なぜ、クレメンザは狭苦しい場所でマイケルに殺しの指導をしたのか?  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(8発目の銃…

最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。 コッポラ「 」とあるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督著『The Godfather Notebook』からの引用である。 マイケルを教育するクレメンザ 【字幕】 クレメンザ「この銃は足がつかない。指紋が残らない。引き金と銃床にテープを巻いた。撃ってみな マイケルが拳銃を構える。 クレメンザ「引き金が重いか?」 一発発射するマイケル。 マイケル「すごい音だ」 クレメンザ「わざとだ。ヤジ馬が逃げていく。撃った後はどうする?」 マイケル「残りのメシを食う」 クレメンザ「もたもたしない事だ。自然に手をおろして銃を落とせ。誰も気づかん。皆、君の顔を見てる。すぐに立ち去れ。人の目を見るな。避けてもいかん。皆、青くなって突っ立てるだけだ。仕事が終わったら休暇に出ればいい。あとは任しとけ」 マイケル「騒ぎになるかな?」 クレメンザ「かなりな。他のファミリーも敵にまわす。でも、いいさ。どうせ5年毎にはそうなる。大掃除と思え。10年何もなかった。頭でたたく事だ。早くつぶした方がいい。ほっておけば必ず、のさばってくる。マイケル、あんたは皆の誇りだ。親父さんにとってもな」 【吹き替え】 クレメンザ「こいつなら安全。足のつかないハジキだ。指紋のつく心配もない。トリガー…

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なぜ、ソニーはマイケルに引き金を引かせる決断をしたのか?  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(7発目の銃弾)―

最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。 幹部会議 【字幕】 自分との話し合いを望むソロッツォへの対応について、マイケルが話し始める。 マイケル「(本格的な抗争をせず待つというソニーに)分からないよ。そんな暇はない。ソロッツォは必ずパパを殺す。それが狙いさ。奴を殺さなきゃ」 クレメンザ「その通りだ」 ソニー「じゃあ聞くが、あのデカは? どうカタをつける?」 マイケル「僕を呼んでるんだろ。きっと僕と、あのデカと、ソロッツォの3人だ。チャンスだ。会合の場所を調べてくれ。人目の多い場所がいい。バーとかレストランとか。安全のために。ボディー・チェックはするだろ。銃は持っていけない。だが、クレメンザが事前に銃を隠しておく。僕が2人を殺す」 笑い出すクレメンザ、テッシオ、ソニー。トム・ヘイゲンは浮かぬ顔。 ソニー「殺すって? 大学出が? マフィアは嫌いだろ。 デカに頬をたたかれて頭にきたか。戦争ごっこじゃないぞ。目の前で脳ミソをブッ飛ばすんだ。気持ちは、もらっとく。お互い感情に走っちゃまずいよな」 マイケル「デカを殺して悪いかい。トム、あいつは麻薬にかかわってる。悪徳警官だ。ヤクの密売で金を儲けようって奴だ。面白い記事になる。息のかかった記者がいるだろ。飛びついてくるさ」 トム「あるいはな」 マイケル「僕は冷静さ。勝ち目はある」 …

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なぜ、マイケルは病室からの電話で声を荒げたのか?(その2)  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(6発目の銃弾)―

最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。 コッポラ「 」とあるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督著『The Godfather Notebook』からの引用である。 病院の玄関前 【字幕】 マイケルが、エンツォの手から見舞いの花束を奪って放り投げる。 マイケル「捨てろ。ポケットに手を。銃のあるふりを。心配ない。大丈夫だ」 敵が乗っているらしき車が近づくが、玄関前にいる二人を警戒して走り去る。 マイケル「よくやった」 エンツォが震える手でタバコを吸おうとするがうまくライターの火がつかないため、マイケルが代わりにつけてやる。ライターをじっと見てからその蓋を閉めるマイケル。 そこへ何台ものパトカーが集まってくる。マイケルは降りてきた警官たちに拘束される。 マクラスキー警部「チンピラどもは追い払った。何してる?」 マイケル「親父の見張りをどうした?」 マクラスキー「青二才が、文句あるのか。俺が追っ払ったのさ。貴様もとっとと失せろ」 マイケル「見張りもなしに、行けない」 マクラスキー「逮捕しろ」 部下「何の罪で? 彼は戦争の英雄だし」 マクラスキー「うるさい。逮捕だ」 マイケル「ソロッツォにいくらもらった?」 マクラスキー「押さえてろ。しっかりとな」 警部が思い切りマイケルの顔を殴りつける。 そこへ駆けつけて…

