映画『ジ・アルト・ナイツ(仮題)』  ―2025年全米週末興収トップ10作品(ドラマ編3)―

         Amazon  Music       /       The  Alto  Knights               邦題: ジ・アルト・ナイツ(仮題)      原題: The Alto Knights     公開年: 2025年    収録時間: 123分    IMDb評点: 5.7    ジャンル: 伝記、クライム、ドラマ、歴史     出演者: ロバート・デ・ニーロ、デブラ・メッシング、コスモ・ジャーヴィス      監督: バリー・レヴィンソン      概要: マフィアの大ボスだったヴィト・ジェノヴェーゼとフランク・コステロの2人が激しい権力闘争を繰り広げる伝記映画。ロバート・デ・ニーロが一人二役で演じている ランクイン回数: 1回 IMDbのレビューから4つ紹介します。 【その1】 「私の考えでは、『アイリッシュマン』や『グッドフェローズ』を思わせるものやその2作との類似点がたしかにある。 レヴィンソン監督が『バグジー』のその後をみずからやったようにも感じる。 犯罪ドラマのマニアなら誰でも見る価値がある映画と言っていい」 【その2】 「ひとつ言っておきたい。 登場人物やそのバックグラウンドのことをまるで知らずに見てしまうと、たぶん混乱したり長くて退屈だったりで全然楽しめないだろうと」 【その3】 「ロバート・デ・ニー…

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ゴッドファーザー・コーナー (一覧)

          Amazon   Music       /       ゴッドファーザー           【映画の関連記事】 「ゴッドファーザー」  ―人生の教科書といえる超大作― 『ゴッドファーザー』のせりふで神になろうとした男に触れる  ―せりふで遊ぶ(その7)― 『ゴッドファーザー』のトリビアで愉しむ  ―ドンのニャンコが語るヒニクな裏話― 「ゴッドファーザー PART2」  ―ハイマン・ロスの視点― 『ゴッドファーザー PART2』のせりふでハイマン・ロスの本性を探る  ―せりふで遊ぶ(その12)― 『ゴッドファーザー PART3』  ―二つで十分アーカイブ― 『ゴッドファーザー PART III』はこうして世間にとって凡作となった! 『ゴッドファーザー〈最終章〉:マイケル・コルレオーネの最期』はこうして監督にとって名作となった! 『ゴッドファーザー PART III』はこうして自分にとって傑作となった! ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)― ヴィト・コルレオーネは、なぜ大物感があるのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット2)― ボナセーラの「アメリカはいい国です」には裏がある  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット3)― ボナセーラの「裁きを」には裏がある  ―…

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映画『ゴッドファーザー PART III』はこうして自分にとって傑作となった!

      Amazon  Music    /    ゴッドファーザー PART III            邦題: ゴッドファーザー PART III    原題: The Godfather Part III   公開年: 1990年  収録時間: 162分(劇場版)、170分(ビデオ版)  IMDb評点: 7.6  私的評価: 8.0  ジャンル: クライム、ドラマ   出演者: アル・パチーノ、ダイアン・キートン、アンディ・ガルシア、タリア・シャイア、イーライ・ウォラック、ソフィア・コッポラ    監督: フランシス・フォード・コッポラ 最初にアル・パチーノの言葉を紹介し、その後で本文を続けています。 利用したおもな資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 ネタバレありです。 「柩に涙を流して告白し、悔恨を感じるようになっては、それは彼らしくない。フランシスがそこに到達しようと努めるのは賞賛する。しかし、マイケルがそのイメージで固まってしまっては……」 《本文》 あまり関心のなかった『ゴッドファーザー PART III』が、新バージョンによってかえって好きになった。 『ゴッドファーザー〈最終章〉:マイケル・コルレオーネの最期』がまるで刺さらなかったからだ。 …

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映画『ゴッドファーザー〈最終章〉:マイケル・コルレオーネの最期』はこうして監督にとって名作となった!

