娼婦を買うシーンに意味はない!……のか?  ―『フルメタル・ジャケット』を丸坊主にする(十六頭目)―




最初にBDの日本語字幕を、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介します。







娼婦を買う兵士たち



【日本語字幕】


現地の女性と仲介の男がバイクでやってくる。


兵士たちがはやし立てる。


カウボーイ「お早う。お嬢様。おれ、お坊っちゃまね。いい品かい、隊長?」


仲介人「最高ファッキするか?」


カウボーイ「ナンバーワン・ファッキする?」


兵士のひとり「なめなめ、くれ」


仲介人「なめなめ、ファッキ、マンコたばこ、何でも、何時間でも歓迎」


カウボーイ「何でも歓迎! オーケー! お値段は、隊長?」


仲介人「1人15ドル」


カウボーイ「最悪(ナンバーテン)ね。15ドル、沢山ブークー。1人5ドル」


仲介人「本気でやるね。延長シコシコ歓迎ね。10ドル」


兵士のひとり「5ドル」


仲介人「10ドル」


カウボーイ「友軍の銃を付ける。未使用で持ち主が逃げた」


仲介人「5ドルね。おれ、もらう」


エイトボールが女性に近づく。


エイトボール「乗っかるぜ」


女性が嫌がる。


エイトボール「どうした隊長?」


仲介人「黒い兄弟、シコシコ駄目」


エイトボール「話が見えねえよ」


仲介人「黒い兄弟、沢山ブークーね」


エイトボール「はっきり言え」


カウボーイ「要するに、黒い肉棒は入り切らんと」


エイトボール「車のクローム・メッキ吸い尽くす口だぜ」


仲介人「沢山ブークー」


エイトボール「マダム、失礼して。(ズボンを脱ぎはじめ)御覧いただく華麗なる一物はアラバマ純血種の黒蛇。沢山ブークーないね」


女性「オーケー。オーケー」


カウボーイ「打順決めだ」


アニマルマザー「おれ、1番」


エイトボール「待てよ、白ナマズ。割り込みはマズイぜ」


アニマルマザー「アホなニガーはつるしちまえ。早いぜおれは。前戯ナシだしよ」


皆がブーブー言うなか、アニマルマザーが女性と建物に入っていく。







当時のベトナムの子どもたちは、なんでもかんでも気にいると「ナンバーワン!」、気にいらないと「ナンバーテン!」と叫んでいたそうだ。


毎日いたるところでその声がしたらしい。


アメリカ兵は子どもではないといっても、ベトナムへ出征した兵士の平均年齢は20歳そこそこだったから、ここではその若さや愚かさを描きたかったのかもしれない(俳優たちはそこまで若く見えないが)。



ただまったくの推測だが、このあとでやってくる少女スナイパーのシーンへの地ならしとも思える。


この映画はどの場面にも巧妙なブラックユーモアが施されている。


だが、スナイパー殺害のあのダークな雰囲気にユーモアは成立しにくい。


それでも兵士が「“ベイビーさん” シコシコ、もうダメダメ。助けようがねえや。死んだも同じ」などというせりふがあった。


しかも不自然ではなかった。


じつはこの娼婦シーンでは、黒人のエイトボールが「baby-san(ベイビーさん)」と一回言っている。


ひとりの女性を大勢の男たちが囲むのも同じだ。


つまりこのシーンがあったことで、死にそうな相手にふさわしくない「“ベイビーさん” シコシコ、もうダメダメ」なるユーモアが通ったともいえるのだ。



ちなみに仲介人が「沢山ブークー」と言っているが、原語は「too beaucoup」である。


「beaucoup」は当時アメリカ兵が広めた俗語で、「たくさん」の意味だ(もとはフランス語)。


つまり、「too beaucoup」は「沢山たくさん」。



アホな兵士がアホなせりふを吐きまくるアホたくさんのシーンである。


ナンバーワン(笑)!







【英語字幕】


現地の女性と仲介の男がバイクでやってくる。


兵士たちがはやし立てる。


カウボーイ「Good morning, little schoolgirl」


兵士のひとり「Look at this lady」


カウボーイ「I'm a little school boy too. What you got there, chief?」


仲介人「Do you want number one fucky?」


カウボーイ「Hey, any of you boys want number one fucky?」


ジョーカー「I'm so horny, I can't even get a piece of hand」


兵士のひとり「Me want sucky」


仲介人「Sucky, fucky, smoke cigarette in her pussy. She give you everything you want, long time」


カウボーイ「Everything you want. Hey, how much there, chief?」


仲介人「Fifteen dollars each」


カウボーイ「No. Fifteen dollar beaucoup money. Five dollar each」


仲介人「Come on, she love you good. Boom-boom long time. Ten dollars」


兵士のひとり「Five dollars」


仲介人「No. Ten dollars」


カウボーイ「Be glad to trade you some ARVN rifles. Ain't never been fired and only dropped once」


仲介人「Okay, $5. You give me」


カウボーイ「Okay, okay」


エイトボールが女性に近づく。


エイトボール「Let's get mounted」


女性が嫌がる。


エイトボール「Something wrong there, chief?」


仲介人「She says no boom-boom with soul brother」


エイトボール「What the motherfuck?」


仲介人「She says soul brother too beaucoup, too beaucoup」


エイトボール「What is this, man?」


カウボーイ「I think what he's trting to tell you is you black boys pack too much meat」


仲介人「Too beaucoup, too beaucoup」


エイトボール「Oh, shit. This baby-san looks like she could suck the chrome off a trailer hitch」


仲介人「She say too beaucoup, too beaucoup」


エイトボール「Excuse me, ma'am. What we have here, little yellow sister, is a magnificent specimen of pure Alabama blacksnake. But it ain't too goddamn beaucoup」


女性「Okay. Okay」


エイトボール「All right. Yeah. This is my boogie」


カウボーイ「Hey, we need a batting order」


アニマルマザー「I'm going first」


エイトボール「Back off, white bread. Don't get between a dog and his meat」


アニマルマザー「All fucking niggers must fucking hang」


皆がブーブー言う。


アニマルマザー Hey, hey, I won't be long. I'll skip the foreplay.


アニマルマザーが女性と建物に入っていく。


兵士のひとり「I don't want it after you, man」


兵士のひとり「Fuck you」





この記事へのコメント