映画『ロックト(仮題)』  ―2025年全米興収トップランク作品(スリラー編3)―

            Amazon   Music          /          Locked                  邦題: ロックト(仮題)      原題: Locked     公開年: 2025年    収録時間: 95分    IMDb評点: 6.3    ジャンル: スリラー     出演者: ビル・スカルスガルド、アンソニー・ホプキンス      監督: デヴィッド・ヤロヴェスキー      概要: 異常者が人を閉じこめるためにつくった特別仕様の高級車に車上荒らしが引っかかる。アルゼンチン映画『4×4 殺人四駆』のリメイク IMDbのレビューから5つ紹介します。 【その1】 「この車両には防弾ガラス、携帯の電波を遮断する装置、ビデオカメラ6台が備わっている。 そしてもっとも重要なのは、車の持ち主(アンソニー・ホプキンス)が閉じこめられた主人公(ビル・スカルスガルド)と話せる電話があることだ」 【その2】 「スカルスガルドが恐れといら立ちの間を行き来しながら映画の大半を担う一方、何よりも印象に残るのはホプキンスのわずかな登場時間だ。 その声だけで、この映画になくてはならない重みが加わっている」 【その3】 「想像していたほどのスリルはなかった。 たしかに主人公を限界に追いこむ際どい瞬間や試練もあるが、映画の大部分において彼…

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映画『ザ・ルール・オブ・ジェニー・ペン(仮題)』  ―2025年全米興収トップランク作品(ミステリー&ホラー編2)―

  Wikipedia  /  The  Rule  of  Jenny  Pen        邦題: ザ・ルール・オブ・ジェニー・ペン(仮題)      原題: The Rule of Jenny Pen     公開年: 2024年    収録時間: 104分    IMDb評点: 6.5    ジャンル: ホラー、ミステリー、スリラー     出演者: ジョン・リスゴー、ジェフリー・ラッシュ      監督: ジェームズ・アシュクロフト      概要: 介護施設で暮らす元判事が赤ちゃんの操り人形を使って老人たちを虐待する異常者を止めようとする IMDbのレビューから4つ紹介します。 【その1】 「遠慮なく描いている。 人生の終わりが近づき、もはや自分の力だけでは支障なく暮らすことができなくなった多くの高齢者が直面する悲しい現実を。 本作の場合、彼らの中に危険ないじめっ子がいることで状況はよりひどくなっている。 2人の名優がそれぞれの役を通してやり合うのを興味深く鑑賞した」 【その2】 「真の恐怖は高齢者介護の非人間的な側面を描写している点にある。 入居者たちが経験する無力感や孤独感、そして一部の職員による平然とした残酷さがうまく表現されている」 【その3】 「劇中の心理的な恐怖や虐待は印象に残るものだった。ちょっとやりすぎなほど。 全体…

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ネット映画『アイズ・オン・ユー』  ―2024年ネット映画人気作品(スリラー編1)―

   Wikipedia   /   Woman of the Hour         邦題: アイズ・オン・ユー      原題: Woman of the Hour     公開年: 2023年    収録時間: 95分    IMDb評点: 6.6    ジャンル: クライム、ドラマ、ミステリー、スリラー     出演者: アナ・ケンドリック、ダニエル・ゾヴァット、トニー・ヘイル      監督: アナ・ケンドリック      概要: 出会い系のバラエティ番組に出演した女性が求愛者のふりをして出ていた連続殺人犯に狙われる。有名な性犯罪者ロドニー・アルカラをモデルにしたサイコスリラー      配信: ネットフリックス IMDbのレビューから4つ紹介します。 【その1】 「よく考えられた張りつめたペースの映画で、場面や犠牲者たちの出し方を交互に切り替えている。 このやり方にはじめは少しうっとうしさを感じたが、最後はすっかり合点がいった。 アナ・ケンドリックとダニエル・ゾヴァットはとてもうまく役割を果たしたと思う。ゾヴァットはいかにも気味が悪い。 いくつかの点が事実と違うのは当然ながら、どの程度そうなのかは定かでない。 ロドニー・アルカラについて多少読んでみてわかった。映画はその本質を正確にとらえていると。 ゆっくりしたペースにつきあえるのなら、この映画は十分に見る価値がある」 …