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なぜ、マイケルは病室からの電話で声を荒げたのか?(その1)  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(5発目の銃弾)―

最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。 コッポラ「 」とあるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督著『The Godfather Notebook』からの引用である。 ドンの病室 【字幕】 マイケルが閑散とした病院内でドンの病室を見つけ中に入ると、突然外からナースが声をかける。 ナース「何してるの。面会禁止ですよ」 マイケル「息子のマイケルだ。誰もいない。見張りは?」 ナース「出入りが多くて患者さんに迷惑なので。警察が帰るように」 室内にある電話の受話器を取るマイケル。 マイケル「ロング・ビーチ4-5620を頼む」 ナースが出ていこうとする。 マイケル「待て。ここにいてくれ。(電話で)マイケルだ。病院だが、今、来たら誰もいない。一人もだ。テシオの手下も刑事も……。パパ一人だ」 ソニー「すぐに誰かをやる」 マイケル「分かった」 ナース「あなたもお帰りを」 マイケル「親父を別の部屋に移す。管をはずして、一緒にベッドを」 ナース「そんなこと」 マイケル「親父を知ってるだろ。このままじゃ殺される。分かるな。手伝ってくれ」 別の場所にベッドを移すと、ちょうどパン屋のエンツォが見舞いにやってくる。 手伝いをしたがるエンツォに「玄関の前で待っててくれ」と言い、ベッドに戻るマイケル。 マイケル「大丈夫だよ。僕がついて…

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なぜ、マイケルが電話ボックスで話すシーンは重要といえるのか?  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(4発目の銃弾)―

最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。 コッポラ「 」とあるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督著『The Godfather Notebook』からの引用である。 クリスマス前のニューヨーク繁華街 【字幕】 映画を見た後の二人。 ケイ「今の映画みたいに私が尼さんだったら?」 マイケル「いやだ」 ケイ「私がイングリッド・バーグマンなら?」 マイケル「考えてもいい」 新聞の販売スタンドを通り過ぎた途端、ケイの顔色が変わる。 ケイ「マイケル……」 マイケル「やっぱり今の君がいいよ。(ケイの様子がおかしいのを見て)何だ?」 スタンドに戻り、新聞を手にするマイケル。 見出しにあるのは、「コルレオーネ、暗殺か」「暗黒街のボスを銃撃」。 マイケル「死んだとは書いてない」 近くの電話ボックスに駆け込み電話をかけるマイケル。 マイケル「ソニー、マイケルだ」 ソニー「どこにいる」 マイケル「パパは?」 ソニー「まだ、はっきりはしないが、重傷は間違いない。街か?」 マイケル「そうだよ」 ソニー「捜してたんだ」 マイケル「トムに電話したよ」 ソニー「すぐに帰ってこい。ママのそばに」 【吹き替え】 映画を見た後の二人。 ケイ「あたしがシスターだったらどう? 修道院の、あんな感じ」 マイ…

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なぜ、マイケルは軍服姿で結婚パーティに出席したのか?(その3)  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(3発目の銃弾…

今回紹介するのは、『ゴッドファーザー 特別完全版(VHSテープの字幕版)』に収録されているものである。 特別完全版とはパート1と2を時系列で再編集し、劇場版に未収録のシーンも大量に追加したバージョンだ。 残念ながら、いまだにDVD・BD化されていない。 まったくもって残念。本当に残念。死にたくなるほど残念……いや、見ないで死んでたまるか! LD版のアマゾンレビューで、作品についてうまく説明してくれている人がいるので、該当ページへのリンクを張っておく――『ゴットファーザー 1901-1959 特別完全版』。 最初にVHSの字幕を紹介し、次に本文を書く。 コッポラ「 」とあるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督著『The Godfather Notebook』からの引用である。 結婚パーティ後、ドンの相談役のジェンコが入院する病院へ行く前 ドン「彼女はもう帰ったのか」 マイケル「トムが一緒に」 病院内の廊下 ドン「(ドンがマイケルの軍服を見ながら)この飾りは何だ」 マイケル「戦功に」 ドン「よそ者のために戦うのか」 父親を無視して病室へ行こうとするマイケル。 ドン「話はまだだ。除隊後はどうする」 マイケル「卒業を」 ドン「それはいい。わしの所へ戻って来い。大学を卒業したらおまえに考えている事がある」 ベッドに横たわるジェンコとドンの会話 ドン「ジェンコ。息子…