 Amazon Video / ゴッドファーザー<最終章>     邦題: ゴッドファーザー〈最終章〉:マイケル・コルレオーネの最期    原題: The Godfather Coda: The Death of Michael Corleone   公開年: 2020年  収録時間: 158分  IMDb評点: 7.6  私的評価: 7.3  ジャンル: クライム、ドラマ   出演者: アル・パチーノ、ダイアン・キートン、アンディ・ガルシア、タリア・シャイア、イーライ・ウォラック、ソフィア・コッポラ    監督: フランシス・フォード・コッポラ 最初にコッポラ監督の言葉を紹介し、その後で本文を続けています。 利用したおもな資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 ネタバレありです。 「私がヒトラーの映画を撮るとする。そしてそれをカリスマ性のある役者に演じさせる。 人々は言うだろう。ヒトラーを善良な人間にしようとしていると。 もちろん彼はそうじゃない。 ただこの世で最大の悪であっても、それをなすのは不幸を抱えたまともな者たちなのだ。 私の言い分はこうだ―― いかにもな人間らしさなくして、マフィアファミリーの内部を描く映画は作れない」 《本文》 マイケ…

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映画『ゴッドファーザー PART III』はこうして世間にとって凡作となった!

 Amazon DVD / ゴッドファーザー PARTIII     邦題: ゴッドファーザー PART III    原題: The Godfather Part III   公開年: 1990年  収録時間: 162分(劇場版)、170分(ビデオ版)  IMDb評点: 7.6  ジャンル: クライム、ドラマ   出演者: アル・パチーノ、ダイアン・キートン、アンディ・ガルシア、タリア・シャイア、イーライ・ウォラック、ソフィア・コッポラ    監督: フランシス・フォード・コッポラ 最初にアル・パチーノの言葉を紹介し、その後で本文を続けています。 利用したおもな資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 ネタバレありです。 「マイケルは救いを求めたのか、救いを求めるような男だったのかどうか。観客は彼が変わるのを望まなかったかもしれない。それがいまだにわからない。監督と共に悩んだ箇所だ」 《本文》 たしかに、ロバート・デュヴァルの不在は大きかったらしい。 デュヴァルが演じるはずだったトム・ヘイゲンがいた場合のストーリーについて、アル・パチーノはこう明かしている―― 「ヘイゲンにはいろいろプレッシャーがあったが、生命の脅迫を受け、ついには殺される。その殺しの解明に乗り出した…

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映画『アウトフィット』  ―2022年全米週末興収トップ10作品(掘り出し物スリラー)―

        Amazon    Music        /        アウトフィット              邦題: アウトフィット      原題: The Outfit     公開年: 2022年    収録時間: 105分    IMDb評点: 7.2    ジャンル: クライム、ドラマ、ミステリー、スリラー     出演者: マーク・ライランス、ジョニー・フリン、ゾーイ・ドゥイッチ、ディラン・オブライエン      監督: グラハム・ムーア      概要: 仕立て業を営むシカゴの裁断師がある夜、得意客であるギャングたちのゴタゴタに巻きこまれる ランクイン回数: 1回 IMDbのレビューから4つ紹介します。 【その1】 「ひとつの場所でせりふによって動くストーリーが展開する、昔風の犯罪スリラーだ。そしてなんと、シリーズ物じゃない! じつによくできた映画である。2022年の公開作でもっとも過小評価される一本になるのは確実だ。 これを読んでいる人は考えなくていいからすぐに見に行け!」 【その2】 「マーク・ライランスがとにかく素晴らしい。見てきた出演作の大半で脇役だったがいつだって完璧だ。 だが、端から端まで姿を現す主役の彼を見るのもすごくいい。 登場するどのシーンもその人物が完全に掌握している感じが常にある、そんな俳優のひとりだ。 この作品でも劇中の室…

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映画『マフィア・ママ(仮題)』  ―2023年全米週末興収トップ10作品(コメディ編8)―

         Amazon   Music       /      Mafia   Mamma               邦題: マフィア・ママ(仮題)      原題: Mafia Mamma     公開年: 2023年    収録時間: 101分    IMDb評点: 5.3    ジャンル: アクション、コメディ、クライム     出演者: トニ・コレット、モニカ・ベルッチ      監督: キャサリン・ハードウィック      概要: アメリカの平凡な中年女性が、イタリアンマフィアのドンだった祖父の遺志により後を継ぐことになる ランクイン回数: 1回 以下のレビューは、「全米週末興収トップ10」の記事で紹介したIMDbレビューを転載したものです(【その2】【その3】は追加分)。 【その1】 「人生ガタガタと感じていた普通の女性(トニ・コレット)の状況が急速におもしろくなる話だ。 祖父の葬式に参列するためイタリアに戻った彼女だが祖父は犯罪組織の人間だったと知る。 そしてその遺志により彼女はマフィアの帝国を率いることになるのだ。 でも問題がある。彼女にできるのか? 遠慮なくやろうとする映画のスタイルに感心した。衝撃を与えようとし、出し惜しみがない。 トニ・コレットは見ていて楽しい。モニカ・ベルッチもだ。2人のシーンが映画の肝である。 どちらも互いを完璧に引き立てあっている」 …