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映画『ストレンジ・ダーリン(仮題)』  ―2024年全米興収トップランク作品(スリラー編3)―

        Amazon   Music        /        Strange  Darling              邦題: ストレンジ・ダーリン(仮題)      原題: Strange Darling     公開年: 2023年    収録時間: 97分    IMDb評点: 7.6    ジャンル: ホラー、スリラー     出演者: ウィラ・フィッツジェラルド、カイル・ガルナー、バーバラ・ハーシー      監督: JT・モルナー      概要: 行きずりの関係でSMプレイに興じていた2人の男女が、やがて追いつ追われつの殺し合いを演じるようになる IMDbのレビューから4つ紹介します。 【その1】 「通常私はヒット作を見る。大手スタジオの映画をよく楽しんでいる。 だがインディーズの本作にはすごくワクワクさせる何かがある。 芸術家による、純粋な芸術のようだ。大手の汚染物質が混じってない。 なおかつよくあるオスカー狙いの、中身より見た目の、批評家受けする“高尚な芸術”に落ちてもいない。 非常におもしろい、再鑑賞に耐える作品だ。びっくり仰天の瞬間がいくつかある」 【その2】 「すぐれた技による、巧妙な準エロティックスリラーだ。最後の最後まで没頭させられる。 低予算ながら、劇的または超劇的なターニングポイントがかなりある。 しっかりした標準的な…

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映画『ロングレッグス』  ―2024年全米週末興収トップ10作品(スリラー編3)―

        Wikipedia       /       Longlegs              邦題: ロングレッグス      原題: Longlegs     公開年: 2024年    収録時間: 101分    IMDb評点: 7.2    ジャンル: クライム、ホラー、スリラー     出演者: マイカ・モンロー、ブレア・アンダーウッド、アリシア・ウィット、ニコラス・ケイジ      監督: オズ・パーキンス      概要: 特殊能力をもつFBIの新任捜査官がオカルト信仰者の連続殺人犯を追う ランクイン回数: 3回(7月28日時点) IMDbのレビューからひとつだけ紹介します。 「目まいがしそうな雰囲気と緊張のある映画だ。ベストの場面は『羊たちの沈黙』やデヴィッド・フィンチャーの作品を思わせる。 最初の2幕において、パーキンス監督は事の成り行きをスムーズに展開しつづける。そうしてゆっくりと観客は恐ろしさが充満する空気に浸されていく。 恐怖は隅々に隠れている。開け放した戸口や冠雪した原っぱなど、何でもないものが恐怖を暗に伝える。 撮影監督とともにパーキンスは、映像的に死を表現した傑作にしようとしている。 (中略) しかしながら、残念なことに問題がないわけではない。 犯人のロングレッグズとその殺人の神秘的雰囲気が、観客に恐怖を植えつける上で非常にそそる、非常に印象的なもの…

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映画『MaXXXine マキシーン』  ―2024年全米週末興収トップ10作品(ミステリー&ホラー編11)―

          Amazon    Music          /          MaXXXine                邦題: MaXXXine マキシーン      原題: MaXXXine     公開年: 2024年    収録時間: 103分    IMDb評点: 6.8    ジャンル: クライム、ホラー     出演者: ミア・ゴス、エリザベス・デビッキ、ケヴィン・ベーコン      監督: タイ・ウェスト      概要: 『X エックス』と『Pearl パール』に続く、怪優ミア・ゴスによるスラッシャーホラー3部作の最終作 ランクイン回数: 3回(7月21日時点) IMDbのレビューから3つ紹介します。 【その1】 「主人公のマキシーンをやったミア・ゴスの支配的演技こそが本作最大の強みだ。 タイ・ウェスト監督と組んだこれまでの2作同様、彼女による大胆不敵なキャラがまさしく全編で活躍している。 ゴスはためらうことなく全力を尽くし、やり過ぎと言われるリスクを冒す。 ようはこういったネタで意図的に大げさな役者であろうとしているのか? まずそうだろう。まるでたいしたことのない瞬間でも、ゴスは『マキシーン』がつまらなくならないようにしている。 だから現代のホラー映画における重要人物としてとどまっているのだ」 【その2】 「このタイ・ウェストによる“X”3部…