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なぜ、マイケルは軍服姿で結婚パーティに出席したのか?(その2)  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(2発目の銃弾…

最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。 妹コニーの結婚パーティ(PART2) 【字幕】 歌手のジョニー・フォンテーンが姿を見せ、会場が騒がしくなる。 ケイ「ジョニーも知り合いなの?」 マイケル「ああ、紹介するか」 ケイ「すごいわ」 マイケル「親父が面倒をみた」 ケイ「彼の? どんな?」 マイケル「聴こう」 ケイ「教えて」 歌い始めるフォンテーン。 ケイ「マイケル、教えて」 マイケル「彼がかけ出しの頃、つまらない契約を結んでた。ビッグ・バンドのリーダーと。有名になるにつれ契約がジャマになった。ジョニーは名づけ子だ。親父はリーダーと会った。1万ドルで話をつけようとしたが、相手は拒否した。それで翌日、親父はルカを連れて出かけた。1時間で、話はついた。たったの1000ドルで」 ケイ「どうやって?」 マイケル「文句を言わせなかった」 ケイ「どういう事?」 マイケル「ルカが銃をつきつけて――サインか、頭をフっ飛ばすか、親父が聞いた。本当の話だ。それが僕の家族さ」 【吹き替え】 歌手のジョニー・フォンテーンが姿を見せ、会場が騒がしくなる。 ケイ「ジョニー・フォンテーンと知り合いなんて聞いてないわよ」 マイケル「そう? 会いたい?」 ケイ「ええ、そりゃもう。当然よ」 マイケル「父が面倒をみてやったんだ」 ケ…

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なぜ、マイケルは軍服姿で結婚パーティに出席したのか?(その1)  ―マイケル・コルレオーネに死美れる(1発目の銃弾…

アマゾン・ポスター「マイケル・コルレオーネ」 マイケル・コルレオーネは演じたアル・パチーノですら理解しにくいと言っている(アクターズ・スタジオのインタビューで)キャラクターだが、いったいどんな人間なのか? マイケルの登場シーン(せりふのある場面)でそれを探っていく。 今回はその第一回目。もっともアクセスが悪ければすぐやめる。良ければずーっと続けたい。 最初にBDの字幕と吹き替えを、次に本文を、最後に同BD収録の英語字幕を紹介する。英語字幕は実際の発音と違う場合もあるが、画面表示通りにしている。 コッポラ「 」とあるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督著『The Godfather Notebook』からの引用である。 妹コニーの結婚パーティ(PART1) 【字幕】 屋外でマイケルとケイが向かい合って食事をしている。 ケイ「マイケル。あのブツブツ言ってる人……あの人、怖そうね」 マイケル「怖いよ」 ケイ「誰? 名前は?」 マイケル「ルカ・ブラージ。父の手伝いをしてる」 ケイ「待って。(ブラージを見て)こっちに来るわ」 突然、トム・ヘイゲンが現れる。 トム「元気そうだな」 マイケル「(ケイに向けて)兄貴のトム・ヘイゲンだ」 トム「親父さんが待ってるぞ」 ルカ・ブラージとともに立ち去るヘイゲン。 ケイ「兄弟で名前が違うの?」 マイケル「子供の頃、ソニーがトムを見つけた。家なし子さ。それで父が……。ずっと兄弟さ…

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マイケル・コルレオーネは、なぜ魅力があるのか?