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「スター俳優はバカだとされている」  ―マリオ・プーゾに死美れる(俳優の現実編)―

   Amazon  Book   /   The  Godfather    『ゴッドファーザー』公開前後、原作者のマリオ・プーゾがどのような気持ちでいたのかを追っていきます。 まずプーゾの言葉を紹介し、その後に本文を続けています。 第一作目公開当時に出版されたプーゾの手記『The Making of the Godfather』をおもに利用しました。 それ以外の資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 「脚本家、監督、プロデューサーはいつも役者をこき下ろす。 スター俳優はバカだとされている。女優は常に有力者に操られる。公私両面で。 彼ら彼女らに知性や感受性は必要とされないのだ」 《本文》 マリオ・プーゾはスクリーンテストを見ていられなかった。 スターになりたがる彼ら彼女らがあまりにもろく、影響されやすく、無防備だったからだ。 また多くの人たちが知的で、静かで、繊細で、内気だった。 ハリウッドでは1000本の企画のうち999本は流れるが、その間にプロデューサーは役者にせりふを読ませ、リハーサルをし、脚本を検討し、どう演じるかについて長く熱心な議論をする。 一方で俳優たちが、プロデューサー、スタジオ、代理人、さまざまな詐欺師たちにひどく搾取される現実もある。 …

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「彼のことは好きだ」  ―マリオ・プーゾに死美れる(コッポラ監督編)―

   Amazon  Book   /   The  Godfather    『ゴッドファーザー』公開前後、原作者のマリオ・プーゾがどのような気持ちでいたのかを追っていきます。 まずプーゾの言葉を紹介し、その後に本文を続けています。 第一作目公開当時に出版されたプーゾの手記『The Making of the Godfather』をおもに利用しました。 それ以外の資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 「彼のことは好きだ。脚本の半分は彼の功績である。私もそれで満足だ。ひどいせりふはどれも彼のせいにできたし、いくつかのひどいシーンもそうだ。 かんに障る人間ではなかった。われわれはうまくやっていた。そしてとうとう撮影用の脚本が仕上がった」 《本文》 マリオ・プーゾは、ひとりで書いた最初の脚本をスタジオの皆に気に入ってもらえた。 監督が決められたのはそれからだ。 だが、社会的良心に背くという理由で有名な監督たちに断られ続けた。 「マフィアや犯罪者を美化している」と。 プーゾはその言い分を理解できた。 処女作だって低劣で下品だとされていたのだ。 だが、同作を芸術として賞賛する声もあった。 そのころのプーゾにとって、自作についての気になる意見は自分自身のもの…

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「私はパニックになった」  ―マリオ・プーゾに死美れる(マーロン・ブランド編)―

   Amazon  Book   /   The  Godfather    『ゴッドファーザー』公開前後、原作者のマリオ・プーゾがどのような気持ちでいたのかを追っていきます。 まずプーゾの言葉を紹介し、その後に本文を続けています。 第一作目公開当時に出版されたプーゾの手記『The Making of the Godfather』をおもに利用しました。 それ以外の資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 「私はパニックになった。はじめからマーロン・ブランドがいちばんいいと思っていたのに」 《本文》 マリオ・プーゾはハリウッドによる映画化にはまるで興味がなかった。 きっかけはある日の新聞だ。 そこには俳優のダニー・トーマスがゴッドファーザーの役をやりたがっていると書かれた記事があった。 マーロン・ブランドを望んでいたプーゾはあせった。 お互いの友人を通してブランドにコンタクトし、思いをつづった手紙を書いた。 ブランドは電話をしてくれた。 彼は本を読んでいなかったが、強力な監督が主張しないかぎりスタジオが自分を雇うことはないと言う。 電話越しにいい人ではあったが、あまり興味もなさそうだった。 それならしかたない。 その後プロデューサーのアル・ラ…

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「私の目には完璧な演技だった。芸術品だ」  ―マリオ・プーゾに死美れる(アル・パチーノ編)―