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映画『ソウX』  ―2023年全米週末興収トップ10作品(ミステリー&ホラー編15)―

           Amazon    Music          /          Saw  X                 邦題: ソウX      原題: Saw X     公開年: 2023年    収録時間: 118分    IMDb評点: 7.1    ジャンル: ホラー、ミステリー、スリラー     出演者: トビン・ベル、ショウニー・スミス      監督: ケヴィン・グルタート      概要: 奇妙なゲームで人を苦しめる殺人鬼を描く「ソウ」シリーズの第10作目。『ソウ』の続編かつ『ソウ2』の前日譚 ランクイン回数: 3回(10月15日時点) IMDbのレビューから3つ紹介します。 【その1】 「脳腫瘍により余命わずか数か月と宣告された主役のジョン・クレイマーは、新しい治療法で救命手術を行う場をメキシコに得る。 ところが期待に反する結果であったため、復讐に出ることになるのだ。 最近の新作ホラーはとにかく心に残らない。続編ものはその価値がほとんどない。 「スクリーム」や「ハロウィン」の映画は延々と続いているが、どれもが時がたつにつれてダメになっているようだ。 が、「ソウ」は異なる。 この最新作はどうだろう。新しさがあるだろうか? 明らかに新しかった。これまでのどのシリーズ作とも違う。 まさしくジョンの物語だ。すべてが彼の視点で語られる。ある程度共感しそう…

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ネット映画『グッド・ナース』  ―こころの闇、カネの闇、社会の闇、全部ある―

       Amazon  Book       /       The   Good   Nurse            邦題: グッド・ナース     原題: The Good Nurse    公開年: 2022年   収録時間: 121分 IMDb評点: 6.9   私的評価: 7.5   ジャンル: 伝記、クライム、ドラマ、スリラー    出演者: ジェシカ・チャステイン、エディ・レッドメイン     監督: トビアス・リンホルム     概要: 看護師として働きながら数十人(数百人ともいわれる)もの患者を殺した連続殺人犯を描く伝記スリラー アメリカで犯罪史上最悪の犠牲者数を出したチャールズ・カレンと同僚のナースとの緊迫感ある伝記ドラマだ。 殺人犯はエディ・レッドメイン、主役のナースはジェシカ・チャステインが演じている。 この2人の競演がすごい。 さっさと筋を追いたい人には向かないじわじわと進む物語だが、役者の演技をじっくり楽しみたいのであればごちそうといえる映画だ。 えたいの知れなさを演出したかったのか、前半は犯人の顔が不明瞭な映像になっている。 その本性がはっきりしてからよく見えるようになるのだ。 だが、ほんとうは逆のほうがよかったかもしれない。 観客ではなく主役の目線であれば、はじめは良い人だった男がやがて不気味な人になるからだ。 その不気味さは、主人公のナースの勇…

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映画『Pearl パール』  ―2022年全米週末興収トップ10作品(ミステリー&ホラー編9)―

   Amazon   Notebook    /    Pearl         邦題: Pearl パール      原題: Pearl     公開年: 2022年    収録時間: 103分    IMDb評点: 7.5    ジャンル: ホラー     出演者: ミア・ゴス      監督: タイ・ウェスト      概要: 農場の惨劇を描いた『X エックス』の前日譚。1918年のテキサスで、田舎娘が徐々に狂気を膨らませていく ランクイン回数: 2回 以下のレビューは、「全米週末興収トップ10」の記事で紹介したIMDbレビューを転載したものです(【その3】は追加分)。 【その1】 「本作のカギはミア・ゴスの演技にある。 共感できるキャラかと思いきや、次の瞬間とんでもなくゾッとさせるのだ。 笑えるときもあるにはあって、恐るべき暴力シーンの合間にあちこちはさまれている。 おそらくは、異世界的と形容するほかない独白の場面が最高だ。 ほんとうにおもしろかった。とてつもない演技力だ」 【その2】 「姉妹編の本作にがっかりする前作『X エックス』のファンもいるかもしれない。 おもな理由は作風が大きく異なることと、期待に沿うおなじみのスラッシャー映画ではないことだ。 しかしながら、やばくなりはじめるころの連続殺人鬼をうまい味付けで描いている。 その点でこれ以上のもの…