アマゾン・ポスター「ゴッドファーザー」   邦題: ゴッドファーザー   原題: The Godfather  公開年: 1972年 収録時間: 175分 IMDb評点: 9.2 ジャンル: クライム、ドラマ  出演者: アル・パチーノ、マーロン・ブランド   監督: フランシス・フォード・コッポラ 世間には、下手に批判するとたいへんな目に遭いかねない映画作品が存在する。 人それぞれの思い入れがあるのでどういったものがタブーになるのか基準はないが、多くはヒューマニズム系だろう。 「せっかく泣けるドラマに水さすな!」ってことである。 だが、『ゴッドファーザー』はその種のドラマではない。 主人公のマイケル・コルレオーネには、そもそも人間らしさがない。 こんなレビューがある―― 【IMDbレビュー 2008年6月の投稿】 「妹のコニーが、映画の終わりでマイケルを『cold hearted bastard』と呼ぶ。 (注:ネット配信の字幕版では『人間じゃないわ』、吹き替え版だと『あんたってそれでも人間?』) おおげさな言葉でこれ以上にうまいやつはそうない。それでもわれわれの心は彼から離れない。 アル・パチーノの演技でおもしろいのは、口当たりの良い人物に見えるよう演じていないことだ。 観客の心を引きつけようとしていないのだ」 親子やきょうだいなど人間関係のシーンで共鳴する人は多いだろ…

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映画『イースタン・プロミス』  ―心地良いダークネス―

アマゾン・DVD「イースタン・プロミス」   邦題: イースタン・プロミス   原題: Eastern Promises  公開年: 2007年 収録時間: 100分 IMDb評点: 7.7 ジャンル: クライム、ドラマ、ミステリー、スリラー  出演者: ナオミ・ワッツ、ヴィゴ・モーテンセン   監督: デヴィッド・クローネンバーグ IMDbレビューより(2007年9月の投稿) 「ロシアのサンクトペテルブルクで、数年間刑事の仕事をしていた男性を知っている。 おもに闇取引の捜査だ。 ある晩、夕食を取りながら彼が話してくれた―― 『サンクトペテルブルクでは何でも手に入る。だが、それがどんなものかを人は知りたがらない』。 『イースタン・プロミス』で目にするのは、その“何でも”の一部どころではない。 名画だと即座にわかる本作には、本当にハラハラする瞬間がいくつかある。 暗く湿ったノワールなロンドン。 そこを舞台にした『イースタン・プロミス』が伝えるのは、ロシアンマフィアの精神構造や文化だ。 鳥肌が立つシーンもあれば、胸が痛むシーンもある。 じつにつらく、ひどいスリラーだ。 心臓の弱い人には向かない。 ファミリーの力関係、マフィアの忠誠心、善玉側が辛うじて悪玉に取って代われそうな一手段などが、ヒネリのあるこの倫理物語には含まれている。 主要キャラの誰もが、物語のスケールに忠実に従い、共感するムードを刻み込む。 そして、じつ…

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組織犯罪スリラー映画 襲弾の30作品

IMDbのキーワード検索機能を使ったリスト作成――今回は「組織犯罪が関わるスリラー映画」のランキングです。 「スリラー」ジャンル内で、「組織犯罪」がキーワード設定されている作品を選んでいます。 マイナーなタイトルを減らすため、「IMDbユーザーによるレイティング投票数10万件以上」の条件で絞りました。 ランキングについては、投票数順にすると評判が悪くてもヒット作であれば上位に来てしまうことがあるという理由で、レイティング点数の高い順にしています。 点数が同じ場合もありますが、抽出リスト上の順位に従いました。 IMDb独自の「ポピュラリティ」によるランキングは、最近の作品が上位に表示されやすいため利用しません。 ( )内は製作年と製作国です。 以下のページに基づいて作成しています。 Highest Rated "Organized Crime" Thriller Feature Film Titles 「襲弾」とは、「集団」に「襲う」と「弾」の字を重ねた言葉です。 【1位】『ダークナイト』 (2008年 イギリス・アメリカ) Amazonビデオ「ダークナイト」 (関連記事)バットマン・コーナー (一覧) 【2位】『レオン』 (1994年 フランス) Amazonビデオ「レオン」 (関連記事)「レオン」  ―殺し屋になったピノキオ― 『レオン』のせりふを嗅ぐ  ―せりふで遊ぶ(その2)― …

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映画『インファナル・アフェア』  ―マフィア系にしてビジネス系の傑作クライムドラマ―

