んだ。
これにより、マスコミを通じてアメリカ市民がベトナムの厳しさをはっきり知ってしまったという。
メディアによるその取材状況の一端がこの場面でわかる。
おもしろいのは敵の北ベトナムでなく、味方であるはずの南ベトナムへの批判が多いことだ。
ジョーカーだけ違うが、「そして殺すわけ」のせりふでわかるように、人間の二重性を伝える役割のキャラだからではないだろうか。
アメリカがベトナムにかかわった経緯をものすごくザックリ言えばこうなる――
大戦後日本の降伏を受理したイギリスは、フランスが植民地支配していたインドシナに戻ることを認めた。
そのフランスが再び支配権を主張したせいでインドシナ戦争がはじまる。
戦争を終わらせるために成立したのが1954年のジュネーブ協定である。
そこでベトナムの分割が決まり、アメリカはフランスの肩代わりをすることになった。
ホー・チ・ミン政権の北に対し南を共産主義への砦としたかったのだ。
南ベトナム人はアメリカの保護を望んでいると考えた。
ただ、当の南ベトナム側はそれほど単純ではなかった。
1964年から翌年にかけてベトナムを取材した作家の開高健は、現地でアメリカ人曹長にこう言われている(朝日文庫『ベトナム戦記』より)――
(ここから)
中国に一千年やられ、フランスに八十年やられたからベトナム人の“ゼノフォビア(外国人ぎらい)は骨にまでしみこんだ本能だろうと思うな。
これだよ。ゼノフォビアだよ。
君たちがいればいるほど憎まれる。戦争がつづけばつづくだけ親米派のベトナム人も反米派になってゆく。
一日二百万ドルつぎこんで必死になって善意をもって君たちは敵をつくってることになるんだ。
ホー・チ・ミンもコミュニストにはちがいないだろうけど彼はそれ以上に民族主義者だと思う。
北京に対しても彼は警戒心を持ってるにちがいないんだ。
南ベトナム人で反共主義者でもホー・チ・ミンは好きだという人がたくさんいるよ。
(ここまで)
アメリカは嫌われていたのだ。
ベトナム政策の中心人物はマクナマラ国防長官であった。
大統領がケネディからジョンソンになってもベトナムの全体を引っ張っていたのはマクナマラだった。
現地の曹長ですら前述の認識を当初からもっていたのだから、長官クラスなら当然同じように考えていたはずと思いたいところだ。
が、そうではなかった。
マクナマラは、ドキュメンタリー映画『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』でこう明かしている(同DVDの字幕より)――
「彼らは我々をフランスと同じだと見なした。ベトナム全土を植民地として支配したがっていると考えたのだ。とんでもない話だ。一方、我々はあの戦争を冷戦の一環と見なした。でも彼らには“内戦”だったのだ」
また、1995年に会談したベトナムの元高官とのエピソードも紹介している。
「我々の目的は独立。米国は我々を隷属させることだった」と元高官に言われた際に、
マクナマラは「あれは悲劇ではなかったのか。あの戦争で340万人のベトナム人が死んだ。アメリカの人口なら2700万人に匹敵する。あなたは何を達成したのか?」と返した。
すると高官は訴えた――
「歴史を知らないのか。我々はソ連や中国の駒ではない。我々は1000年もの間、中国と戦ってきたのだ。独立のためなら、我々はどんな圧力にも屈せず、最後の1人まで戦い続けただろう」
じつは、敵が民族主義的、革命的勢力であることは情報機関では知られていた。
が、政策決定者は共産勢力として見るほうが都合がよかったのだ。
戦争目的の再評価を迫られるからである。
【英語字幕】
エイトボール「Personally think they don't really want to be involved in this war, you know, I mean, like they--It's sort of like, they took away our freedom and gave it to the gookers, you know. But they don't want it. They'd rather be alive than free, I guess, you know. Poor, dumb bastards」
カウボーイ「Well, the ones I'm fighting at are some pretty--Pretty bad boys. I'm not real, I'm not real keen on some of these fellas that are supposedly on our side. I keep meeting them coming the other way. Yeah」
ドンロン「I mean, we're getting killed for these people and they don't even appreciateit. They think it's a big joke」
アニマルマザー「Well, if you ask me we're shooting the wrong gooks」
カウボーイ「I hate Vietnam. There's not one horse in this whole country. They don't have one horse in Vietnam. There's something basically wrong with that」
ジョーカー「I wanted to see exotic Vietnam, the jewel of Southeast Asia. I wanted to meet interesiting and stimulating people of an ancient culture, and kill them. I wanted to be the first kid on my block to get a confirmed kill」

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