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映画『ブラック・フォン』  ―2022年全米週末興収トップ10作品(ミステリー&ホラー編4)―

  Amazon  Poster  /  ブラック・フォン        邦題: ブラック・フォン      原題: The Black Phone     公開年: 2022年    収録時間: 103分    IMDb評点: 7.2    ジャンル: ホラー、スリラー     出演者: イーサン・ホーク      監督: スコット・デリクソン      概要: 連続殺人鬼に誘拐された少年を救おうと、彼が閉じ込められた地下室にある黒電話から殺されたはずの子どもたちが声を届ける ランクイン回数: 3回(7月10日時点) 以下のレビューは、「全米週末興収トップ10」の記事で紹介したIMDbレビューを転載したものです(【その3】は追加分)。 【その1】 「じつに魅力的なストーリーだった。すべてがなめらかに進むため1時間45分があっという間だ。 タイトルの“ブラック・フォン(黒電話)”には、劇中で実際に不安をかきたてる面がある。いつ鳴るのかわからないし、それと完璧に合うタイミングでびっくりさせる場面が訪れるのだ。 不快さが全編にあふれている。だがやり過ぎがない。そうできそうであっても」 【その2】 「どのジャンルであれ最高の映画は、応援したくなるタイプのキャラに焦点を合わせている。 この手の映画人はスリルや興奮(それもたっぷりの)を二の次に、寓話としても成り立つストーリーを進めたがる。 …

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映画『X エックス』  ―2022年全米週末興収トップ10作品(ミステリー&ホラー編2)―

        Amazon    Music        /        X エックス              邦題: X エックス      原題: X     公開年: 2022年    収録時間: 105分    IMDb評点: 7.3    ジャンル: ホラー     出演者: ミア・ゴス      監督: タイ・ウェスト      概要: テキサス州にある田舎町の農場にやってきた成人映画の撮影隊がおぞましい恐怖に襲われる ランクイン回数: 3回(4月3日時点) 以下のレビューは、「全米週末興収トップ10」の記事で紹介したIMDbレビューを転載したものです。 【その1】 「気に入った。昔風(完璧に1970年代スタイル)のスラッシャーホラーの良作である。設定がなかなか独創的だ。 これと似たどのホラー映画にもあるように殺しの動機がかなり強引だが、そんなことはどうでもいい。これほどまでに容赦なくむごたらしい出来ならば。 感じやすい人には絶対向かない流血だ」 【その2】 「タイ・ウェストはものすごい鋭さで映像をつくる監督だ。本作にもそれが表れている。このファームハウスを考えうるかぎり地獄じみた悪夢のひとつにしてしまった。 真に安全な場所などどこにもないのだ」 【その3】 「全体として悪い映画ではない。あちこちベタな場面があるし、出だしもゆっくりしてはいるものの…

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映画『スパイラル:ソウ オールリセット』  ―2021年全米週末興収トップ10作品(ミステリー&ホラー編4)―

Amazon Blu-ray / スパイラル:ソウ オールリセット      邦題: スパイラル:ソウ オールリセット      原題: Spiral: From the Book of Saw     公開年: 2021年    収録時間: 93分   IMDb評点: 5.3    ジャンル: クライム、ホラー、ミステリー、スリラー     出演者: クリス・ロック、サミュエル・L・ジャクソン      監督: ダーレン・リン・バウズマン      概要: ゲームのような拷問で被害者を苦しめる殺人鬼を描くシリーズの第9作目 ランクイン回数: 5回 以下のレビューは、「全米週末興収トップ10」の記事で紹介したIMDbレビューを転載したものです。 【その1】 「見る価値のある良作だ。 だが、これまでにスリラーやホラーを5本は経験している人がささいなことにも注意して見たならば、はじまって30分ですっかり先を見通せる内容である。 仕掛けられたわなは他の人たちが言うほどたいしたものじゃない。とはいえ、このままでも立派な映画ではある。高い確率で見る価値ありだ。 一部のレビュアーが感じた驚きを同じように期待してはいけないだけである」 【その2】 「違うものだがたしかに『ソウ』シリーズの映画だ。よくやった!」 【その3】 「ひどい映画ではないが、『ソウ』シリーズでよくあるわなが用意…