アマゾン・BD「インファナル・アフェア」   邦題: インファナル・アフェア   原題: 無間道(英題:Infernal Affairs)  公開年: 2002年 収録時間: 101分 IMDb評点: 8.1 私的評価: 7.3 ジャンル: クライム、ドラマ、ミステリー、スリラー  出演者: アンディ・ラウ、トニー・レオン   監督: アンドリュー・ラウ、アラン・マック IMDbレビューより(2007年2月の投稿) 「現代映画の中で脚本が指折りの一作だ。もちろん俳優陣や監督も最高だが、本作のパワーのすべては脚本にある。 映画としてはこの上なく現実味のある脚本であり(現実通りの映画などない)、欠点もある(完全な脚本も存在しない)。だが、そこに含まれるあらゆる美点が欠点を覆い隠している。 傑作を生み出すには二人の主要人物がいればいい。映画を動かすのによくあるベタなどいらない。必要なのはキャラクターへの共感だけである。それが書ければその映画は完璧だ。 住む環境や周囲の者たちによって人がどう変わるかがこの脚本にはある。かつてとは違う人間になってしまう段階までの変化だ。 優れた映画になった主因は脚本だが、アメリカ版のリメイク『ディパーテッド』を私が嫌う理由は、脚本家がオリジナル版のおいしいところを総取りし、なおかつハリウッド流のベタにあふれたC級アクション映画にしてしまったからだ」 【コメント…

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映画『アンタッチャブル』  ―二つで十分アーカイブ―

オールポスターズ「アンタッチャブル」   邦題: アンタッチャブル   原題: The Untouchables  公開年: 1987年 収録時間: 119分 IMDb評点: 7.9 ジャンル: クライム、ドラマ、スリラー  出演者: ケビン・コスナー、ショーン・コネリー、ロバート・デ・ニーロ   監督: ブライアン・デ・パルマ IMDbレビュー 「こんな映画が見たいなら本作はあなたにピッタリだ――シリアス志向の茶番劇、ありとあらゆるベタ(ウソじゃない。見ればわかる)、場違いで大げさな楽曲、低水準の演技。 が、この手の作品を楽しいと感じた映画ファンがターゲット層だったとはどうも思えない。アル・カポネとエリオット・ネスの両者、そして良い映画を好むすべての人の顔に泥を塗ってしまってるよ」 「目指したのは愉快でしゃれたアクション映画だ。歴史のドキュメンタリーなんかじゃない。 時代を再現したディテールは極めて信頼できるものだよ。ちょっとやりすぎだけど。第一の目的は達成してるね――それは、楽しませること。 本作はしゃれたギャング映画と、警官対悪漢の古き良きドンパチの中間を狙ってる。その点、とてもうまくいってるよ」 トリビア 「ロバート・デ・ニーロは本物のアル・カポネの仕立屋を見つけ出し、映画用にカポネの服とまったく同じものを作ってもらった」 「現実の話では、アル・カポネは禁酒法時代の捜査…

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映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』  ―二つで十分アーカイブ―

アマゾン・CD「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」   邦題: ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ   原題: Once Upon a Time in America  公開年: 1984年 収録時間: 229分 IMDb評点: 8.4 ジャンル: クライム、ドラマ  出演者: ロバート・デ・ニーロ   監督: セルジオ・レオーネ IMDbレビュー 「人生の4時間を返してほしいばかりだ。うぶなことに最後まで見てしまった―― 果てしない年代物のド派手スペクタクルを、不当なセックスやバイオレンスを、あやしげな老けメイクを、現実味のないせりふを、えたいの知れない音楽を、最後は満足できるようにまとめてくれるだろうと望みながら。 大失敗作だよ」 「人生。愛。友情。郷愁。記念。子ども時代。成人期。裏切り。子どもの頃の夢。心理。セックス。男らしさ。女らしさ。ロマンス。錯覚。芝居。野心。栄光。運命。被虐。加虐。歴史。死……。 とにかく史上最高の映画だ。 以上」 トリビア 「撮影終了時、収録合計時間は8~10時間に及んでいた。セルジオ・レオーネ監督と編集担当は約6時間になるまで編集し、3時間の映画を2本公開するつもりでいた。プロデューサー側にその案を拒まれたことで監督はさらにカットを進め、結局3時間49分となった」 「映画の舞台は、1920、1932、1933、および1968年である…

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映画『ゴッドファーザー PART III』  ―二つで十分アーカイブ―