   Amazon  Book   /   The Godfather    『ゴッドファーザー』公開前後、原作者のマリオ・プーゾがどのような気持ちでいたのかを追っていきます。 まずプーゾの言葉を紹介し、その後に本文を続けています。 第一作目公開当時に出版されたプーゾの手記『The Making of the Godfather』をおもに利用しました。 それ以外の資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 【その1】 「マイケル役のパチーノには、私がスクリーン上のマイケルに望むすべてがあった。 信じられなかった。私の目には完璧な演技だった。芸術品だ」 【その2】 「ブランドは最高だ。ロバート・デュヴァルもだ。それにリチャード・カステラーノも。 それどころか、この3人はすべてアカデミー賞を取れるのではないか。彼らは素晴らしい。 だが思いがけない最高の贈り物は、アル・パチーノだった」 《本文》 マリオ・プーゾははじめからアル・パチーノを気に入っていた。 コッポラ監督に見せられた映像がよかったからだ。 スクリーンテストが始まった当初は、マイケル役をどうするかは当然ながら大問題だった。 映画でもっとも重要な役だ。 あるときにはジミー・カーンがそうなり…

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「製作費を気にする側は、シチリアはいらないと思っていた」  ―マリオ・プーゾに死美れる(映画人の魅力と実態編)―

   Amazon  Book   /   The  Godfather    『ゴッドファーザー』公開前後、原作者のマリオ・プーゾがどのような気持ちでいたのかを追っていきます。 まずプーゾの言葉を紹介し、その後に本文を続けています。 第一作目公開当時に出版されたプーゾの手記『The Making of the Godfather』をおもに利用しました。 それ以外の資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 「製作費を気にする側は、シチリアはいらないと思っていた。 映画からたやすくカットできそうな場面を撮る金などないという理由で」 《本文》 マリオ・プーゾははりきっていた。 最初の会議にはパラマウント製作部長のロバート・エヴァンズ、プロデューサーのアル・ラディなどがそろい、プーゾは励まされた。 パラマウントにとって社運のかかる大作になるはずだった。 たまらない状況だ(社の救世主役としては『ある愛の詩』に先を越されたが)。 それからプーゾの先入観をくつがえす出来事が続くことになる。 アル・パチーノを含めた1か月にわたるキャスティングテストが終わった後のことだ。 フィルムに残されたすべてが親会社G&Wビル内のパラマウント映写室で披露された。 その…

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「ショービジネスは好きではなかった」  ―マリオ・プーゾに死美れる(夢のハリウッド生活編)―

   Amazon  Book   /   The  Godfather    『ゴッドファーザー』公開前後、原作者のマリオ・プーゾがどのような気持ちでいたのかを追っていきます。 まずプーゾの言葉を紹介し、その後に本文を続けています。 第一作目公開当時に出版されたプーゾの手記『The Making of the Godfather』をおもに利用しました。 それ以外の資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 「小説家の仲間たちは、私がなぜ映画を作る気になったのか不思議そうだった。 ショービジネスは好きではなかった。私は小説家だ。書くべき小説がある」 《本文》 マリオ・プーゾはパラマウントが映画製作を一時あきらめたことを知らなかった。 彼らが『暗殺』というマフィア映画を作っていたのがその理由である。 同作は批評でも興行でも大失敗だった。 そのせいで、スタジオの幹部がもうマフィアものには金を出せないと感じたのだ。 プーゾは『暗殺』を見て、オプション契約時に渡した『ゴッドファーザー』の最初の100ページをパラマウントが違う話に作り替えたのだと思った。 その映画は全体の構想も脚本もひどいもので、マフィアの世界を完全に誤解していた。 『ゴッドファーザー』の映画化は、本が…

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「あの本は自分の才能を十分に発揮したものではなかった」 ―マリオ・プーゾに死美れる(甘酸っぱい成功編)―

   Amazon  Book   /   The  Godfather      『ゴッドファーザー』公開前後、原作者のマリオ・プーゾがどのような気持ちでいたのかを追っていきます。 まずプーゾの言葉を紹介し、その後に本文を続けています。 第一作目公開当時に出版されたプーゾの手記『The Making of the Godfather』をおもに利用しました。 それ以外の資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 【その1】 「予想よりも本のレビューははるかによかった。もっといいものにしておけばと後悔した。 気に入っている本ではある。エネルギーがあるし、純粋な神話として広く受け入れられる主人公を生み出したことでうまくいった。 だが、あの本は自分の才能を十分に発揮したものではなかったのだ」 【その2】 「作家を真にダメにするのは真の成功だ。 1年間、私は“楽しい時間”を過ごしながらブラブラしていた。それほどいいものではなかった。 問題はないのだが、最高でもなかった」 《本文》 マリオ・プーゾはゴッドファーザーをすべてリサーチで書いていた。 本物のギャングになど会ったこともなかった。 ギャンブルの世界には詳しかったがそれだけだ。 本が有名になってか…