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映画『アオラレ』  ―主役に同情しにくい珍アクション―

     Amazon  Video     /     アオラレ         邦題: アオラレ    原題: Unhinged   公開年: 2020年  収録時間: 90分 IMDb評点: 6.0  私的評価: 5.7  ジャンル: アクション、スリラー   出演者: ラッセル・クロウ、カレン・ピストリアス    監督: デリック・ボルテ    概要: あおり運転の大男が街を暴走しまくる あおり運転をするドライバーが敵役だから、当然あおられる主人公側になんらかの原因がなくてはならない。 少しスピードが遅いだけでも原因になりうるが、いかにも相手からドラマチックな凶悪性を引き出したいならきっかけとして弱い。 そこで主役にかなりひどいことをさせる必要がある。 あおられるほうの女性ドライバーは交通マナーがとんでもなくなっていないキャラクターだ。 正義感の強い観客はまず反発する。 とはいえ主役は主役だから、悪役をものすごくものすごく悪く描くことでまともに見えるふうにしているようだ。 ラッセル・クロウのその悪役はものすごくものすごく悪いやつである。 ほとんどサイコだ。 一方でものすごくものすごく怒るべつの原因もちゃんとあることが説明される。 離婚された元妻を恨んで復讐した男であり、女性ドライバーはといえば夫と離婚協議中という都合のいい設定なのだ。 そんなわけで純粋な悪のイメージとは…

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シリアルキラー映画 全米歴代興収トップ30

連続殺人犯(シリアルキラー)を描く映画の全米興行収入ランキングを紹介します(2020年11月11日時点)。 ( )内は公開年と興収額です。 写真はアマゾンからのもので、それぞれに該当ページへのリンクを張っています。 以下のページに基づいて作成しました。 Genre Keyword: Serial Killer(Box Office Mojo) 【1位】『ハンニバル』 (2001年 1億6509万ドル) (関連記事)羊たちの沈黙コーナー (一覧) 【2位】『羊たちの沈黙』 (1991年 1億3074万ドル) (関連記事)羊たちの沈黙コーナー (一覧) 【3位】『氷の微笑』 (1992年 1億1772万ドル) (関連記事)『氷の微笑』のキラーシーンに殺される 【4位】『セブン』 (1995年 1億12万ドル) (関連記事)『セブン』のせりふで汚物にまみれる  ―せりふで遊ぶ(その3)― 【5位】『レッド・ドラゴン』 (2002年 9314万ドル) (関連記事)羊たちの沈黙コーナー (一覧) 【6位】『ソウ2』 (2005年 8703万ドル) 【7位】『ソウ3』 (2006年 8023万ドル) 【8位】『ボーン・コレクター』 (1999年 6651万ドル) (関連記事)「ボーン・コレクター」 ―ダークな…

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羊たちの沈黙コーナー (一覧)

     Amazon  Poster   /   羊たちの沈黙      「羊たちの沈黙」 ―バッファロー・ビルの哀しみ― 「羊たちの沈黙」を批判する二つの正反対のアプローチ  ―IMDbレビューをレビューする(第2回)― 『羊たちの沈黙』と酒鬼薔薇事件に揺れたビデオ屋さん  ―レンタルビデオ屋さんの物語(番外編 その3)― 『羊たちの沈黙』のせりふを味わう  ―せりふで遊ぶ(その1)― なぜレクター博士はクラリスを気に入ったのか?  ―『羊たちの沈黙』のせりふを味わう(二匹目の羊)― なぜドクター・チルトンは嫌なやつなのか?  ―『羊たちの沈黙』のせりふを味わう(三匹目の羊)― なぜレクター博士はミグズにあれほど怒ったのか?  ―『羊たちの沈黙』のせりふを味わう(四匹目の羊)― なぜレクター博士は議員に下品な話をしたのか?  ―『羊たちの沈黙』のせりふを味わう(五匹目の羊)― バッファロー・ビルはどんな気分で女を見下ろしていたのか?  ―『羊たちの沈黙』のせりふを味わう(六匹目の羊)― アンソニー・ホプキンスは本当に名演だったのか?  ―『羊たちの沈黙』の海外レビューは語る― バッファロー・ビルは何から生まれたのか?  ―『羊たちの沈黙』を解体する(1匹目の処理)― ジョナサン・デミ監督とジョディ・フォスターは何を狙っていたのか?  ―『羊たちの沈黙』を解体す…