オールポスターズ「ゴッドファーザー」   邦題: ゴッドファーザー PART III   原題: The Godfather: Part III  公開年: 1990年 収録時間: 162分 IMDb評点: 7.6 ジャンル: クライム、ドラマ  出演者: アル・パチーノ   監督: フランシス・フォード・コッポラ IMDbレビュー 「う~む、こりゃ犯罪だねえ。アル・パチーノやアンディ・ガルシアの演技がまずいとかじゃない。ゴッドファーザーであるマイケル・コルレオーネという強力キャラの伝説を撃つという犯罪を犯しちゃってるよ。 よくもまあこれまでの2作にあった恐れ知らずの男を、この3本目みたいな精神的に弱った老人に落とせたもんだよ。なぜ16年もたってからこんなもんができたか? ただカネのためだろ!  アル・パチーノも『ゴッドファーザー3は大きな間違いだった』と言ってるぞ。正直者の彼は真実を口にしてる!」 「ゴッドファーザーのパート3はマイケルばかりに目が向けられてるね。それがこのシリーズにおける本作のユニークな点だ。最初の2本では、見せびらかすように味のある人物をたっぷり披露してたもんだから、たった一人に注目するなんて無理だった。 本作は"失った人生の回想録"と表現するのが最もふさわしいかもしれない。 優れた映画だよ。シリーズ3作を比較すると一番劣ってるようだけど、3本を同列に論じるのはちょっとフェアじゃない。どれも別々の作…

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コルレオーネファミリーのことわざ遊び

オールポスターズ「ゴッドファーザー」 江角マキコが疑惑を残したまま引退するつもりであることを、『立つ鳥跡を濁さず』ではないと非難する人がいるというニュースを聞き―― 長男ソニー「マイケル、おまえも似たようなもんだな。濁しまくってシシリーへ高飛びしたもんな」 三男マイケル「そのことわざは水鳥の話さ。もともと濁ったファミリーなんだし、そんなにきれいにはいかない。俺たちは立った後にフンを誰かに引っかけるカラスみたいなもんだ」 ソニー「フレドは金を与えても遊ぶことしかできねーチンケなやつだから、『猫に小判』がピッタリだ」 次男フレド「じゃあコニーはさしずめ、『豚に真珠』かね」 長女コニー「無駄に着飾ってた時期もあったけど、太ってないし豚は言いすぎでしょ」 フレド「ブーブーと騒がしいじゃん」 コニー「あんたもニャーニャーとうるさいでしょ。パパは何かな」 ソニー「パパは注意不足で敵に撃たれたから、『猿も木から落ちる』だ」 ドン・コルレオーネ「じゃあソニーは何になるかな。じっとしてればいいものを、余計なことをして思いがけない災難に遭う……そんなことわざが確かあったような……」 全員「犬も歩けば棒に当たる!」

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コルレオーネファミリー、日本を語る

オールポスターズ「ゴッドファーザー」 【お題】SMAP解散 ドン・コルレオーネ「ニューヨークの五大ファミリーが崩壊したみたいな騒ぎだったな」 長男ソニー「固く握られていた5本の指がバラバラに開いた感じだ」 次男フレド「握らないんだから、おにぎりじゃなくて、おにぎらずだな」 三男マイケル「お、よく知ってるな。おにぎりはおむすびとも言うんだぜ」 長女コニー「じゃあ今回のことは、おむすばず、とも言えるかもね」 ソニー「オチはねーのかよ」 コニー「だから、お“結ばず”」 ――やたら日本語に詳しいファミリーであった。 【お題】紅白歌合戦 ドン・コルレオーネ「SMAP不在のためいろいろ工夫が凝らされていたようだが、批判もあるらしいな」 ソニー「NHKらしくねーってやつだな。売春や賭博だけでなく麻薬もやったらコルレオーネらしくねーって文句が出るようなもんだ」 フレド「らしいことやったらやったで、相変わらず同じでつまらないって言われるんだよな」 マイケル「でも、批判があるってのは気にされてる証拠だ。まあいいじゃないか」 コニー「人殺しを批判されるのも、まあいいじゃないか程度ってわけね」 ソニー「きれいごとぬかしてんじゃねえぞ」 マイケル「いや、きれいごとは調味料みたいなものだ。なくてもいいがあれば味のある人間になる。ありすぎるやつは食えたもんじゃないから“処分”したくなるがな」 …

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映画『ゴッドファーザー』のトリビアで愉しむ  ―ドンのニャンコが語るヒニクな裏話―