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「金のために書いたのだ」  ―マリオ・プーゾに死美れる(ベストセラー前夜編)―

   Amazon  Book   /   The  Godfather    『ゴッドファーザー』公開前後、原作者のマリオ・プーゾがどのような気持ちでいたのかを追っていきます。 まずプーゾの言葉を紹介し、その後に本文を続けています。 第一作目公開当時に出版されたプーゾの手記『The Making of the Godfather』をおもに利用しました。 それ以外の資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 【その1】 「小説は3冊書いた。『ゴッドファーザー』はそれまでの2冊ほどの出来ではない。金のために書いたのだ」 【その2】 「どんなに安く見積もっても私は本物の才人と認められていた。 聞いてほしい。私は真の作家だったのだ。本音で言えば、真の芸術家だ」 《本文》 マリオ・プーゾは芸術の狂信者だった。 宗教、愛、女性、あるいは男性、どれも信じていなかった。 社会だろうと哲学だろうと信じてなかった。 だが、ずっと芸術だけは信じていた。 『ゴッドファーザー』の前に出版していた2冊はどちらも純文学といえる作品で、売れはしなかったが書評では高評価だったためプーゾは自分をヒーローとすら思っていた。 ところが、つきあいのあった高級出版社はあまり感心していな…

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「作家こそスターであり、監督であり、スタジオのトップなのだ」  ―マリオ・プーゾに死美れる(原作者のプライド編)―

   Amazon  Book   /   The  Godfather       『ゴッドファーザー』公開前後、原作者のマリオ・プーゾがどのような気持ちでいたのかを追っていきます。 まずプーゾの言葉を紹介し、その後に本文を続けています。 第一作目公開当時に出版されたプーゾの手記『The Making of the Godfather』をおもに利用しました。 それ以外の資料については、「ゴッドファーザーのシリーズは、なぜ人気が衰えないのか?  ―ゴッドファーザーに死美れる(ショット1)―」の記事内に掲載しています。 【その1】 「大半の映画は質が悪い。 最終決定権をもつ者がストーリーやキャラクターのことをまるで知らないから質が悪いのだ。 ハリウッドはまだわかっていない。 書き手を、プロデューサーや監督や(あえて言えば)スタジオのトップと同等の地位に昇格させるのが絶対に確実な手であることを」 【その2】 「作家こそスターであり、監督であり、スタジオのトップなのだ。 これはけっして私の映画ではないが、どこまでも私の小説なのだ。 すべて私のものだ」 《本文》 マリオ・プーゾは悔しかった。 原作者であり脚本も担当していながら、本人が言うところの「8番バッター」だったからだ。 上位にはパラマウントの社長、重役、プロデューサー、監督、あるいはパラマウントの…

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ファンは長く深くハマりたがる!  ―『ゴッドファーザー』のレビューに死美れる―

   Amazon  Poster  /  The  Godfather    最初にIMDbのレビューを紹介します。 その後でコメントを記しました。 IMDbレビューより 【その1】(2006年10月の投稿) 「あらゆる名作は時間をかける。 時間をかけて展開するキャラクター、家族の人生、成長等、おおむね忍耐をもってストーリーを語る。 それこそが鍵だ(あたまが麻痺するほどつまらないストーリーでないかぎり)。 『ダンス・ウィズ・ウルブズ』や『ヒート』などはじつに辛抱強かったがトップクラスの映画になった。 スタジオ側は長めにはやりたがらないようだ。だがそれが映画化する上で素晴らしいストーリーなら、やる価値はある」 【その2】(2004年5月の投稿) 「コッポラはシェークスピア流の壮大さをいかにも狙っているようだ。 権力の座から外れる老いた支配者のドン、ヴィトはリア王に似ているし、善人だったのに権力によって堕落するマイケルはマクベスだ(これは、三部作の後のほうにあるエピソードでいっそうふさわしい例えになる)。 また、父親のあだを討つマイケルとソニーの決心はいくぶんハムレットふうだ。 そういった野心的な映画には極めて上等な芝居が欠かせない。説得力あるものにしたいのであれば。 ところがコッポラは、1970年代における最高クラスの演技を導き出すことに成功した」 (コメ…