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だから、グレアムは天使なのだ!  ―『レッド・ドラゴン』を狩る(猟を終える)―

Amazon Poster / Red Dragon   邦題: レッド・ドラゴン   原題: Red Dragon  公開年: 2002年 収録時間: 124分 IMDb評点: 7.2 私的評価: 7.5 ジャンル: クライム、ドラマ、スリラー  出演者: アンソニー・ホプキンス、エドワード・ノートン、レイフ・ファインズ   監督: ブレット・ラトナー *〈◯章◯節〉とあるのは、「新約聖書 ヨハネの黙示録」からの引用です(日本聖書協会・新共同訳より) *人名「 」のせりふはDVDの字幕です。 FBI調査官ウィル・グレアムはレクター博士との面会時、博士を逮捕できた理由について述べた―― グレアム「あなたには不利な点が」 レクター「どういう点だね?」 グレアム「あなたは狂人だ」 ところがレクターは寄りそうように、「私を捕まえたのは、君と私が似通ってるからだ」と指摘した。 グレアムの何が普通ではなかったのか? 原作(ハヤカワ文庫の新訳版)において、FBI行動科学課顧問のブルーム博士は「驚くべき視覚的記憶力があり、純粋な共感能力と投影能力を持っている」とグレアムを評している。 グレアムの方策によって、想定外ではあっても結果的に大嫌いだった記者ラウンズがダラハイドに殺された後、レクター博士は甘く探った―― レクター「それで楽しんだかね? 君の最初の殺人を。気分がいいだろ? 神だっ…

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だから、レクターは悪魔なのだ!  ―『レッド・ドラゴン』を狩る(猟を続ける)―

Amazon Poster / Red Dragon   邦題: レッド・ドラゴン   原題: Red Dragon  公開年: 2002年 収録時間: 124分 IMDb評点: 7.2 私的評価: 7.5 ジャンル: クライム、ドラマ、スリラー  出演者: アンソニー・ホプキンス、エドワード・ノートン、レイフ・ファインズ   監督: ブレット・ラトナー *〈◯章◯節〉とあるのは、「新約聖書 ヨハネの黙示録」からの引用です(日本聖書協会・新共同訳より)。 原作本(ハヤカワ文庫の新訳版)でのフランシス・ダラハイドは、記者のフレディ・ラウンズにこうささやいた―― 「(前略)じつは私は人間ではない。人間として始まったが、神の恩寵とみずからの意思によって、人間とはちがう、より大きな存在になった」 だが、ダラハイドに力をもたらしたのは神ではない。 背中の竜である。 竜とは何か? 新約聖書の「ヨハネの黙示録」を読むとわかる。 〈12章3節〉「また、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、火のように赤い大きな竜である。これには七つの頭と十本の角があって、その頭に七つの冠をかぶっていた」 〈12章9節〉「この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。(後略)」 ダラハイドは悪魔を背負っていたのだ。 悪魔は何をしたか? 〈13章1節〉「わたしはまた、一匹の…

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だから、ダラハイドは怪物なのだ!  ―『レッド・ドラゴン』を狩る(猟を始める)―