オールポスターズ「ゴッドファーザー」   邦題: ゴッドファーザー   原題: The Godfather  公開年: 1972年 収録時間: 175分 IMDb評点: 9.2 私的評価: 9.6 ジャンル: クライム、ドラマ  出演者: マーロン・ブランド、アル・パチーノ   監督: フランシス・フォード・コッポラ 『ゴッドファーザー』は、公開当時マフィア映画がヒットしていなかったことで製作がちゅうちょされたのに、結果的に大成功してしまった皮肉な作品です。 そこで、皮肉を感じるトリビアを集めてみました。 語り手はなぜか、マーロン・ブランド演じるドン・コルレオーネがかわいがっていたネコです。 【PART1】 我輩はネコである。名前はない。あったかもしれないが、まあどーでもいい。 我輩はパラマウント社の敷地内でマーロン・ブランドさんに見つけられた。脚本にはもともと書かれていなかったけれど使えると思ってもらえたのだ。 でも、ヒニクなことが起こった。 オープニング場面でブランドさんにかわいがられたとき我輩はとても気持ちよくなり、のどをゴロゴロゴロゴロと鳴らしてしまったのだ。 そのため録音後のブランドさんの声が聞き取りづらくなってしまい、結局せりふのほとんどがアフレコで収録されることになった。 申し訳ニャいことをした。 【PART2】 監督のコッポラさんはこう言っている―― …

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映画『カジノ』  ―“カジノ”という時計はどのように動いているのか?―

オールポスターズ「カジノ」   邦題: カジノ   原題: Casino  公開年: 1995年 収録時間: 178分 IMDb評点: 8.2 私的評価: 6.8 ジャンル: クライム、ドラマ  出演者: ロバート・デ・ニーロ、シャロン・ストーン、ジョー・ペシ   監督: マーティン・スコセッシ まるで時計みたいな映画ですね。 時計のように休むことなく一定のスピードで進行します。ことさら速くなることも遅くなることもありません。 カジノを陰で操るマフィアのボスたちがドラマのねじを巻き、3人の主要登場人物たちが時計の針のような動きを見せます。 社長ではないが事実上カジノを仕切ることをマフィアから任されたギャンブラー、ロバート・デ・ニーロはゆっくり型の短針です。慌てずじっくり考えて行動します。 遊び人の妻シャロン・ストーンは長針ですね。少し性急です。 デ・ニーロの友人である悪党ジョー・ペシは完全に秒針で、活発に動きまくります。しかもグルグル回ったり、アナログになったり、クォーツになったりします。 映画の初めは最後にやってくる爆発シーンと同じでして、つまりは12時で始まり最終的にまた12時に戻るといった様相ですね。 その爆発を境にして時が止まるようにすべてが終わるのです――人、カジノ、時代のすべてが。 実話に基づくラスベガス・カジノの物語ですが、ある場面でカジノの従業員の役割について説明があります。…

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映画『グッドフェローズ』  ―なぜ名作とされるのか?―

オールポスターズ「グッドフェローズ」   邦題: グッドフェローズ   原題: Goodfellas  公開年: 1990年 収録時間: 146分 IMDb評点: 8.7 私的評価: 7.5 ジャンル: 伝記、クライム、ドラマ  出演者: レイ・リオッタ、ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ   監督: マーティン・スコセッシ いかにもドラマチックなマフィア・ギャング映画に慣れてしまっているせいか、実話に基づく『グッドフェローズ』にはちょっと物足りなさを感じます。 しかし裏社会の実態を分かりやすく、しかも面白く伝えてくれたことは確かであり、マーティン・スコセッシ監督の他の作品同様、長尺でもさほど飽きない流れの良さでスルスルと時間が過ぎていきます。 「ワイズ・ガイ(賢いやつ)」「グッド・フェローズ(いいやつ)」とお互いを呼び合い、楽しく陽気にやっているようで、実は賢くなければいい人でもない連中の物語です。 ワイズ・ガイには「生意気な人」「他人をばかにする人」という意味もありますから、こちらの方がふさわしいといえます。 グッドフェローズには、口当たりがいい言葉や優しげな笑顔の裏に危険が潜む世界が描かれています。 ただこれはマフィアに限ったことではありません。 マフィアの話だから殺しや暴力によってその危険が顕在化しやすいだけで、一般の社会であれば何か不満があったり手を上げたくなっても、みんなじっと我慢しているだけで…

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