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ファンはマイケルだけの映画じゃないと訴える!  ―『ゴッドファーザー』のレビューに死美れる―

   Amazon  Poster  /  The  Godfather    最初にIMDbのレビューを紹介します。 その後でコメントを記しました。 IMDbレビューより 【その1】(2006年8月の投稿) 「主役以外の俳優の演技に弱点がない。 とりわけ、ジョン・カザール(フレド)とリチャード・カステラーノ(クレメンザ)の抑えた演技はすばらしい。 カステラーノはまさにクレメンザそのものだったと思うほかない。役に本物の感触をもたらしている。 ジョン・カザールは、問題児のフレドを生き生きと見せた。 ファミリーの評判を汚さぬよう必死でありながらも父親の望む子にはけっしてなれないとわかっている弱いフレドが目に入ってくる」 【その2】(2002年3月の投稿) 「われわれは、主人公とその周囲にたくさんいる中途半端なキャラたちをただ見ているわけではない。 マイケル・コルレオーネの登場時間がもっとも多いとはいえ、あらゆる人物がその人なりにこの世界の中心にいるのだ。 見る側はさまざまなキャラに自分を重ね、その人間やその人間のもつストーリーがどう作品に組みこまれているのかを観察できる。 多重なストーリー展開で膨れすぎた映画がここ何年かでたくさん公開されている。 そんなものよりこの映画のやり方のほうがはるかに効果的だ」 (コメント) 作品の人気を支える要因のひとつがどの…

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ファンは原作との違いに不満をもらす!  ―『ゴッドファーザー』のレビューに死美れる―

  Amazon  Poster  /  The  Godfather   最初にIMDbのレビューを紹介します。 その後でコメントを記しました。 IMDbレビューより(2014年5月の投稿) 「原作が上回る点がひとつあるとすれば登場人物の変化だ。 アル・パチーノが演じたマイケル・コルレオーネのキャラは小説ではより重視される。 映画のマイケルは時としてやや急な変わり方をするが、本のほうは段階を踏んだ処理をしている。 他のキャラでは、レニー・モンタナのルカ・ブラージが重要に扱われている。 コルレオーネ・ファミリーの協力者であっても暗く陰鬱な過去があり、敵に脅威を与える相手として際立つ存在なのだ。映画の彼はまるでのろまな大男で怖くない。 小説版は脇役にそそるバックグラウンドをもつ者がいてこれも好ましい。 たとえばマクラスキー警部(スターリング・ヘイドン)だ。 ただ小説ならともかく、映画であまり詳しくやるとくどくなるだろう」 (コメント) 原作本を読もうという人にはネタバレになりそうなので、ルカ・ブラージの恐ろしすぎる過去については言わない。 ホラー映画みたいなエピソードがいくつかある。 マクラスキー警部については、割に合わない警察の仕事に対する不満から賄賂を受け取っていたことやタッタリアとの親交などが書かれている。 マイケルを殴ったのは、人をすべて追い払ったは…

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ファンは殺し屋に萌える!  ―『ゴッドファーザー』のレビューに死美れる―

  Amazon  Poster  /  The  Godfather   最初にIMDbのレビューを紹介します。 その後でコメントを記しました。 IMDbレビューより(2019年4月の投稿) 「冒頭でドンの娘の結婚パーティが行われる。 その最中に、ドンの仲間のひとりであるルカ・ブラージ(レニー・モンタナ)がドンとの面会時に話すあいさつを練習するシーンがある。 2人によるそのあいさつの場面はおかしく、愛らしいといえるほどだ。 どちらの気持ちもはっきりと伝わってくるようで、2人のギャングに暖かみを感じると思うばかりだ。 レニー・モンタナは本物のヒットマンだったギャングであり、せりふを口にするときにじつは緊張していた。 そういったことはもちろん知っていても」 (コメント) ルカ・ブラージ役のレニーモンタナを、「ギャングの元ヒットマンかつボディガード」と紹介したドキュメンタリー番組があったという。 ほんとうに殺し屋をしていたのか不明だがボディガードだったのは事実らしい。 当時セットの見学に来ていたマフィアのボディガードをしていたところ、その立派な姿にコッポラ監督が惚れて採用されたのだ。 また、1950~60年代にはプロレスラーもしていた。 ドンに謁見するシーンでは、タキシードを着てういういしくスピーチをする。 このレビュアーさんは巨漢の殺し屋のそんな様子にギャッ…

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