Amazon Poster / Red Dragon   邦題: レッド・ドラゴン   原題: Red Dragon  公開年: 2002年 収録時間: 124分 IMDb評点: 7.2 私的評価: 7.5 ジャンル: クライム、ドラマ、スリラー  出演者: アンソニー・ホプキンス、エドワード・ノートン、レイフ・ファインズ   監督: ブレット・ラトナー 映画『レッド・ドラゴン』の連続殺人鬼フランシス・ダラハイドはいかにも怪物的だ。 狼男のように満月の夜にうごめき、 吸血鬼のように被害者にかみつき、 フランケンシュタインのように異様な手術跡が顔にあり、 ジキル博士とハイド氏(Dr. Jekyll and Mr. Hyde)のように極端な二重性を抱えている。 最後の件についてだが、ダラハイドは名前のつづりが上記の「Dr. Jekyll and Mr. Hyde」を縮めたみたいな「Dolarhyde」ということもあり、ジキルとハイドの影響を受けたキャラクターではないかと感じる。 傑作とされる1931年の映画『ジキル博士とハイド氏』のハイドはいかにも凶暴な歯をしていて、ダラハイドのイメージだった。 同作ではおだやかなジキル博士の抑圧された性衝動がハイド氏に表れていたが、ダラハイドも凶悪な性犯罪者でありながら普段はおとなしい人物である。 ちなみに1931年はホラーの当たり年で、ベラ・ルゴシ主演の『魔人ドラキ…

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ビルはクラリスと出会ったとき何を思って笑ったのか?  ―『羊たちの沈黙』を解体する(10匹目の処理)―

今回が最終回。 原作「 」とあるのは新潮文庫の新訳本からの、FBI「 」とあるのはハヤカワ文庫のロバート・K・レスラー著『FBI心理分析官』からの引用である。 人名「 」は、DVD収録のドキュメンタリー「迷宮の中へ」での関係者の発言である。 クラリスと邂逅したビル(ジェイム・ガム)は、クスクスと笑っていた。 テッド・レヴィン(ビル役)「ガムが犯人だと彼女が気づく瞬間、原作の描写はこうだ。“2人の目が合ったその瞬間に互いに相手を知った”」 レヴィン「背筋がゾッとする瞬間だ。彼は捕まる事をどこか楽しんでる。遊び相手を見つけたような感覚だ。自分の正体を知る女。好敵手の登場だ」 ジョディ・フォスターは「無敵の自分の前に無力な獲物がまたもや現れたもんだから笑わないではいられなかったのだ」とコメントしている(海外盤BDのコメンタリー)。 つまり、ナメてるからというわけだ。 ある種の殺人犯にはそういった傾向があるとロバート・K・レスラーも述べている(表記は訳文どおり)。 FBI「ゲイシーやバンディ、ケンパーは、自分をつかまえられない警察と、自分を理解できない精神科医をばかにしていた」 「彼らはいわば自信過剰で、実際はさほど聡明でもなく、途方もない犯罪をおかしたという以外にきわだった点がないにもかかわらず、自分が抜群に頭がよく有能だと信じている」 原作はどうか。 原作「ミスター・ガムはわずか…

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レクターは何が目的で警官をつり下げたのか?  ―『羊たちの沈黙』を解体する(9匹目の処理)―

人名「 」は、DVD収録のドキュメンタリー「迷宮の中へ」での関係者の発言である。 原作「 」とあるのは、新潮文庫の新訳本からの引用である。 テッド・タリー(脚本家)「彼(レクター)が逃亡する間クラリスが登場するシーンはなくなってしまう。原作では成功していたが映画では難しい。避けて通れない。最高の山場だ。きちんとした脚本と入念な打ち合わせが必要だった」 レクター博士の逃亡の場面で出てくるのは警官ばかりであり、主要キャラクターはしばらく姿を見せない。 間を持たせるためにどうすべきかジョナサン・デミ監督も悩んだそうだ。 そこで考えられたのが、あの恐るべき「ガのようにつり下げられる警官」のシーンである。 監督のインタビューによれば、テッド・タリーは脚本に「彼ら(警官たち)を出迎えたのは地獄からのスナップショットであった」と書いたという。 美術監督はフランシス・ベーコンの作品を参考にした。 クリスティ・ジーア(美術監督)「脱走した後に残された残虐なシーンはその(ベーコンの)影響が如実に表れている」 ジーア「私は監督に言ったわ。“最初にドアを開ける人の恐怖感が生み出す錯覚をイメージしたの”と。監督はひと目見るなりすぐに出てきたわ」 レクターにわざわざ面倒なことをさせたのはそういうわけである。 ただ、劇中においては別の理由も考えられる。 その前に、「FBIはなぜマーティン議員を通さずに…

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